帆足 公人 理事長、杉田 明耶佳 先生の独自取材記事
神田橋デンタルオフィス
(千代田区/神田駅)
最終更新日:2025/06/12

院内に一歩足を踏み入れると、マホガニーの大きなデスクと本棚が目に留まる。「神田橋デンタルオフィス」はシックで落ち着いた雰囲気のクリニック。理事長の帆足公人先生はアメリカ留学を経験し、1999年に同院開業後も、海外の先進技術や医療事情にアンテナを張りクリニックの診療に生かしている。予防歯科を主軸に、歯周病治療、インプラント治療、矯正歯科、審美歯科、精密根管治療など幅広い診療内容に対応する中で、細分化する先端歯科医療に対応するためのシステムを構築。帆足理事長の3人の歯科医師となった娘が、同院や分院でそれぞれの専門性を生かした治療に取り組んでいる。治療に対するこだわりや、同院がめざす「並列型の歯科医院」などについて、帆足理事長と次女の杉田明耶佳先生に話を聞いた。
(取材日2025年2月18日)
「プレシジョンメディシン」の考え方を歯科に応用
まるで高級レストランのような重厚なインテリアですね。

【帆足理事長】患者さんに「来て良かった」と思っていただきたくて、インテリアには力を入れました。参考にしたのはアメリカのクリニックです。アメリカでは歯科医師が受付で患者さんをお出迎えして上着を預かり、ホテルのコンシェルジュのように診察室にご案内するなど、マナーやサービス、院内環境の整備が行き届いています。当院でも受付カウンターに患者さん用の椅子をご用意し、そこでスタッフが患者さんと対面しながら、受付のご案内や治療後のお支払いに対応しています。
診療において大切にされているお考えは?
【帆足理事長】遺伝子レベルで原因を突き止め、その方に合った科学的根拠に基づく医療を治療やケアに生かして、真の意味での治癒・予防を実現することをめざす「プレシジョンメディシン」と呼ばれる考え方を診療のベースにしています。この考え方を、がん医療を例にご説明しますと、一般的に医師は決められたガイドラインに沿って、まずは外科手術を行い、腫瘍が取りきれなかったり、再発のリスクがあったりする場合、化学療法や放射線治療を組み合わせる、というふうに治療を進めていきます。一方、プレシジョンメディシンでは、その方のがん遺伝子を解析しがんの特性を把握した上で、個々のがんに合った治療方法でアプローチするという、診断メインの考え方になります。
歯科ではどのように生かされるのですか?

【帆足理事長】虫歯や歯周病は、同じ年齢で同じようなケアを続けていても、歯のトラブルを起こしやすい人とそうでない人がいます。そこで生かされるのが、プレシジョンメディシンの考え方ですね。例えば、歯周病菌を代表する病原性の高い菌には6つの遺伝子型があり、その中の1つを持っていると歯周病を発症しやすいといわれています。検査によってそのタイプを特定すれば、患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療を提供できると考えています。このことを医療の現場でいかに実現していくかを考えながら、未来を見据えて予防につなげたいと思っています。
こちらの予防歯科の特徴について教えてください。
【帆足理事長】「未来提案型予防歯科」に取り組んでいることが特徴です。クリニックで主に行う早期発見のための定期検診は二次予防にあたりますが、当院ではその前段階の一次予防に着目しています。一次予防は、口腔内をチェックして将来的なリスクを調べ、生活習慣を指導し、健康増進に努めることが主な目的です。虫歯に例えると、虫歯になりやすいか検査をして食生活の改善を促し、将来虫歯にならないようにリスク管理を行います。つまり、早期発見に力を入れる従来の予防ではなく、病気にならないための予防なのです。一次予防は日本の歯科医療の抜けている部分でもあります。
顎口腔系機能の維持・向上で健康寿命の延伸をめざす
インプラント治療や顎口腔系機能の維持にも力を入れていますね。

