岩本 耕太郎 院長の独自取材記事
帝国クリニック
(千代田区/日比谷駅)
最終更新日:2024/02/06
1975年に開院した「帝国クリニック」は、東京メトロ日比谷線・日比谷駅から徒歩3分、老舗の帝国ホテルの本館4階にある。歴史ある内科クリニックを約30年前に引き継いだ岩本耕太郎院長は、近隣のビジネスパーソンやホテルの宿泊客など、幅広く診療にあたっている。岩本院長が大切にしているのは、患者と一緒に医療をつくり上げていくこと。医学の知識を用いて、患者一人ひとりの事情に寄り添いカスタマイズする、そんな診療を心がけているという岩本院長に、診療方針や治療の内容、医療に対する思いなどについて話を聞いた。
(取材日2023年12月18日)
誰でも気軽に受診を。心と身体に向き合うクリニック
こちらは、お父さまの代から続くクリニックだと伺いました。
はい。父が開業したのが1975年なので、もうすぐ50年になります。私は父方も母方も親戚一同医師ばかりで、私も自然と医師になるものだと思って育ちました。子どもの頃に父に往診に連れて行ってもらったこともあり、医療の世界は常に身近な存在でした。医学部を受験する際に、周りの受験生たちは大切な誰かの病気を治したいという思いなど、医師を志す具体的な理由を話したとよく聞くのですが、私の場合は他の世界をあまり知らず、周囲がみんな医師だった、というのが率直な経緯です。それでも、この仕事を始めて10年20年とたち、だんだんと医師としてのやりがいや面白さがわかるようになってきましたね。
勤務医時代は、主にどのような経験をされてきたのでしょうか。
大学卒業後は、都内の大きな病院で2年間の初期研修を受けました。当時は今と異なり、選択した診療科以外の科を回ることはなかったのですが、私は「将来内科医になるのだから、今のうちに幅広い経験を積んでおきたい」と、病院に直談判したんです。その希望が認められ、外科、放射線科、麻酔科の3つの科を半年から1年ぐらいの間経験させてもらうことができました。その後は千葉県の亀田総合病院で循環器内科や糖尿病の治療に携わり、また、アメリカに留学して、遺伝子工学も学びました。直接内科に関係がない勉強も多かったのですが、どんな経験も少しずつ今の診療のプラスになっていると感じます。樹木に例えると、枝をすべて取り払ってしまうと、成長は早いけれど細く実りのない幹しか育たないようなものです。近道で効率良く生きるのではなく、無駄な経験は一つもないと考え、自身の専門以外の勉強も大切にしてきました。
患者さんの層としては、どのような方が多いのでしょうか。
近隣で働くビジネスパーソンや女性の患者さん、それから、場所柄、ホテルに宿泊している方が多いですね。また、当院では英語で診察ができるので、遠方から来てくださる日本在住の外国人の患者さんもいらっしゃいます。ご相談内容としては、内科に限らず、風邪やちょっとしたケガ、高血圧や糖尿病などの慢性疾患、それからメンタル的な不調など、本当に幅広い症状の患者さんがいらっしゃいます。総合的にといいますか、大きな病院に行く前にまず診てほしい、というご相談で来院いただくケースが多いですね。
「どの病院」ではなく「どの医師」の視点で紹介
診療の際に、重視していることはありますか?
内科なのでいろいろな不調を訴える患者さんがいらっしゃいますが、私が診療で皆さんにお話しするようにしているのは、睡眠と食事の大切さです。まず睡眠に関してですが、睡眠不足が続くと、ほとんどの方がメンタルの不調が出やすくなると考えています。当院では、質の良い睡眠、深い睡眠を取るための方法などについて、必要に応じて指導します。それから、食事に関して感じるのは、いろいろなメディアの情報を耳にして、偏った食事を取ったり無理なダイエットをしたりしている方が多いということです。こちらについても、体調を整えるための栄養の取り方、食事の仕方などについてご説明するようにしています。
クリニックとしての診療方針、理念などをお聞かせください。
患者さんのかかりつけ医、主治医として、何でも相談できるクリニックでありたいと考えています。父が開院してから間もなく50年、私が院長を継いで30年になります。何十年もお付き合いのある患者さんも多いのですが、そうすると、その間に皆さん内科の症状はもちろん、体のあちこちに健康問題が生じることもあるでしょう。そのときに、必要に応じて専門的な医療機関を紹介したり、可能な場合は当院で手当てをしたりして、治療の道しるべをつけてあげるのがかかりつけ医としての役割だと考えています。そのためには、他の診療科の内容も含めて、常に新しい情報をインプットして、勉強を続けることが必要だと考えています。
より専門的な治療が必要な場合は、どのような病院に紹介されるのですか?
皆さん、「どの病院か」を意識しますが、実は大切なのは、どの病院で治療を受けるかではなく、どの医師に治療をしてもらうかだと考えています。専門的な知識や技術を持つ医師がいる病院では、その疾患に対する専門性の高い治療が受けられることが期待できますが、その医師が他の病院に異動してしまったら、同じレベルで治療を受け続けられるかはわかりません。私の頭の中では、個別の疾患ごとに、この病気ならこの先生、この治療ならあの先生と、適切に紹介できるよう先生方のお名前がリストになっています。また、大きな病院の先生を紹介すると、時に患者さんが委縮してうまく相談できないこともあると思うので、必要に応じて私が間に入り、患者さんの立場に立って紹介先とやりとりするようにしています。
医学の知識を用いて、患者と一緒に医療をつくり上げる
先生のお人柄についてもお伺いさせてください。何か趣味などはありますか?
約40年間サーフィンをやっていて、今でも毎週のように海に行っています。スポーツは大体勝ち負けがありますが、サーフィンの場合は自然が相手なので、絶対に勝つことができません。勝ち負けではなく、どれだけ自分が普段の肩書や社会的に背負っているものを取り去って自然に合わせられるか、そこがサーフィンの楽しさであり、やめられないところですね。私にとってのサーフィンはストレス解消というより、エネルギーのチャージです。週末に自然からエネルギーをもらって、月曜日からの診療に向けたパワーを蓄えています。
クリニックとしての将来の展望はありますか?
息子がいるのですが、私と同じく医師をやっています。ゆくゆくはここを継いでくれるということなので、クリニックの将来については安心して任せようと考えています。私としては、ある程度ここを任せられるようになったら、医師として新しい仕事をやってみたいと考えています。今考えているのは、外国籍の患者さんを対象にした往診です。例えば、ホテルに滞在していて具合が悪くなった旅行者など、どこに行ったら良いかわからず困っている外国の方がたくさんいらっしゃると思います。若い医師などと一緒に、そうした方たちを往診してお役に立てるような医療を行ってみたいと考えています。
最後に、患者さんに向けたメッセージをお願いいたします。
私のことを、「親戚のお医者さん」だと思って、気軽に相談に来ていただけるとうれしいですね。患者さんが、「こんなこと聞いたらいけないのではないか」と、迷ってしまい、医師になかなか質問できないという話を耳にすることがあります。医師が相手だと思うと相談できなくなってしまうという方でも、血のつながった親戚だと思えば、何でも相談できるのではないでしょうか。私は、いわゆる正しい知識を学ぶのが「医学」だとしたら、患者さんと一緒につくり上げていくものが「医療」だと思っています。患者さんお一人お一人の希望や事情に耳を傾け、医学の知識を用いてその人に合ったカスタマイズをする、そんな診療をしていきたいですね。