石井 厚子 院長の独自取材記事
哲学堂 石井眼科医院
(中野区/落合南長崎駅)
最終更新日:2025/10/22
緑豊かな公園のすぐ近く。「哲学堂 石井眼科医院」はバス通り沿いの一戸建ての2階にある。前身の「佐野眼科」は地域で50年以上親しまれていた歴史のある眼科医院。娘である石井厚子院長が後を継ぎ、名称を改め、場所も移して2013年に新しいスタートを切った。高齢者から小さな子どもまで患者の年齢層は幅広く、家族ぐるみで訪れる人が多いのは、長く地域に密着してきた医院ならではだろう。1階には石井院長の夫である石井太郎先生が院長を務める内科医院があり、連携が取りやすいのも特徴だ。「質の高い医療を提供するのは当然のこと、優しく親切な医師でありたい」と話す石井院長に、日々の診察や移転後約10年の変化など、さまざまな話を聞いた。
(取材日2025年9月10日)
地域で長年親しまれ、世代を超えて愛される眼科医院
こちらは長く地域で親しまれている眼科と伺いました。

母がここから2、3分の場所で50年ほど前から「佐野眼科」として開業しており、私も出産を機に大学病院を辞めた後、20年近く母を手伝っていました。母が引退したのを機に名称を「哲学堂 石井眼科医院」と改め、院長として引き継ぎました。ちょうど主人も開業を考えていた時期でしたから、佐野眼科の患者さんも変わりなく通えて主人と一緒にやれる場所を探して、現在の場所に移転したのが2013年のことです。母は小学校の学校医をしていましたので、私より年配の方が「小学生のとき、お母さんにお世話になっていたんですよ」といらしてくださったり、またそのお子さんやお孫さんを連れてきてくださったり。家族ぐるみで受診くださる方が多いのは当院の特徴の一つです。
子どもの患者さんも多いと伺いました。どのような対応をされていますか?
小学校の学校医や、幼稚園の園医もしているので、地域のお子さんが多く来院されています。特に遠視性弱視は早期発見・早期治療が大切で、2、3歳から治療を始めないと、大人になっても視力が出ないことがあります。小学校入学時の就学時健診ではちょっと遅いんですね。ですから、当院では来ていただいた小さな患者さんには必ず視力検査をしています。文字が読めないお子さんには動物のマークや輪の穴の向きを示す方法などを使い、なるべくスムーズに視力測定ができるよう配慮しています。待合室にもコアラやカエルの椅子を置いたり、1階から階段を上がってくると、天井までお花の壁紙が続いていたりと、子どもが安心できるよう空間づくりも工夫しているんですよ。
最近は若い年代層の患者さんも増えているそうですね。

小学生・中学生の患者さんがかなり増えています。学校の授業でタブレットを使うようになり、子どもの近視が急増したためだと考えています。こうした患者さんには眼鏡を作るだけでなく、少しでも進行を抑えるための指導も大切です。例えば「30分近くを見たら、20秒遠くを見るように」といった声かけを毎回、お母さまにも一緒にお伝えするようにしております。また、紫外線が近視抑制に役立つため、2時間くらいは外遊びをすることが大切ということもお伝えしております。しかし特に新型コロナウイルス感染症流行以降は子どもたちが外で遊ぶ機会が減ってしまいました。屋内でタブレットを長時間見る生活は、本当は良くないんですね。小さな頃から外遊びをして、紫外線を体に浴びたり、遠くを見ることが大切です。
患者の声に耳を傾け、一人ひとりに寄り添う診療を
診療の際に心がけていらっしゃるのはどういったことでしょうか。