【帆足理事長】1985年にアメリカでインプラント治療の講習会に参加して以来、数多くの症例を手がけてきました。しかし私は、すぐに抜いてインプラントを入れるという治療では、そもそもの問題は解決しないと考えています。根本原因がわからないと他の歯も同じ道をたどってしまうでしょう。そのため当院では歯周病を診療の中心に据え、歯を失わないための治療や予防に力を入れているのです。また、顎口腔系機能の維持・向上を図ることによって、健康的な生活をサポートすることも歯科医師の重要な役割だと思っています。高齢化が進んだ現在、歯が残っていても、飲み込む機能の衰えなどに気づかず、きちんと噛んで食べられていない人が増えているとされています。こうした方に対して患者さんご自身にも認識してもらいながら、機能の改善をめざします。
杉田先生は、審美歯科と矯正歯科がご専門だと伺いました。
【杉田先生】どちらも昔と比べて施術に対するハードルが下がり、希望される方が増えています。特に需要があるのが歯列矯正です。当院ではマウスピース型装置を用いて歯を整えていくことをめざしています。歯列矯正は見た目の改善を目的とする以前に、噛み合わせや顔周りの筋肉へのアプローチも見込めるなど、機能面の大幅な向上が期待される医療です。マウスピース型装置を使うので、ワイヤー矯正と違って見た目に配慮でき、歯のお手入れもしやすいなどメリットが多いです。また、今はコンピューター上でスタート時から矯正終了までの歯の様子をシミュレーションできるので、患者さんも一目でわかるようになっています。歯列矯正は予防の観点でもたいへん有用ですので、幅広い世代の方にお勧めしたいですね。
新しい歯周病治療も取り入れているそうですね。

【帆足理事長】治療箇所に過酸化水素と青色レーザーを照射することでヒドロキシルラジカルが発生し、これを用いて歯周ポケットや底部の殺菌を図りながら、超音波振動によって歯石などの除去をめざす方法です。中等度から重度の歯周病の方が対象です。この治療法は外科的な処置を伴わず、痛みも少ないため、全身疾患があり外科治療が難しい方や外科治療を望まない方にとっては負担の少ない選択肢といえます。さらに、一部再発してしまった歯周病やインプラント周囲炎に対しても有用です。新しい治療法ですが、気になる方はご相談ください。
各専門分野の歯科医師が連携して細分化する治療に対応
専門的な診療内容も多いですが、どのように対応していますか?

【帆足理事長】医科と同じように歯科も、歯科医師が専門外の分野の治療を100%の力で行うことはできません。ですから主治医をリーダーに、専門性が求められる治療は得意としている歯科医師たちが担当するシステムを構築しました。長女の有理恵が補綴やインプラント、次女の明耶佳が審美歯科と矯正歯科、三女の涼美麗が根管治療と、娘たちがそれぞれ専門の治療を担当していますし、口腔外科に関しては大学病院から専門の歯科医師に来てもらっています。従来の一人の歯科医師が対応する「垂直型の歯科医院」ではなく、診療によって主治医が変わる「並列型の歯科医院」こそが、これから望まれる歯科医院の姿なのだと思っています。
杉田先生が歯科医師をめざしたきっかけについても、教えてください。
【杉田先生】やはり父の影響が大きいですね。昔から細かい作業が好きだったこともあるかもしれません。大学に入った際に、姉妹でそれぞれ専門を分けたほうが将来的にいいのではないかと話し合い、私は当時からニーズが高まっていた審美歯科と矯正歯科を選びました。大学卒業後は、大学院に残るか同院で働くかで迷ったのですが、早く父を支えられるようになりたいという思いがあり、初期研修が終わってすぐにここで働き始めました。
今後の展望と読者の皆さんにメッセージをお願いします。

【帆足理事長】患者さんの求める治療をライフステージに合わせて提供し続け、「一生涯通ってもらえるクリニック」をめざしています。オフィス街にあるクリニックですから、定年退職により神田エリアを離れることになる患者さんも多くいらっしゃいます。他の歯科医院とも連携を取って、エリアの違うクリニックでも紹介できるようになれば、その患者さんにとって、本当に一生涯のかかりつけ医になれるのではないかと考えています。
【杉田先生】歯が痛いから治療するのではなく、痛くならないための医療が大切だと思っています。なるべく痛みが出ないよう心がけ、そして患者さんの希望に沿った治療を提供していきますので、歯科医院が苦手という方も勇気を出して足を運んでいただきたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とはセラミックを用いた補綴治療/3万8000円~
インプラント治療/45万円~
マウスピース型装置を用いた矯正/35万円~