岡野 欣之 院長の独自取材記事
岡野歯科医院
(文京区/茗荷谷駅)
最終更新日:2023/03/29

茗荷谷駅から徒歩3分、大塚一丁目交差点すぐそばで、1915年から診療を続ける「岡野歯科医院」。大学や教育機関の集まる文教地区で、長年地域住民の歯の健康を守り続けてきた。院長の岡野欣之(おかの・よしゆき)先生は、開業した祖父から数えて3代目。院内には祖父の代に作られた歯科技工室があり、現在も岡野院長自身が義歯やかぶせ物など、補綴物全般の製作を手がけている。義歯を愛用し長年通い続ける患者、親子3代で通う患者、クチコミで訪れる新規の患者に日々向き合う岡野院長に同院の歴史や、代々引き継がれてきた患者への思いについて語ってもらった。見落としそうに小さな看板、年季の入ったたたずまいの歯科医院が100年以上も人々に親しまれ愛されている理由が、しみじみと伝わるインタビューとなった。
(取材日2023年2月21日)
歯を残すために手を尽くし、歯を残すための義歯を作る
とてもきれいで落ち着ける院内ですね。

当院は1915年に祖父が開業し、この建物は1970年頃に建てたそうです。今の診療室は1990年頃にリノベーションしたもので、そのときに、前院長である父が高圧蒸気滅菌器やデジタルパノラマエックス線撮影装置などの機器についても早くに導入しました。この建物を建てた当時は、歯科技工も院内製作が当たり前という時代でしたので、歯科技工が得意だった父は、かなりのこだわりをもって補綴物全般を作っていました。私自身の専門も義歯を扱う補綴で、東京医科歯科大学に勤務して経験を積みました。歯科医師になって間もなく矯正歯科についても学んでおり、勤務医時代の経験を生かして、当院では一般歯科、小児歯科、歯科口腔外科、歯周病治療、義歯製作、マウスピース型装置を用いた矯正と幅広く行っています。
その中で、先生が特に得意としている治療は何ですか?
勤務医時代は、例えば口蓋裂の方の歯の補綴治療や、口腔がんで顎の骨を切除したときにどうやって義歯を入れるかなど、かなり特殊なケースの補綴治療に携わっていました。当院で診療を始めて、地域のかかりつけ医としてさまざまな義歯治療を手がけるようになりました。院長職を引き継いだのが2013年なので10年たちましたが、この数年は自分で技工して義歯製作をするのがますます面白くなってきたと感じています。世間では「義歯を使うようになると、残っている歯がもたなくなる」というイメージが広まっているようですが、そんなことはありません。義歯のせいで残っている歯がダメになるかどうかは、その義歯によりますし、患者さんのお手入れにもよります。精密に作られた義歯というのは、20年、30年と長持ちして使い続けることが望めるものなのです。父も同じ考えで、精密な義歯作りにこだわっていました。
義歯によって、耐久性も周りの歯への影響も変わってくるのですね。

逆に、痛みや腫れはないけれどグラグラしている歯がある場合、義歯をうまく作ることで、その歯の寿命を延ばす可能性さえ考えられます。義歯のために歯を残すだけでなく、歯を残すための義歯を作ることも望めるんです。保険でも自費でも、義歯製作にはそれなりに高い費用がかかりますから、残っている歯を傷めず、長く大切に使えるよう、考えながら設計しています。父は設計の段階で先を見越して義歯を製作していました。私自身は、最先端の医療情報にアンテナを張りつつも、すぐに飛びつくのではなく、今までやってきた仕事の再評価をした上で取り入れるのが大切だと思っています。
患者に喜ばれてこそ、感じるやりがい
義歯を作製する上で先生が大事にしていることは何ですか?

義歯は「作って終わり」ではありません。患者さんの口腔内は年を経て変化しますので、義歯も少しずつ足したり削ったり調整しながら、できるだけ長く使っていただきたいと思っています。祖父や父の代から通われている患者さんがいらっしゃったら、当時の最善の治療は何だったのか、現在の治療ならどうするのが良いのか、考える機会にもなりますね。
歯科医師を志した理由、クリニック継承の経緯を教えてください。
祖父も父も歯科医師ということで、周りから期待されてこの道に進んだという面はあります。大学は鶴見大学歯学部で、卒業後に東京医科歯科大学に入り、そのまま補綴科に残って7年半臨床と研究に従事しました。当院に入職した2001年当時は、まだ大学とかけもちで、あくまで実家の手伝いの範囲でしたが、父の体調不良で2013年に院長を引き継ぎました。急なタイミングだったので、いきなり経営者になってしまったため、慣れるのに時間がかかりましたね。院長の仕事は治療以外にもやらなければいけない業務が多く、経営のことを一切気にしないで働いていた時代が時々懐かしく感じます。
さまざまな治療を手がけていますが、今一番やりがいを感じるのはやはり義歯製作ですか?

