北村 陽光 院長の独自取材記事
陽光歯科クリニック
(品川区/大崎広小路駅)
最終更新日:2023/06/29
しっかり噛んでおいしく食べられるような口腔機能を守りつつ、全身の健康まで見据えた歯科診療に取り組む大崎広小路駅前の「陽光歯科クリニック」。院長の北村陽光(あきみつ)先生は1992年の開業以来、子どもから高齢者まで幅広い世代の診療を手がけ、地域のかかりつけ歯科としての役割を担い続けてきた。また入れ歯をはじめとする補綴治療を得意とし、常に患者の5年、10年先の口腔環境を想定したアドバイスで、患者自身の予防意識を高めることにも注力している。そんな北村先生に、開業以来30年の歩みの中で感じていることや、入れ歯治療で力を入れているポイント、歯周病と全身疾患の深い関わりなどについてじっくり話を聞いた。
(取材日2021年9月10日)
快適に噛むことをめざした入れ歯治療に注力
開業から30年がたつそうですね。
1992年に開業して、今年でちょうど30年。かかりつけ歯科としてお口の中のことを任せていただいたからには、患者さんの口腔環境について将来にわたって責任を果たしていきたいと考えて、診療してきました。年齢が若いうちはどうしても、歯を1本失ったとしてもあまり危機感を持てずにいる方が多いですが、1本なくしたことをきっかけに、噛み合わせが乱れて口の中全体のバランスが大きく崩れてしまいます。「将来噛めなくなって、ものを食べられなくなった自分を想像してみてください」とお伝えしながら、正常な噛み合わせを維持する大切さを訴え続けてきました。そうした地道な取り組みもあってか、ここ数年でだいぶ患者さんの予防や噛み合わせに対する意識が高まってきたと実感しています。
先生が歯科医師を志したきっかけは?
私は幼い頃から歯で苦労しました。小学4年から中学3年まで矯正治療を受け、長期の治療を終えた時の達成感、喜びは今でもよく覚えています。当時の経験がきっかけで、歯のことで困っている人の役に立ちたいと漠然と考えるようになりました。理想はどんな症状もオールマイティーに診られる歯科医師。歯学部に進学した当初から開業することが念頭にあったので、大学院に進んで専門分野を深めるとか、大学病院で勤務医をするという選択はせず、卒業後はいくつもの歯科医院の面接を受けました。その中で、治療方針や患者さんへの接し方に感銘を受けたクリニックとご縁があり、勤務医として働きながら、治療のノウハウをひたすら学ぶ日々を過ごしました。
入れ歯の治療を数多く手がけられていると伺いました。入れ歯のメリットを教えてください。
周囲の健康な歯を削る必要がなく、治療後のケアが比較的簡単な点です。入れ歯治療は虫歯や歯周病、外傷などが原因で歯を失ったときに検討しますが、歯を補う手段としては、ほかにインプラント治療やブリッジがあります。当院ではそれらの補綴治療も扱いますが、今残っている健康な歯を守りつつ、しっかり噛めるようにするため、特に入れ歯を精力的に手がけてきました。入れ歯治療と比較して、インプラント治療は外科手術を伴うため体にかかる負担が大きい上、土台となる歯槽骨に一定程度の厚みがあることが必須条件。また、術後はインプラント周囲炎の予防管理が大切になります。ブリッジには、失った歯の両側の歯を削らなくてはならないデメリットが。その点、体やほかの歯への影響が少ない入れ歯治療は、手術に不安のある方や、歯周病で歯を失って骨の吸収が進んでいる方、健康な歯を大切に維持したい方にお勧めです。
質の高い素材の入れ歯で使い心地や審美性を追求
こちらでは生体用シリコーンを用いた入れ歯も扱うそうですね。
ひと昔前は「隙間に食べ物が挟まる」「部分入れ歯を支えるクラスプの金属が目立つ」「ピンク色の部分が厚い、大きい、食い込んで痛い」など、入れ歯の快適さや審美性に悩む方が多くいらっしゃいました。しかし、近年では自費になりますが歯茎に接するピンクの内面に弾力性と吸着性に優れた生体用シリコーンを用いることでフィット感が高まり、しっかり噛めるようになることが期待できる上に食べ物が挟まりにくくなり、歯茎にかかる痛みの負担を軽減します。また、ピンク色の一部分にチタンやコバルトなどを併用することにより入れ歯の厚みを薄く・面積を小さくすることができるので嘔吐反射が和らぐだけでなく味覚の一部である食べ物の温度が感じられるメリットも。部分入れ歯ではクラスプ(入れ歯の固定具)に金属を使わない歯茎の色合いに似たアームを使うノンクラスプデンチャーなど入れ歯だと気づかれないものを選ぶことも可能です。
