野城 康成 理事長の独自取材記事
野城歯科西池袋クリニック
(豊島区/要町駅)
最終更新日:2021/10/12
東京メトロ有楽町線の要町駅から徒歩3分。池袋駅西口からも徒歩12分という好条件に位置する「野城歯科西池袋クリニック」。歯科医師をめざす前は子どものがん遺伝子を研究していたという経歴を持つ野城康成理事長は「口腔内の症状を全身疾患とも関連させて原因を究明する」という姿勢に基づき、医科との綿密な連携を重視。独自に打ち出した「健咬美」をキーワードとして、噛み合わせの狂いをなくし全身の健康を整える診療に力を入れる。一方で、最近症例が増えているという睡眠時無呼吸症候群や、高齢社会の到来に伴いニーズが増加している在宅訪問歯科診療にも取り組む。どんな質問にも的確に答えてくれる理事長の姿からは、医療に対する広い見識と高い意識が強く感じられた。
(取材日2016年7月5日)
口腔も全身の一部と考え症状を捉える
まず、開業までの経緯を教えてください。
もともとは、子どものがん遺伝子について、大学院の修士課程で学んでいました。研究室の中で、細胞を相手にしていたのですが、人間や動物と違って動きがないんですね。するとある時から、人間を相手にしたいという気持ちが強くなってきました。そのほうが自分にとってやりがいがあるのではないか、と。それで24歳のときに進む道を変更し、日本歯科大学の3年次に編入したのです。歯学部を卒業した後は、国立国際医療研究センターに6年ほど在籍し、1995年に開業しました。歯科医師になってからも、それ以前の研究者としての経験は役立っています。虫歯や歯周病を治療する際、通常は口腔だけに着目しますが、私は口腔も全身の一部として捉えるようにしています。それには、研究者時代に培った医療全般の幅広い知識が役に立つのです。
具体的にはどのような診療をされているのですか?
標榜科目は歯科・小児歯科・口腔外科ですが、その中で「噛み合わせと全身バランス」を重視した診療をしています。全身の筋膜は、頭の先から足の爪先までつながっていますから、どこかに問題があると、全身のバランスが狂ってくるのです。例えば奥歯の噛み合わせをよくすると、頭痛や肩こりが解消されたりすることが多々あるのは、今までにも言われてきました。そこからさらに一歩踏み込んでみると、噛み合わせによって骨盤のゆがみまで修正されてくることもあります。もちろん、どちらが原因かということもあるので、ときには整形外科やリハビリの先生と組んで診療することもあります。そういった噛み合わせの狂いや姿勢の歪みなどのバランスを整えることで、全身のさまざまな症状を改善することを念頭に置いた診療に力を入れています。
口の中と全身とは深い関係があるんですね。
口腔は消化管の入り口ですから、全身に影響するいろいろな菌が入りやすいのです。また、最近では歯周病と糖尿病との関係や、歯周病による早産(低体重出産)のリスクが通常の7倍もあることなども分かってきました。これはアルコールやタバコよりもかなり高い数値です。他にも全身的な原因が関与していると疑われる場合は、疾患の既往を確認したり、血液検査をすることもあります。ときには主治医との連携で、より詳しい検査を依頼したり、投薬されている薬について相談もします。そのためには医科の先生との信頼関係も重要なので、自分の出身の医局以外にも、近隣の病院などと、密接な連携を取るようにしています。
五感を研ぎ澄ますことも医療には重要
睡眠時無呼吸症候群はどんな治療をするのですか?
