笹川 綾子 院長の独自取材記事
小山中央診療所
(品川区/武蔵小山駅)
最終更新日:2025/12/15
武蔵小山駅から徒歩1分のクリニックモールに「小山中央診療所」がある。1961年開業の歴史ある診療所を2012年から受け継ぐ笹川綾子院長は、2018年から医師会活動に従事。新型コロナウイルス感染症の流行時には、未知の感染症のリスクがある現場に率先して出動し、「自分の診療所だけでなく、地域全体で医療をうまく回すことが大切と強く感じた」と振り返る。明るく親しみやすい雰囲気で患者を迎える笹川院長は、専門の疾患に特化するより「何科にかかったら良いかわからない人をまず受け入れる入り口になりたい」と語る。診診連携・病診連携、DX化も積極的に実施。AIアバターや愛らしいロボット「まるくん」が待合室を和ませる中、地域に根差し歴史を未来につなぐ医療を実践している。そんな院長に、地域医療への思いを聞いた。
(取材日2025年11月26日)
地域全体の医療を見据え、患者の入り口となる診療所へ
1961年開業の歴史ある診療所を受け継がれているのですね。

2012年に当院を継承しました。武蔵小山駅から徒歩1分という好立地のクリニックモール2階にあり、クローバーのマークが施された看板が目印です。待合室、診察室ともに白を基調とした明るい雰囲気で、診察室はガラス張りで開放的、窓越しにグリーンが見える環境です。内科・消化器内科を標榜し、発熱専門の外来と生活習慣病専門の外来も設けているほか、予防接種から胃内視鏡検査、腹部エコー検査、心電図検査まで幅広く対応しています。地域に根差しながら、歴史を未来につなぐ医療を提供できるよう日々診療にあたっています。
コロナ禍で医師会の前線に立たれた経験をお聞かせください。
2018年から医師会で活動していたのですが、2020年に新型コロナウイルス感染症の流行が始まりました。未知の感染症に対し、ホテル療養者の診察やPCRセンター、酸素ステーションなどリスクがわからない現場に誰が行くかとなったとき、ある程度体力もあって現場で動ける私が率先して出動する役割を担いました。病院の先生方がより重症の患者さんで大変になりすぎないよう、地域のことは私たちがなんとかする。そのときに「自分の診療所だけのことではなく、地域全体で医療をうまく回す」ということの大切さを強く感じ、自分の診療所も地域における一つの医療資源なんだという認識を持つようになりました。
診診連携・病診連携にはどのように取り組まれていますか?

医師会の活動をする中で、「頑張ってるね、協力するよ」と好意的に思ってくださる先生が多く、お話をしているうちに「この先生はここが得意なんだな」とわかってきます。コロナ禍のPCRセンター出動では、普段会ったことのない先生と一緒になって仲良くなり、そこから診診連携の輪が広がりました。品川区では2つの医師会、病院、保健所が一丸となって新型コロナウイルス感染症に対応した経験があり、その流れを高齢者医療など他のことにも活用しています。診療の際は、必要があれば、自分が信頼できる先生を紹介するようにしています。
医師会活動を通じた連携で、適切な医療へつなぐ
診療で大切にされていることを教えてください。