患者さんとの会話を大切にしています。混雑している日でも、できるだけ一人ひとりの話に耳を傾け、生活スタイルや困っていることを丁寧に聞き取ります。パソコン作業が多いのか、コンタクトレンズを使っているのかなどを伺わないと、正しい治療方法にたどり着けません。例えばアレルギーの目薬ですが、今は1日2回のもの、4回のもの、もしくは夜寝る前に目の周りに塗るだけのものがあります。忙しい方なら2回のものを処方したり、お子さんで目薬が苦手なら寝てから1回塗れば良いものを処方したり。中にはジェネリック医薬品は不安といった方もいるので、そういった方には先発薬を個別に取り寄せるなど、なるべく希望に沿った処方を心がけています。何よりきちんと投薬を続けていただくことが大切ですから。
とにかく「患者さんの訴えに耳を傾ける」ことを大切にされているんですね。
はい、不具合の本当の原因を把握する上でも、話をよく聞くことは大切です。よくあるのが30代、40代で眼精疲労で老眼を疑い来院する方。こういった症状の場合、原因がドライアイのケースが多いいです。最近は皆さん、パソコンやスマホで目を酷使しています。画面を見続けていると、まばたきが極端に減り、目が乾いて疲れてしまうんです。こういった症状にはヒアルロン酸の入った目薬を処方します。もちろん目の疲れる原因には緑内障や老眼もありますから、きちんとした検査が必要です。自己判断なさるより、まずは一度受診なさることをお勧めしたいですね。
他にも患者さんへの配慮として、意識されていることはありますか。

質の高い、良い医療を提供するのは大前提として、優しく親切な医師でありたいと考えています。その一環として環境整備にも力を入れてきました。移転の際に院内をバリアフリーにして、駐車場も整備しました。この規模で駐車場がある医院は都内では少ないのですが、当院は夫の医院と共用で2台分の駐車場があります。ご家族に送ってきてもらうなど、足が不自由なご高齢の方でも通院しやすいと、遠くからいらっしゃる方も増えています。また、エレベーターがあってもご自分で乗り込むのが難しいという場合は、インターホンで呼んでいただければスタッフがお迎えに行きます。この他、ずっと院内処方を続けています。高齢の方や小さなお子さんを連れた方は、薬局へ寄るのは大変ですから。点眼の回数や種類、つける期間などを説明しながら、一人ひとりの患者さんの袋に直接書き込んだり、目の悪い方には大きくマジックで書いたりするなどさまざまに工夫しています。
医師としての進化をめざして知識のアップデートを継続
1階の内科医院とも連携されているのですね。

糖尿病や高血圧などは、眼科と内科は密接に関係していますから、こちらで連携して診て差し上げられるのは、患者さんのご負担を減らすことにもなると思います。足が不自由で、つえをついたり、押し車を押していらっしゃるような患者さんに、「ついでに内科にも寄っていけるのは助かるわ」と言っていただくと、ここへ移ってきて良かったなと思いますね。この10年で、連携するケースがかなり増えました。内科で診察を受けた患者さんが、目にも症状が出てきていないか検査するといった連携もできますね。診察時間や定休日、夏休みなども同じにして、両方を利用しやすくしています。
先生ご自身が健康で気をつけていらっしゃることはありますか。
愛犬のミニチュアダックスフントと毎朝散歩するのが一番の健康法です。毎日1時間以上歩いていますし、病院が休診の木曜日と日曜日にはドッグランへ行って2、3時間過ごします。犬が遊んでいる間は、犬について回ってうんちやおしっこを片づけたり、他の犬とけんかしていないか見張ったりと、かなり運動になります。それから犬のお友達の飼い主さんとおしゃべりもできますし、犬と過ごすと幸せホルモンが出るんだそうで、こうした日課がとても良いリフレッシュになっています。
これからの目標や、力を入れていきたいことを教えてください。

おかげさまで幅広い年齢層の多くの患者さんに支えていただき、ここまで来ました。次の10年も質の高い良い医療を患者さんに提供していくことが目標です。そのためには私自身も今後も知識をアップデートしていかねばと強く感じております。今までにない新しい点眼薬が出た場合等は中野区医師会に講師の先生を招いて勉強会を開いたり、最近はオンラインの勉強会も充実しておりますから、うまく活用して、頭を常にリフレッシュしております。気がつけばこの地に移転して10年。これからも感謝の気持ちを忘れずに、新しい知識で質の高い良い医療を患者さんに提供していきたいと思います。

