小坂 和輝 院長の独自取材記事
小坂こども元気クリニック
(中央区/月島駅)
最終更新日:2026/03/11
「子どもの声を聴き、子どもとともに街をつくる」――そんな揺るぎない信念を胸に奔走する小児科医師が、東京都中央区にいる。「小坂こども元気クリニック」院長の小坂和輝先生だ。2001年に月島で開業し、2023年には佃へ移転。これまで多くの子どもたちに寄り添ってきた。広島大学医学部医学科を卒業後、聖路加国際病院小児科や東京女子医科大学病院循環器小児科で研鑽を積み、医師として診療に携わる一方、法律を学び法務博士号を取得。さらに、「子どもたちの側に立って全力で動ける大人でいたい」と、2007年からは中央区議会議員としても活動している。子どもへの深い愛情と行動力を原動力に、小児医療と区政の両面から地域に向き合う小坂院長にインタビューを行った。
(取材日2026年1月29日)
子どもの声を聴き、全力で行動できる大人でいたい
クリニックの特徴を教えてください。

2001年に開業した当院は、病児保育施設を併設する小児科であり、そして地域に子育て支援の場を提供し、NPOと協力しながら子どもたちのための環境整備に力を入れてきました。2023年、地域開発に伴い月島から佃へ移転し、現在病児保育は休止中ですが、開業から一貫して子育てに密接に関わる場として、病気の子どもの治療はもちろん、病気でない子も含め、子どもたちが豊かな生活を送れる環境づくりをめざしてきました。しかし、今の社会には、子どもの側に立って全力で考える大人が決して多いとは言えません。そこで2007年からは、中央区を子育て日本一の区にすることを掲げ、中央区議会議員としても取り組んできました。
先生は、なぜ小児科医師になろうと思ったのですか?
子どもが好きだからです。「医師になるかも」と思ったのは小学生時代。父が薬剤師で、親戚に医師がいたことが影響しました。進路を決める時期、何かしら子どもとふれあう仕事がしたくて教師か医師かと考え、小児科医師を選びました。大学病院時代は循環器小児科にいて、重症の子どもを診る機会が多かったです。当時は、医療訴訟が増えてきた時代で、ある時、難しい心臓手術を受けたお子さんのご家族が、お子さんに障害が残ってしまったのは、手術に問題があったのではと疑問に思われたことがありました。私たちチームは治療の経過をそれぞれの立場から丁寧に説明させていただきました。今も、そのご家族からはお便りを頂き、私も楽しみにしています。子どもたちは、成長してからも小児科医師をずっと覚えていてくれて、幼い頃に診た子が、街であいさつをしてくれる。そんなことが、私には何とも言えずうれしいことですね。
子どもたちと接するにあたって、大切にされていることを教えてください。

「子どもの声を聴くこと」です。診察室で子どもたちと会話を交わすことはもちろん、毎朝の習慣として、街角に立って登校する子どもたちの見守りも行っています。そこで、登校する子どもたちに「おはよう」と声をかけながら様子を見ます。私としては、その時間も診察の一環なんです。「少し元気がないな」「何とか頑張れよ」と声をかけるのも、広い意味での治療だと思っています。子どもたちとの何げないやりとりは、議員活動にも生かせていると感じていますね。また、特に近年は、心に問題を抱える子どもたちが増加傾向にありますよね。いじめや不登校、発達障害など、背景はさまざまです。そうした状況にも対応していくため、当院では毎週火曜日と金曜日に臨床心理士の方に来ていただいています。
診療や子育て支援を通じて子どもの成長をサポート
診療の際に気をつけていることは何ですか?