そうですね。大学時代の友人からは「まだ自分で技工をやっているなんて」とあきれられてしまうんですけど。自ら技工製作した義歯や修復物を、患者さんに使ってもらって喜ばれてこそ、やりがいも感じられるのだと思います。この一連の流れがたまらなく楽しいんです。ここだけの話ですが、義歯製作は父も一番得意としていた分野だったので、私が副院長として当院に入職してからも、なかなか明け渡してくれなかったんです(笑)。義歯にはネガティブな印象をお持ちの方も多いようですが、今はさまざまな新しい治療法などもあり、精巧に作られた義歯であれば快適に長く使えることも期待できますから、日々の診療を通して義歯のネガティブなイメージを取り除いていきたいです。
義歯を必要としないよう、虫歯と歯周病の予防に注力
診療で心がけていることは?

患者さんの訴えのもう一つ深いところに何があるかを考え、患者さんの話をしっかり聞き取るようにしています。特に高齢の患者さんに対しては、動きをよく観察し、なるべくたくさん話をしてもらいます。というのも、話をする時の声の強さや息の強さ、発音は、義歯製作の参考になるからなんです。それに加えて、この患者さんにはどういう説明をすれば納得してくれるのかもわかりやすいですから、コミュニケーションは大切ですね。現役世代の患者さんはお忙しいので、急いでいそうなときは最初に「今日はお時間大丈夫ですか」と聞くようにしています。どの患者さんに対しても、「なんでも話してくださいね」というスタンスですが、私よりも歯科衛生士や受付スタッフのほうが話しやすいという方もいますから、院内での情報共有は大切にしています。話しやすい雰囲気をつくってくれる頼りがいのあるスタッフばかりで助かっています。
今後の展望をお聞かせください。
今から独自路線を歩むとか、最先端の治療を追求するというよりも、これまで当院が積み重ねてきた仕事を土台に、さらに質を高めていきたいです。同じ病名でも患者さんによって状態は千差万別で、典型症例は意外とないものだなと経験を重ねるほどに実感しています。昔なら当然のように抜いていた歯も、痛みも腫れもないから抜きたくないという患者さんには、「それならギリギリまで治療をしましょう、でもダメになりやすいところですから、治療後はしっかりケアしていきましょう」と、リスクも含めてご案内します。患者さんも医療者も精いっぱいの努力をしておけば、もう限界となったときに次のステップに進みやすいですしね。患者さん一人ひとりの要望をできるだけくみ取り、生涯おいしく食事ができるよう、歯科医療を通じて手助けしていきたいです。
読者にメッセージをお願いします。

どんなに精密に作られた補綴物でも天然歯に勝ることはありません。ですから、患者さんがそもそも歯を失わないように、当院では虫歯と歯周病の予防と治療に力を入れています。万が一義歯が必要となってしまった場合も、眼鏡やコンタクトレンズと同じで体の機能を補うものですから、皆さんにはできるだけ良いものを使っていただきたいです。義歯にはネガティブなイメージもありますが、患者さんのご希望を反映して柔軟に製作できますし、しっかり噛めるように口腔環境の変化に合わせて調整することができます。そのことをもっと多くの人に伝えていきたいですね。食べることは、人生の最後まで残る楽しみだといわれています。若い方には1本でも多くご自身の歯を残せるように、高齢の方は今使っている義歯をできるだけ長く使っていただけるように力を尽くしていきたいです。
自由診療費用の目安
自由診療とはマウスピース型装置を用いた矯正/88万円~
義歯治療(金属床)/50万円~
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供を行っております。
カスタムメイド矯正装置(マウスピース矯正)については、効果・効能に関して個人差があるため、 カスタムメイド矯正装置(マウスピース矯正)を用いた治療を行う場合は、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。