高野 治人 院長の独自取材記事
たかのクリニック
(中野区/富士見台駅)
最終更新日:2026/06/15
「救急の現場にいた時、救急車で運ばれる前にもっと予防できたら……と思っていたんです」。穏やかな口調でそう語るのは、循環器内科を診療する「たかのクリニック」の高野治人(はるひと)院長。高野院長はこれまで東京大学医学部附属病院や東京山手メディカルセンターなどで研鑽を重ね、東京大学医学部附属病院循環器内科医員として臨床と研究の双方に従事してきた。そうした経験を背景に開院した同院では、循環器疾患の診療はもちろん、生活習慣病の管理や予防医療にも力を注ぐ。高野院長の物腰やわらかで真摯な語り口からは、中野区で医師としての責任を果たしたいという熱い想いと病気を予防するための取り組みの重要性が静かに伝わってきた。「地域に根差した親身な医療」をモットーに掲げる高野院長に、同院の特徴や診療にかける想いを聞いた。
(取材日2026年2月12日)
診療に加え、地域の子どもたちの健康管理を担いたい
2009年に開院したクリニックは18年目に入りましたね。

基本的に患者層に大きな変化はありません。ほとんどが近隣にお住まいの方ですが、ご友人の紹介で埼玉など遠方から来院される方もいらっしゃいます。ただ、年齢層は徐々に高くなってきました。開院当初から通院してくださっている方が多く、現在では80代、90代の患者さんも増えています。若い世代では、発熱などの急な体調不良や、お子さんのワクチン接種で受診されるケースが多いですね。
開院当初から変わったことはありますか?
以前は、同じく循環器内科を専門とする父と2人体制で診療していましたが、父が引退したため、現在は基本的に私1人で診察しています。また、診療体制として金曜日の午前を休診にし、その代わりに木曜日を開けるようにしました。しばらくの間は患者さんを戸惑わせてしまったかもしれませんが、木曜日に来院される方は実は結構多いんです。この地域の医療機関は木曜休診が多く、祝日の翌日などは発熱で受診される方が数多くいらっしゃいます。
地域の事情や環境も影響しているのですね。

その点で言えば、地域の医師の引退もあり、昨年から中野区の学校医の仕事が増えました。学校健診やインフルエンザ流行時の学級閉鎖への対応などです。また、医師会からの推薦と中野区長からの委嘱を受け、区の教育委員も務めています。金曜午前を休診にしたのも、実はこうした活動のためなんです。クリニックを開院して地域の皆さんと日々接する中で、教育の分野、特に子どもたちの健康管理にも責任を果たしたいと考えるようになり、お引き受けしました。私自身、子どもを持つ保護者としての当事者意識を持ちながら、教育委員会に参加しています。
中野区医師会での活動や認知症サポート医の活動に注力
中野区医師会での活動にも注力されていると伺いました。

はい、もう10年目になります。中野区医師会の理事として、現在は、小児・学校保健部副担当、学術・公衆衛生部主担当などを担っており、予防接種や禁煙の外来も含めた感染症対策に携わっています。学術面では各種勉強会の開催も行っています。新型コロナウイルスの流行時は診療制限などもあり、たいへん苦労しましたが、その経験を踏まえ、今は次のパンデミックに備えた体制づくりを進めているところです。個々の医療機関だけでは難しい課題についても、医師会として取り組んでいます。
クリニックだけにとどまらず、さまざまな活動をされているのですね。
障害者施設や介護施設の嘱託医も務めている他、認知症サポート医としての活動にも力を入れています。地域包括支援センターと連携し、認知症の相談・診断・ケアを責任を持って行います。連携先の地域包括支援センターから要請があれば、患者さんに来院していただくか、こちらから伺って対応する予定です。先日は、フレイルのサポートに関する講習にも参加しました。総じて今は、子どもから高齢者まで幅広く診させていただいていますね。
そんな中、クリニックでは禁煙の外来に再び力を入れ始めたとお聞きしました。

禁煙の外来自体は以前から行っていましたが、治療薬の販売中止の影響でしばらく休止していたんです。バレニクリン酒石酸塩という、ニコチンを含まない内服の医療用禁煙補助薬で、タバコへの欲求の減少が見込め、無理なく禁煙できる効果が期待されます。その薬が再び販売されるようになったため、改めて取り組むことにしました。保険適用となる12週間、薬を服用していただきます。病気を防ぐためにも、できることなら禁煙するのが最善だと考えています。循環器疾患だけでなく、がんやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の予防にもつながります。
「家族に行うような親身な医療」を提供したい
クリニックのモットーである「地域に根差した親身な医療」について、具体的にお聞かせください。

モットーは開院当初から変わっていません。私が考える「親身な医療」は、「自分の家族に行うであろう医療」です。患者さんが自分の親だったらどうするだろう、自分の子どもだったら何を選択するだろう、と常に考えています。また、かかりつけの患者さんには、病気だけでなく日常生活で困っていることがないかも伺うようにしています。例えば「足が悪くて買い物に行けない」というようなことがあれば、介護保険導入のため地域包括支援センターに連絡しますし、認知症の家族が夜に徘徊してしまうというようなことがあれば、事故防止のための対策を一緒に考えます。患者さんの生活まで支えられる医療を心がけています。
病気を治療するだけでなく、生活まで支えるという医師としての責任感は、どこから芽生えたのでしょうか?
開院したばかりの頃は、自分のクリニックのことで精一杯でした。しかし、医師会などの活動に参加する中で、もう少し広い範囲で医療に関われないかと考えるようになったんです。振り返ると、その原点は昔いた救急医療の現場にあったように思います。循環器内科ですから、心筋梗塞など命に関わる状態の患者さんが救急車で運ばれてきます。治療にあたる中で、「運ばれる前にもっと予防できたら……」と感じるようになったんです。そこから「病気を防ぎ、救急搬送される方を減らしたい」という思いで、これまで取り組んできました。
循環器系の病気を防ぐため、「こんな症状があったら相談してほしい」という受診の目安はありますか?

当院に通っているご高齢の患者さんの多くは、生活習慣病を抱えています。糖尿病や高血圧症といった生活習慣病はほとんど自覚症状がないため、意識していないとご自身では気づきにくく、心筋梗塞や狭心症につながるケースも少なくありません。人間ドックや健康診断を定期的に受けて数値を把握することはもちろんですが、不整脈や動悸が続く場合には、早めに受診していただきたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
生活習慣病を防ぐには、食事や睡眠に加えて運動も重要です。当院でも、定期的に運動できていないという方には、まずはしっかり歩くことをお勧めしています。フレイル予防の観点からは理想の歩数は8000~1万歩とされていますが、4000歩以上でも予防につながるといわれていますので、少なくとも毎日4000歩を目標にしていただきたいですね。また、フレイルや認知症の予防には社会参加も大切ですから、年齢を重ねても社会との関わりを持ち続けてほしいと思います。繰り返しになりますが、高血圧症や高脂血症、糖尿病には自覚症状がほとんどありません。健康診断などで当院を上手に活用していただき、単に数値を改善するだけでなく、その先にある脳梗塞や心筋梗塞の予防まで、一緒に取り組んでいきましょう。

