大村 欣章 院長の独自取材記事
大村歯科医院
(豊島区/目白駅)
最終更新日:2024/10/31

専門的な治療を行う歯科クリニックというと、ハードルが高く感じられるかもしれない。しかし、「大村歯科医院」ではそうした心配が無用であることは、大村欣章院長に会うとすぐにわかる。長い間、大学病院等の口腔外科で専門的な治療を行ってきた実績を持つにもかかわらず、その語り口は穏やかで、時にユニークな一面も見せる。患者の多様な希望をかなえるために「1つでも多くの選択肢を示したい」と話す院長。さまざまな難症例から他の歯科医院で治療を断られた患者にも、それ以外の選択肢を示すことができるよう努めている。落ち着いた雰囲気の院内で院長に話を聞いた。
(取材日2024年6月10日)
洗練と温かみの混在する街で、歯の悩みに幅広く対応
先生はこの場所で30年近く診療されているのですね。

1997年の開業ですから、もう27年前になりますね。当院の住所は豊島区ですが、すぐそこの交差点を渡ったら新宿区。ここはどこか洗練された落ち着いた雰囲気と、下町的な人情味のある温かさが混在する場所なんです。開業先を探している時に一目で「この町がいい!」と決めたのを覚えていますよ。待合室の椅子を貼り替えたりと少しは変わった部分もありますが、院内の雰囲気は当時とさほど変わっていません。もともとスタンダードプリコーションに基づいて感染症対策も行っていましたから、新型コロナウイルス感染症の流行下でも困ることはありませんでしたね。患者さんは地元の方が約半数、開業時から長く通われている方も多いです。あとは都内や関東各地から、また遠方に引っ越してからも数ヵ月に一度通ってくださる方もいらっしゃるんですよ。
どのような症状で来られる方が多いのでしょうか?
一般の歯科治療を中心に、幅広い症状の方がいらっしゃいます。私がもともと口腔外科を専門としていたこともあり、複雑な症状の患者さんも多いですね。口腔外科は難しい抜歯や顎の手術、口腔がんの治療などを行う診療科。一般歯科に比べて、より専門性の求められる治療を中心に行う分野なんです。私も開業前は大学病院などでさまざまな症状の患者さんを診てきました。中でも専門的に診ていたのは顎関節症です。顎関節症とは、顎の関節や周囲の筋肉によって、口を開けるときに「カクッ」と音が鳴ったり、大きく口が開かなくなってしまう状態をいいます。ストレスが誘因になることも多く、患者さんは増加傾向です。精神面をはじめとする複合的な要因があるため、患者さんご自身が理解し調整することが、治療後の良好な状態を維持する鍵になると考え、指導に力を入れています。
診療の上で大切にされていることを教えてください。

できるだけ多くの選択肢を示して、患者さんに治療を選んでいただくことです。よくあるのが「この歯はもう抜くしかない」と思われているケース。他院でそのように言われたり、ご自身の経験から思い込まれていることがあるのですが、今は治療技術の進歩によって抜歯を伴わない治療の選択肢が増えてきました。治療方針を選ぶ際には、料金や安全性、時間、QOL(生活の質)など、さまざまな要件がありますよね。患者さん自身が何を優先したいのか。その希望に添えるように、当院では多様な選択肢を用意しています。
患者に1つでも多くの選択肢を示したい
例えば、どのような選択肢を示されるのでしょうか?