私は診察の際、子どもたちに少しでも自信が芽生えるような接し方をしています。例えば予防接種を頑張って泣かずにできた子には「すごいね!」と声をかけ、「できた!」という自信を持たせたい。診察や予防接種を子どもが強くなれる機会にしたいんです。病気の治療や予防は小児科医の最低限の仕事で、その上で、その子の良さを1つでも2つでも見つけ、伸ばしたり自信をつけたりする手助けができたらと思っています。また、小児科医師は、子どもと大人と同時に2人を診ていると言えますので、親御さんに対しては、どんなに小さな疑問でも気軽に聞けて、何でも相談できるような雰囲気をつくるようにしています。
小児科は子育てに密接に関わる存在ですが、現代の子育て環境に関して、課題を感じることも多いとか。
臨床の現場でも常々、子どもという社会的弱者を守る態勢がまだ整っていないと感じています。特に、自閉症や注意欠陥多動性障害など発達障害の子どもや医療的ケア児への支援は不十分で、その養育環境整備はもっと進むべきだと思います。型どおりの子育て支援ではなく、一人ひとりの個性や状況を見て、その子にとって最良の支援を考えていくべきではないでしょうか。私は小児科医師として、また一人の責任ある大人として、子どものための豊かな環境を整えていくことに力を尽くしたいです。子どもが健康であることは大前提とし、特に重視したいのは、やはり子どもの声を大切にすること。そして、障害の有無にかかわらず尊重し合い、学ぶことができるインクルーシブな社会の実現、そのための教育との連携、街づくりです。高齢化も進んでいますから、ご高齢の方が持つ知恵や経験が子どもたちへと自然に受け継がれる、多世代交流を含めた仕組みづくりも必要ですね。
医療面だけでなく、広い意味で子どもを守りたいという先生の思いが伝わってきました。

本質的な子どもへの支援とは何かと考えたときに、例えば障害があると特別支援学校や学級に通う子が多いですが、私は、特別支援学校に通うこと自体は分離であって、必ずしもインクルージョンではないと考えています。とはいえ、何の配慮や仕組みもないまま、障害のある子を通常のクラスに入れてしまえば、授業についていけず、結果的に苦しめてしまうでしょう。それでは意味がありません。また、首都直下型地震がいつ起こるかわからない今だからこそ、災害時の健康についても、子どもたちが学べる機会が必要ではないでしょうか。皆がともに、自分の可能性を信じて一生懸命に学べる環境づくりができればという思いで、子育て支援のためのコミュニティースペースも地域とともに作っています。
子どもへの愛情と世の中へ問題意識が行動力の源
先生の行動力の源は、どこから来ているのでしょうか?

根底にあるのは、子どもへの愛情です。そしてそれ以上に「このおかしい世の中をどうにか変えたい」という問題意識が、私の行動力の源になっているのかもしれません。医師になった当初は、目の前の患者さんの病気をいかに治療するか、つまり、純粋に医学的な観点で物事を考えていました。しかし今は、生物学的な健康だけでなく、人々の心理、さらには社会環境そのものをより良くしていかなければならないと考えるようになりました。その中で見えてきたのが「子どもの視点でつくられていない社会」や「障害のある子どもたちが、ともに学びたくても、ともに学べていない現状」です。そうした現実に対する問題意識が、私をここまで突き動かしてきたのだと思います。
日頃の診察の中で先生が気にされていることはありますか?
診察室で日々子どもたちの声を聴いていると話しましたが、実はそこにも課題があると感じています。多くの子が「良い子でいよう」として、本音をなかなか口にしてくれないんです。「何でも相談してね」と声をかけても、実際には足を運んでもらえないことも少なくありません。そこで、これは親御さん向けではありますが、コーヒーを飲みながら小児科医や臨床心理士とざっくばらんに雑談ができる場づくりを始めたいなと思うようになりました。より自然な形で、子どもの声を聴ける環境づくりにも力を尽くしていきたいと考えています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

とにかく、健康が一番です。何より大切なのは、早寝早起き。昔のテレビ番組で「早く寝ろよ!」を持ちネタにしていたコメディアンがいましたが(笑)、まさにそのとおりだと思っています。そしてそれは子どもだけではなく大人にも言えることです。私は、デンマークの多くの企業が実践しているような「4時に帰れる社会」を、日本もめざすべきと考えています。子育て・仕事・自分の趣味、そのすべてを楽しみながら、きちんと睡眠時間も確保することができる、そんな社会になるのが理想ですね。これからも子どもたちの未来のために、私は動き続けていきます。