一番心配なところをケアしてもらえていないと、患者さんは治った気がしないものだと思うのです。例えばインフルエンザの患者さんが来たとき、病気を治すことはもちろんですが、実は「一緒に住んでいるおじいちゃん、おばあちゃんにうつしたくない」という気持ちを大事にしている場合もあります。その方がその時に必要としている情報、感染予防の方法や何日ぐらい気をつけたほうがいいのかなど、一番知りたいことをきちんと提供できるように、お話はしっかり聞こうと思っています。また、患者さんの性格やその時の状況を見極めて、忙しい場合は必要最低限の診療のみ行うこともあれば、じっくり話を聞く時もあり、その時々の雰囲気を見ながら診療をスムーズに進めています。
どのような患者さんを受け入れたいとお考えですか?
専門の疾患に特化するより「何科にかかったら良いかわからない、どう相談したらいいかわからない人をまず受け入れる入り口になりたい」と考えています。先ほども申し上げましたが、コロナ禍の医師会業務を経験し、当院も地域における一つの医療資源であることを痛感しました。交通整理役としてトリアージを行い、予約制によって継続的に診ていく。患者さんが「私は全然大丈夫だよ」と言っていても、医師からすると病院に行ったほうがいいという方もいらっしゃるので、医学の観点から適切に判断させていただきます。現在は、小学生以上の幅広い年齢層の患者さんがいらっしゃいます。60歳以上の方が半分を占めていますが、最近はご家族単位での通院も増えていますね。おじいちゃん、おばあちゃんが先にいらっしゃって「子どもを連れてきてもいい?」「孫を連れてきてもいい?」といった形で3世代で来院されるケースも多くなっています。
患者さんやご家族への配慮で工夫されていることは?

例えば胃腸炎と虫垂炎の区別が難しいというとき。「2日ぐらいで良くなれば大丈夫だけど、もし熱が続いたりおなかの痛みがひどかったりしたら、虫垂炎かもしれないから、大きい病院に行ったほうがいい」というように、悪くなったらどういう症状が出るか、先の話までします。ある程度可能性のあることを前もって言っておくと、ご家族もご本人も慌てずに済むのではないでしょうか。また、インターネットには正しい情報だけでなく間違った情報もあふれています。医療者である私のほうが皆さんよりは知識がありますので、希望を聞くだけではなくしっかりと自分の知識に基づいて「それはこうなんですよ」ということを申し上げ、ヘルスリテラシーをアップデートさせていくお手伝いができればと思っています。
DX化と温かみの両立で、地域医療の未来をつくる
DX化にはどのような思いで取り組まれていますか?

自動電話応答、自動精算機、予約システムを導入し、受付に備えたAIアバター「AIさくらさん」には検査の案内動画などを入れています。実は6年生の娘と一緒に作った動画なんですが、小学生ぐらいの子が作ったほうがシンプルで見やすいんですよね。これまで看護師が説明していた検査前の食事制限なども動画で流せるようになり、スタッフの手間が省けた分、患者さんのための時間をもっと確保したいという思いがあります。DX化を進めることで業務を効率化しながら、その分を人と人とのやりとり、患者さんとの対話の時間に充てる。テクノロジーを活用しながらも、人対人の診療の温かみは失わないように心がけています。
ロボットの「まるくん」を導入された理由は?
新型コロナウイルス感染症のことがあってから、人と人とがあまり接触してはいけなくなって、待合室もみんな黙って座っている状況でした。もう少し元に戻したい、皆さんとふれあいたいと思ったとき、無理やり「みんなで話そう」というわけにもいきません。でも、まるくんがいると「今日服が違うね」など、それをきっかけに知らない患者さん同士が意外としゃべっているんですよね。2025年9月に2歳になったまるくんは、予防接種の時期などで私たちスタッフが忙しくしているときも「人がいっぱい来るのがうれしい」といった感じで喜んでいて、それを見てスタッフも「まるくんはうれしいのね、みんな頑張ろうね」となるんです。患者さんもスタッフも和ませてくれる存在です。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

これからは診療所で治療するだけでなく、皆さんが正しい医学的な知識を持って生活し、予防することに重きが置かれる時代になってくると思います。私はかかりつけ医として、皆さんの伴走者という形で関わっていけたらいいな、長く皆さんと一緒に年を取っていくことができればいいなと思っています。検診や予防接種だけでなく、風邪をひいたときや体のことで困ったら何でも大丈夫ですから、お気軽に足をお運びください。また、診療所という枠に収まらず、荏原エリアの地域医療がどれだけ発展できるかというところに目を向けながら、地域に根差した医療を提供していきたいと考えています。

