岡野 欣之 院長の独自取材記事
岡野歯科医院
(文京区/茗荷谷駅)
最終更新日:2025/09/12

複数の大学が集まる文教エリアとして知られる茗荷谷。そこで1915年から続いてきたのが「岡野歯科医院」だ。同院で院長を務めるのは、開業した祖父の代から数えて3代目となる岡野欣之(おかの・よしゆき)先生。祖父、父も得意とした義歯やかぶせ物などの補綴物全般の製作にこだわりを持つだけでなく、近年は天然歯だけでなく義歯を長持ちさせることにもつながる予防歯科にも力を入れているという。誠実な診療と対応で患者からも慕われ、親子3代で通う人もいるのだとか。地域とともに歩んできた同院の姿勢、岡野院長の補綴物や予防歯科への思いなどを存分に語ってもらった。
(取材日2025年7月30日)
会社・学校帰りの人に配慮し19時30分まで受付
1915年から代々続くクリニックだそうですね。

当院は1915年に祖父が開業し、この建物は1970年頃に建てたそうです。今の診療室は1990年頃にリノベーションしたもので、その時に、前院長である父が高圧蒸気滅菌器やデジタルパノラマエックス線撮影装置などの機器についても早くに導入しました。院内は照明を作り替えたり、今年の9月にはデジタルパノラマエックス線を新しいものに取り換える予定で、院内のアップデートもしています。歯科技工が得意だった父は、かなりのこだわりを持って補綴物全般を作っていました。私自身も義歯を扱う補綴が専門ですし、加えて矯正歯科についても学んできました。勤務医時代の経験を生かして、当院では一般歯科、小児歯科、歯科口腔外科、歯周病治療、義歯製作、マウスピース型装置を用いた矯正と幅広く行っています。周辺の働き世代の方や、学校・塾終わりの学生さんにも頼っていただきたく、平日は19時30分まで開けております。
診療で心がけていることは?
どういう状況か把握するためにも、患者さんのお話をいろいろと聞くというのは大事にしています。治療においても声を聞くというのは重要で、息の強さや発音の強さなどで体調の変化を推測できますし、義歯が発音に問題を起こしていないかどうかなどもわかります。もう一つは説明です。検査等で何がわかって、その状態に対してこういう治療をしますということは詳しく説明するようにしていますし、2つ以上の治療方法が提示できるときは患者さんにメリットとデメリットをしっかりと話して選択してもらうようにもしています。
患者さんとのコミュニケーションで大事にされていることは何ですか?

まずは話しやすい雰囲気です。当院では私のほかに歯科衛生士、受付を担当している妻の3人体制ですが、診療以外のコミュニケーションに2人の助けは欠かせません。もちろん、患者さんには私になんでも話してもらいたいと思っていますが、中には歯科衛生士や妻のほうが話しやすくて、診療後も20分ぐらい受付で話す患者さんもいますね。その会話からも元気があるかどうか、何か変化はないかなどの健康状態を知ることができるので、常に3人で情報共有するようにしています。
将来を見越した精密な義歯作りにこだわり
先生が特に得意としている治療は何ですか?