睡眠時無呼吸症候群は、現在症例がとても多く、最近では治療効果の高いマウスピースも作られるようになりました。従来のCPAP(シーパップ)という治療方法は、無呼吸と低呼吸の回数を示す指数が低い場合に保険適用になるなど、いくつかの問題がありました。最近は、そういった点をカバーできるマウスピースが開発され、注目を集めています。適応範囲も従来のものよりはるかに広く、重症の患者さんにも効果があるとされています。そういったマウスピースを使用した治療を、要町病院のような睡眠科のある病院と連携しながら進めているところです。その他には、在宅訪問歯科診療も手がけていて、老年歯科の認定医の資格を持っているドクターが主に担当しています。
診療における先生のモットーを教えてください。
モットーと言えるものは3つあります。まず、患者さんや診療に対して正直であり、真摯であること。次に、口腔内の疾患を全身と関連づけて捉えた上で診療を進めていくこと。最後に、新しい情報をできるだけ入手しながら、それらが本当に良いものかどうかを見極める目を持つということです。メディアに取り上げられて話題になっている治療法が完璧だとは限りませんし、逆に批判されている治療法のすべてが悪いということもありません。どの治療にもメリットとデメリットがありますし、歯科医師の技術力も関係してきます。さらにいえば五感もとても大切だと私は思っています。五感を研ぎ澄ましていると、「この症状は通常ならばこういう病気だけど、ちょっと違うような気がするから、念のため検査をしてみよう」と気づくこともあります。この繊細な感覚が、医療にはとても重要なのです。
設備面についてはいかがですか?
患者さんの詳細なデータを得るために、先端の医療技術をできるだけ導入しています。レントゲンに比べて膨大な情報が得られる歯科用CTを導入したことで、それまでの診断が覆される可能性もあります。私もそういった情報をこれまで以上にしっかり使いこなすための努力を怠らずに、隠れた原因を見つけ出していきたいと思います。また、勤務医時代に感じたのは、手術室は非常に清潔な反面、外来診療室はそれほどではないということでした。一般のクリニックとしてはその中間がベストだと考え、細菌やウイルスが患者さんに感染しないようにしています。また、感染症をお持ちの患者さんの診療後は、専用の消毒液による消毒を行うなど、セーフティラインを引いています。
10年、20年後に良かったと思える治療をしたい
患者さんへの接し方で心がけていることはありますか?
まずは、心を開いていただけるようにすることです。そのためには患者さんの声に耳を傾けることが大事ですね。最初の段階でどれだけ多くの情報を得られるかが重要です。その情報から隠れた原因に気がつくこともありますから。それから、無駄なお金を使わないでほしいということは、常に患者さんに言っています。単に費用の額だけで決めるのではなく、10年後、20年後に、患者さんも私自身も良かったと思える治療をしていきたいと思うのです。患者さんが納得できるようにゴールを設定し、納得できなければさらに相談をして、患者さんの迷いがなくなった時点で治療に入ります。そのための時間はかなり費やしていると思います。スタッフもみんな一生懸命話してくれるので、患者さんも僕に聞きにくいことは、スタッフに聞いてくれているようです。
スタッフの方もみなさん熱心なのですね。
そうですね。みんな優秀で、講習などで講師を務めているスタッフもいます。私が代表を務めている社団法人では、歯科の人材養成も手がけており、いろいろな大学の名誉教授の方や薬局関係の方と教材などを作成したりもしています。私自身も、その関係や、他にも医科の講演などで、全国を飛び回っていますよ。歯周病と糖尿病の関係もそうですが、医科から学べることもたくさんある反面、医科の先生方は歯科の事に詳しくないのです。そのため、歯科のベーシックな事から、病棟で活用できるノウハウなどについての講演を依頼されることが多いのです。それ以外にも、大学卒業時からずっと、仲間との勉強会も、毎月1回続けています。
それでは最後に、今後の展望について伺えますか?
医療全般の自分の知識をさらに増やし、患者さんの要望に応えていきたいと考えています。歯科診療に関しては、いずれ再生医療の方向へ進んでいくと思いますが、まだまだ時間はかかると考えています。それまでの間にもさまざまな優れた治療法が出てくると思うので、それらを随時取り入れながら、口も全身の一つであるという観点から病状を捉えるレベルを、さらに医科に近づけていきたいですね。そういった診療にあたる上では、自分と価値観を共有し、信頼できるスタッフの存在も、とても大切です。クリニック全体の活発な雰囲気によって、提供できる診療のクオリティーも高められるのではないでしょうか。