久保田 芳明 院長の独自取材記事
久保田クリニック
(豊島区/西巣鴨駅)
最終更新日:2026/07/13
「久保田クリニック」は昔ながらの商店が立ち並ぶ庚申塚商店街沿い、西巣鴨駅から徒歩6分の場所に位置している。日本循環器学会循環器専門医であり日本糖尿病学会糖尿病専門医でもある久保田芳明院長は、80年以上にわたりこの地域の健康を支え続けている同院の4代目。専門性を生かして、糖尿病や肥満症の治療、心筋梗塞など循環器疾患の予防・再発防止に力を注いでいる。また、そのために大学病院や総合病院との連携を強化し、「地域医療連携」を推進しているのも特徴だ。患者の健康をトータルに診る「全人的医療」をめざす久保田院長に、同院の特徴や今後の展望について聞いた。
(取材日2026年4月21日)
4世代で80年以上地域医療を支えてきたクリニック
はじめに、クリニックの成り立ちや特徴について教えてください。

1943年に曽祖父がこの地に久保田医院を開業、その後1953年に久保田病院、そして2010年4月に久保田クリニックと、時代によって規模を変えながら、約80年間4代にわたって地域の方の健康に関わってきました。父である前院長は、今も久保田病院時代からの患者さんを継続して診ています。また、「地域医療連携」を推進し、大学病院や総合病院と連携しているのも当院の特徴です。慢性期の治療はこちらで、当院でできない検査や治療は連携先の病院にお願いしています。私は現在も日本医科大学付属病院に在籍しており、そこで得られる先進の知見や専門的な診療経験を、地域の皆さんに還元できるよう努めています。院内で超音波や24時間心電図などの検査は行えるので、必要と判断した場合には、速やかに連携病院へ紹介し、入院が必要な際には迅速に対応できる体制を整えています。
長くこの場所で診療されているのですね。西巣鴨はどんな地域なのでしょう?
当院は昔ながらの商店街沿いに位置しており、久保田病院時代からこの地で過ごしている前院長や受付を担当している母は、地域に住む多くの方と顔見知りです。この商店街一帯は、当院の往診範囲でもあります。3世代、4世代と長く通ってくださっているご家族も少なくありません。医療と聞くとハードルが高く感じがちですが、普段のお付き合いの中でのちょっとしたコミュニケーションから、いわゆる全人的医療、それぞれの方の健康の悩みに幅広く対応できるようになるといいなと思っています。
隣接する大正大学とも連携されていると伺いました。

大正大学とは隣接しており、私は学生さんや教職員の方々の健康面のサポートをしています。当院の2階は大正大学の保健室になっており、保健室に来室された方に医療介入が必要かどうかの判断も即座に可能です。大学が共通テストの会場にもなっていますので、試験中に具合が悪くなって保健室に来られる方もいらっしゃいます。
循環器疾患と関連性の高い糖尿病・肥満症治療にも注力
こちらには、どのような症状での受診が多いのでしょうか?

風邪や発熱、高血圧症・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病、花粉症などのアレルギーと、さまざまな疾患のある方がいらっしゃいますね。私は循環器専門医ですので、「胸が痛い」「動悸がする」といった症状にも対応しています。最近は循環器疾患の患者さんが実は糖尿病にかかっていたり、予備軍だったりするケースがあることもわかってきたので、糖尿病の治療も併せて行っています。
循環器疾患と糖尿病が関係しているということですか?
心筋梗塞の患者さんのおよそ半数は、糖尿病や糖尿病予備軍といわれています。ですから疑いがあれば検査をして、糖尿病と診断された場合はきちんと治療をする必要があります。そうしないと再び心筋梗塞を引き起こす可能性が高くなりますから。心筋梗塞と糖尿病を別々に診るのではなく、知識を持った医師がトータルに患者さんを診ていくことで、リスクも軽減できるはずです。心筋梗塞の再発を予防するために、糖尿病の治療を行いながら病状をコントロールしています。
こちらでは肥満症の治療も受けられるそうですね。