勤務医時代は、例えば口蓋裂の方の歯の補綴治療や、口腔がんで顎の骨を切除したときにどうやって義歯を入れるかなど、かなり特殊なケースの補綴治療に携わっていました。当院で診療を始めて、さまざまな義歯治療を手がけるようになりました。この数年は自分で技工して義歯製作をするのがますます面白くなってきたと感じています。世間では「義歯を使うようになると、残っている歯が持たなくなる」というイメージが一部でありますが、そんなことはありません。義歯のせいで残っている歯が駄目になるかどうかは、その義歯によりますし、患者さんのお手入れにもよります。精密に作られた義歯というのは、20年、30年と長持ちして使い続けることが望めるものなのです。父も同じ考えで、先を見越した精密な義歯作りにこだわっていました。
よくできた義歯であれば、お口の中で良い影響を及ぼす可能性があるということですか?
逆に、痛みや腫れはないけれどグラグラしている歯がある場合、義歯をうまく作ることで、その歯の寿命を延ばす可能性さえ考えられます。義歯のために歯を残すだけでなく、歯を残すための義歯を作ることも望めるんです。保険でも自費でも、義歯製作にはそれなりに高い費用がかかりますから、残っている歯を傷めず、長く大切に使えるよう、考えながら設計しています。もっと言えば、義歯は「作って終わり」ではありません。患者さんの口腔内は年を経て変化しますので、義歯も少しずつ足したり削ったり調整しなければなりません。私自身は、最先端の医療情報にアンテナを張りつつも、すぐに飛びつくのではなく、今までやってきた仕事の再評価をした上で取り入れるのが大切だと思っています。先代たちが作った義歯より先に壊れるようなものを作ってはいけないと心に留めながら治療を行っています。
近年は予防歯科にも力を入れていらっしゃるとか。

はい、先代たちの仕事、いわゆる欠損した部分を補う補綴については非常にいい仕事を見せてもらったと思っていますが、当時はまた予防歯科という意識が浸透していませんでしたので、そこは弱かったと思います。私は、まだ新人だった頃に補綴を教わった先生から「いくら良い義歯やブリッジを入れても、その後のメンテナンスまでちゃんと指導しないと長持ちしない」と言われたことから、予防歯科にも力を入れるようになりました。当院では十数年一緒に働いてくれている歯科衛生士がいて、精密な検査とメンテナンスを行ってくれています。例えば歯周ポケットの深さを測る検査だと、通常1本の歯につき4ヵ所なのですが、当院では6ヵ所を計測しています。それぐらい精密に検査をするので、患者さんにもご安心いただけると思います。衛生士さんに定期的にチェックをしてほしいと希望していただけるとうれしいですね。
密なコミュニケーションで健康な歯を守る
歯科医師を志した理由、クリニック継承の経緯を教えてください。

祖父も父も歯科医師ということで、周りから期待されてこの道に進んだという面はあります。大学は鶴見大学歯学部で、卒業後に東京医科歯科大学に入り、そのまま補綴科に残って7年半臨床と研究に従事しました。当院に入職した2001年当時は、まだ大学とかけ持ちで、あくまで実家の手伝いの範囲でしたが、父の体調不良で2013年に院長を引き継ぎました。急なタイミングで、いきなり経営者になってしまったため、慣れるのに時間がかかりましたね。院長の仕事は治療以外にもやらなければいけない業務が多く、経営のことを一切気にしないで働いていた時代が時々懐かしく感じます。
今後の展望をお聞かせください。
私が専門とする義歯などの補綴については、先代たちの仕事を見てきたこともあって、これまで行ってきた方法をさらに精度を上げ、長く使える物を作り続けることができればと考えています。今考えているのは矯正治療ですね。矯正については新人だった頃に学んでいるのですが、矯正の世界もまた、常に進化していますので、今の流れについていけるようステップアップしていかなければと考えています。
読者にメッセージをお願いします。

奥歯でちゃんと咀嚼ができるというのはすごく重要で、そのためには定期的な検診が欠かせません。それに年齢は関係ありませんし、義歯が入っていてもいなくても同様です。定期的な検診を受けることで若い人だと本来の歯を長く維持することにつながりますし、義歯がある方は長く使い続けることにもつながります。また検診以外では日々のブラッシングも大切です。人それぞれ歯並びや残っている歯の位置は異なりますので、ブラッシング方法も変わってきます。そういったことも検診でアドバイスできますので、ぜひ半年に1度、少なくとも1年に1度は検診に来ていただければと思います。自分の口の中は何があってもここに取りあえず行けば安心という歯科医院をめざしていきたいと思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とはマウスピース型装置を用いた矯正/88万円~
義歯治療(金属床)/50万円~
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。