部分入れ歯の治療について教えてください。
部分入れ歯の治療では、まず金具のかかる「鉤歯(こうし)」と呼ばれる入れ歯の固定装置がかかる歯が、どのような状態かを確認します。鉤歯が銀歯である場合は、特に注意が必要。というのも、銀歯はイオンを帯びやすいため細菌が付着しやすい性質を持っていて、鉤歯にプラークができやすくなるからです。プラークとは細菌と代謝物がくっついてできる白いねばねばとした汚れで、放置しているとバイオフィルムを形成し、虫歯や口臭、歯周病のリスクが高まります。入れ歯は寝ている時以外ずっと使うものですから、鉤歯に汚れがたまった状態が続くと、歯槽膿漏に罹患するリスクも。これを防ぐため、当院では鉤歯となる歯が銀歯の場合はオールセラミックのかぶせ物をすることを推奨しています。そうすることで汚れが付着しにくくなることに加え、歯槽膿漏の予防にはもちろん、金属アレルギーの防止にもつながります。
入れ歯などで噛む機能を整えることは、高齢者にとって大切だそうですね。
上下の歯を使ってしっかり噛むことがもたらす効果は、食事面だけにとどまりません。入れ歯によって顎位を整えることで歩行機能の安定につながったり、しっかり噛むことが脳の血流を促し、認知症予防にもつながったりするとの研究報告もあります。また、高齢者に多い誤嚥性肺炎のリスクを下げるといったメリットもあります。介護にあたられているご家族の方にはぜひそうしたことを知っていただき、入れ歯を放置せずに、できるだけその方に合う入れ歯を作って、きちんと噛める状態を整えてあげていただきたいとお願いしています。人生100年時代といわれる今、入れ歯が健康寿命の延伸につながる重要なツールであることを、より多くの方に知っていただきたいですね。
リスクを回避するため定期受診の重要性も知ってほしい
先生は歯周病と糖尿病の関わりにも詳しいと聞きました。
そうですね。糖尿病の患者さんは歯周病になるリスクが高いといわれています。また、歯周病になると血糖コントロールが悪くなり、糖尿病を悪化させる要因にもなるともいわれており、両者の間には相関関係があるとされています。糖尿病の進行が著しい場合、血糖コントロールを落ち着かせないと、歯周病も改善されません。ですから当院では歯周病の症状がある方には必ず糖尿病の有無を確認します。そして、歯周病の影響は糖尿病に限ったものではありません。炎症して破損した血管から歯周病菌が入り込み全身をめぐると血管の内側に付着しプラークを形成します。こうして血管の狭窄が進んだ結果、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすこともあるのです。ですから歯茎の腫れや痛みなどを放置せず、日頃からのケアを徹底して予防に努めましょう。
歯の健康を守るために日々心がけると良いことは?
毎日のセルフケアは大切ですが、頑張って磨きすぎるあまりエナメル質が削れて知覚過敏を引き起こしている方や、適切なブラッシングを続けていてもブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり)が原因で骨の吸収が進んでいる方もいらっしゃいます。そうなるとやはりセルフケアとは別に、歯科医師のチェックを定期的に受けることが健康な歯を長持ちさせるための一番の近道。今どこも痛くないから、入れ歯やインプラントが問題なく使えているから大丈夫というのでなく、トラブルにつながる些細な兆候を見逃さないためにも定期的な受診を習慣づけていただきたいです。
読者にメッセージをお願いします。
治療を始める前に必ず口腔内の写真撮影を行うのも当院のこだわりの一つです。考え得る治療の選択肢はメリット、デメリットを含めてすべて患者さんに説明し、ご自身の状態を理解し納得した上で治療を受けていただきたいと考えています。「身内を診るつもりで丁寧な治療を行う」というのが私のモットー。5年先、10年先も食事をおいしく食べられる幸福な人生をより多くの方に送っていただけるよう、歯科医師の立場から力を尽くしますので、頼りにしていただけたらうれしいです。
自由診療費用の目安
自由診療とはノンクラスプデンチャー/16万5000円~
シリコーンを用いた入れ歯/45万円~
インプラント治療/33万円~
オールセラミックのかぶせ物治療/9万1300円~