はい。糖尿病の治療に加え、肥満症の治療にも注力しています。体格指数(BMI)や高血圧・糖尿病・脂質異常症などの合併症の有無を総合的に判断し、「肥満症」と診断されるのですが、食事や運動の見直しだけでは改善が得られないこともあるのです。そのような方に対して、2ヵ月に1度の栄養指導と週1回の注射薬で継続的な治療を行うことができます。このような治療を循環器専門医が対応できる医療機関は全国的にも限られています。私にとっては循環器と糖尿病の専門知識を生かせる分野でもありますし、患者さんからしても、大きな病院まで行かずに肥満症の治療が受けられるのは利便性の面からもメリットを感じていただけるかと思います。
その他に、循環器疾患と関連する症状などがあれば教えてください。
一つは睡眠時無呼吸症候群です。例えば、高血圧・糖尿病・脂質異常症の治療中にもかかわらず、心臓の病気で入退院を繰り返す方を検査すると、一定の割合で睡眠時無呼吸症候群であることがわかっています。また、心筋梗塞や心不全の裏にも、睡眠時無呼吸症候群が隠れているケースは少なくないでしょう。もう一つは喫煙習慣です。喫煙は心筋梗塞・脳梗塞・肺がん・肺気腫などのリスクにつながります。治療の際は、禁煙治療では患者さんの状態に応じて薬剤を選択する必要がありますので、禁煙の外来など専門的な医療機関で相談されることをお勧めします。ほとんどの場合は保険診療となり、費用面でも喫煙を継続するより負担は少ないと思いますよ。
めざすのは、地域医療連携による心不全の予防
診療の際に心がけていることはありますか?

「全人的医療」という言葉のとおり、1つの病気に留まらず、1人の患者さんをトータルに診ることを心がけています。大学病院で入院患者さんを担当していた際には、休日を問わず、毎日少なくとも1回は患者さんと顔を合わせることを大切にしてきました。患者さんとの距離を縮めれば、ふだん医師に対して言いにくいことも話しやすいでしょうし、治療に必要な情報も見つけやすいのではないでしょうか。また、患者さんの慢性期を担う地域のクリニックであっても、専門性の高い治療が受けられるよう努力していきたいです。もちろん当院ではできない検査や治療は、大学病院などと連携し、一人ひとりが必要なタイミングで検査や治療を受けられるよう配慮しています。
「全人的医療」の充実が、病気の予防につながるのですね。
心筋梗塞の患者さんが実は糖尿病だったり、高血圧症の方が睡眠時無呼吸症候群であったり、喫煙が将来の心不全につながったりと、いくつか原因が組み合わさって状態を悪化させることもあります。ホームドクターとして、何が大きな病気の原因となるのか、病気をどう予防すべきか、患者さんにそれをどう理解していただけるかを常に考えていなくてはなりません。そのためには先進の知識を得る努力も必要ですね。
最後に、今後の展望をお聞かせください。

地域医療連携によって心不全を予防できる地域を、一つでも多く増やすこと。これが私のライフワークです。循環器疾患の多くは、最終的に心不全へと進行する可能性がありますが、そこに至るまでにはいくつかの段階があり、それぞれ予防につなげることが可能だといわれています。まずは生活習慣病にならないこと、次に生活習慣病になっても心臓病を発症しないこと、もし心臓病になったとしても心不全に至らないこと、そして心不全を発症したとしても繰り返さないことを、それぞれの段階でめざします。これらすべてを地域のかかりつけ医もしくは高度医療機関のみで実現することは難しく、各立場や強みを生かして連携していくことが大切なのです。大学の勤務医であり地域の開業医でもある私ならではの視点を生かしながら、地域の医療機関が相互に連携できる仕組みづくりの実現をめざし、日々取り組んでいます。