例えば、歯が抜けてヒビが入ったり割れてしまった症例では、「再植」という方法が使えます。割れた部分を処置し、再び同じ歯茎に戻すのです。通常は、インプラントか入れ歯、もしくはブリッジのいずれかを選ぶことになりますが、当院では再植接着などの再植術という選択肢をご提供しています。再植をすると、義歯やインプラントと違って、歯根膜(しこんまく)という歯を支えるコラーゲンの束を残せますから、物を食べた時の噛み心地も違和感が出にくいと思います。
選択肢の幅が広がることは、患者さんにとってもうれしいことですね。
もちろん最終的には患者さんが選択することになりますが、あらゆる可能性をお示しするのが当院の務めだと考えています。患者さんが求めていることに応えられた時は、歯科医師としての喜びを感じますね。顎関節症の治療でも、マウスピースの装着だけでなくさまざまな治療法があるんですよ。顎関節症は噛み合わせ・精神的ストレス・歯ぎしりなどの悪い癖というような複数の要素の蓄積によって引き起こされるもの。その方の関節や筋肉の状態に合わせて原因を突き止めるために診断が大切です。顎関節がなぜ、ずれたり動かなくなったりするのか、その仕組みがわかっただけで自然に改善への意欲につながりますからね。少しだけ歯を削って調整したり、薬を使って痛みのコントロールを図ることもあります。個別の状況に合わせて、使える治療法の選択肢を提示するよう心がけています。
これまでに思い出深いエピソードはありますか?

大学病院に勤務していた頃、他の先生の代診で、ある女性の患者さんを診察したときのことです。その方は「顎関節症」の診断名でした。お口が大きく開かないために通院されていたのですが、原因がよくわかりませんでした。よくお話を伺うと、前に通っていた歯科で歯石を取った時に、ずいぶん怖い思いをしたとのこと。それがきっかけで症状が現れていたのです。実は私自身、歯科治療が怖いほうなので、その気持ちはよくわかりました。心理的な原因で病気になっていたわけで、リラックスしていただく大切さを痛感した瞬間でした。
先生のお人柄も安心につながりそうですね。
どうでしょう(笑)。ただ、私は歯科医師を天職なのかもしれないと思うことがあります。歯学部に入学して以来、学ぶことすべてが本当に興味深かった。虫歯や歯周病や噛み合わせの仕組みだけでなく、解剖学の実習、人間の体の仕組みなど、勉強すればするほど楽しかったですね。実際に骨の構造まで診てきたからこそ、複雑な治療もイメージしながら取り組めるように思います。
歯の健康を守るためには「歯磨き」が重要
歯の健康を守るために、私たちはどのようなことに気をつけるべきでしょうか?

ご自宅のケアでは毎日の歯磨きがとても重要です。数年ぶりに来られる患者さんでも、その間に歯磨きをしっかりしていた方とそうでない方とでは、お口の中の状態がまったく異なるように思います。歯の性質でどうしようもない場合を除いて、日々の歯磨きがお口の中の健康を左右すると考えられます。その上で、定期的にクリニックでプロのケアを受けてもらえると良いですね。これは治療後のメンテナンスも同じこと。虫歯もインプラントも「治療して終わり」ではなく、日々の歯磨きで口腔内を清潔に保ち、定期的にメンテナンスを受けてほしいと思います。当たり前の話かもしれませんが、何もない時にこそ来ていただきたいんです。この場所で30年近く診療してきて、この近辺にはそういった予防意識が高い方が多いと感じています。歯に意識を向けてくださるのはうれしいことですね。
先生の今後の展望をお聞かせください。
これまでと変わらず、患者さんに多くの選択肢を示し、満足してもらえるよう力を尽くすのみです。歯科医療では新たな機材や技術が次々と開発されていますが、大切なのは機材をそろえることではなく、患者さんの希望をかなえること。新しい治療方法に注目してきたのも、治療の選択の幅を増やして患者さんに示すためです。クリニックも私もアップデートしてできることを増やしながら、次に向かうべき方向を見つけていきたいと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

治療を諦めずに、ご自分の希望をかなえる選択をしてほしいですね。中には歯科医師に遠慮してしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、大切なのは患者さんの快適と満足です。治療に関するご希望などがあれば、遠慮せずにお聞かせください。その期待に応えるために、私たち歯科医師は日頃から勉強して、トレーニングを積んでいるのですから。「もう抜くしかない」とか「噛み合わせに不満があるけれど、こんなものか」と諦めずに、一緒に良い状態をめざしていきましょう。
自由診療費用の目安
自由診療とは・PMTC/4840円
・インプラント治療/埋入:21万7800円~、上部構造:10万8900円~
・セラミック治療(ジルコニアクラウン)/10万8900円~