服部 一希 院長の独自取材記事
あぐい服部整形外科いたみのクリニック
(知多郡阿久比町/坂部駅)
最終更新日:2026/09/03
田畑に囲まれたのどかな住宅地に、2026年6月「あぐい服部整形外科いたみのクリニック」が開院した。院長の服部一希先生は東海市に生まれ知多市で育ち、勤務医時代にも縁のあったこの地での開業を決めた。建築家と何度も対話を重ね、街並みとの調和まで考慮して設計された院内は、自然光が降り注ぎ、木のぬくもりが感じられる開放的な空間だ。広いリハビリテーション室の壁面にはイラストレーターが直接描いた大きな絵が広がる。コンセプトは地域の「よろず屋」。何でも気軽に相談できる存在が目標だという。「恩師や同級生など多くの仲間に支えられた開業でした」と語る服部先生に、患者の声に耳を傾ける「患者主導型」の診療や、痛みへの多角的なアプローチについて話を聞いた。
(取材日2026年8月5日)
人との縁から生まれた、街に溶け込むクリニック
まずは、こちらの地域で開業された経緯をお聞かせください。

私自身、東海市で生まれ知多市で育ちましたので、この辺りには昔から土地勘があります。大学に所属していた頃には知多半島の病院に赴任しておりましたし、大学院時代にもこの近くの開業医の先生方のもとでお手伝いや手術をさせていただく機会がありました。勤務医として市中病院で多くの患者さんを診ていく中で、手術だけではなくもっと身近なところで助けを求めている方々の力になれるのではないかと考えるようになったことが、開業を意識したきっかけです。この地域の患者さんの温かさや人懐っこさにも以前から惹かれていましたし、高齢の方から若いご家族まで幅広い世代がお住まいの土地ですので、さまざまな方のお役に立てるのではないかと思い、こちらでの開業を決めました。
クリニックの建物には、どのようなこだわりがありますか。
もともと機械やデザインに興味がありましたので、自分の目で見て惹かれた建築を手がけた建築士さんを探し、直接お声がけするところから始めました。この敷地には以前、半世紀近く園芸屋さんがあり、その建物も含めた風景が街の一部だったんですね。それがなくなることで周囲の田んぼや自然、お住まいの方々の暮らしに違和感を与えてはいけないと思い、光の入り方や風の抜け感まで考慮しながら設計を進めました。建築士さんとは何度も話し合いを重ね、食事をともにしながら意見を交わすこともありましたね。人に寄り添えることが建物から始まるのかなという思いがありましたので、バリアフリーや広い駐車場といった機能面にも配慮しつつ、街並みに自然と溶け込む建物をめざしました。
リハビリ室にもこだわりが詰まっているように感じます。

リハビリ室の壁面にはイラストレーターの方が油性ペンで直接描いてくださった大きな絵があります。動物や人の動きなどが生き生きと描かれていて、下描きなしの一発勝負で仕上げた世界に一つだけの作品です。この企画が実現したのは、中学・高校時代の同級生たちが力を貸してくれたおかげでした。デザインに携わる同級生の人脈からイラストレーターの方につながり、建築士さんも交えてみんなでイメージを高め合いながら進めていったんです。医学部の恩師が開業を気にかけて電話をくれたり、四半世紀ぶりに再会した仲間と一緒にものづくりができたり、本当に多くの方に支えられたプロジェクトでした。人と人のつながりのありがたさを改めて感じましたし、その思いが詰まった空間で日々診療できることをうれしく思っています。
「よろず屋」として、一人ひとりの声に耳を傾ける
こちらには、どのような患者さんが来院されていますか。

高齢の方はもちろん、近くに小学校があることもあってお子さんの来院がとても多いんです。午前中は高齢の方が中心で、午後になるとケガをしたお子さんたちが次々にいらっしゃいます。最初は深刻な表情の子も通院するうちに打ち解けて、来て話すのが楽しいねという雰囲気になっていきますね。当院のコンセプトは地域の「よろず屋」です。一人暮らしのお年寄りや高齢のご夫婦の中には、どこに相談したらいいかわからないまま過ごしている方も少なくありません。どこに行こうか悩む前に、まずは気軽にかかっていただきたい。私たちにできることはしっかり対応しますし、必要に応じて近隣の先生方におつなぎもしますので、相談の入り口として使っていただけたらと思っています。
患者さんと接する上で、大切にしていることを教えてください。
私が心がけているのは「患者主導型」の診療です。例えば画像の上では状態が悪くても、手術を望まない方もいらっしゃいますし、さまざまなご事情で手術ができない方もいらっしゃいます。まずその方がどうしたいのか、どう考えているのかに耳を傾けること。その上でエビデンスや私の経験に基づいたご提案をし、最終的には患者さんご自身に選んでいただく姿勢を大切にしています。体というのは肉体的な機能だけを切り分けて改善するのが実はとても難しくて、気持ちの面も含めていろいろなものが整ってはじめて結果が出てくると考えています。だからこそ一人の人間としてトータルで向き合うことを意識しているんです。「話を聞いてくれてありがとう」と言ってくださる患者さんもいて、その言葉が日々の励みになっています。
痛みに悩む方へのリハビリ体制について教えてください。

クリニック名に「いたみの」と掲げているとおり、痛みに対するアプローチの選択肢を幅広くそろえています。マッサージに用いるのは、拡散型衝撃波装置という体の外から衝撃波を当てる機器です。ほかにも短時間で効率良く筋肉を使える機器や基礎的な筋力づくりから強度の高いトレーニングまで対応できる壁づけの機器など、さまざまな設備を用意しました。ウォーターベッドや電気治療器もエビデンスに基づいた効果が期待できるものを導入しています。スタッフには理学療法士のほか、柔道整復師とはり師、きゅう師の資格を併せ持つ者も在籍しており、新しい知見を積極的に取り入れるよう促しています。理論を大切にしつつ患者さん一人ひとりに合った実践的な対応を日々模索しているところです。
恩師に導かれた整形外科の道、痛みへの探求は続く
先生が整形外科の道に進まれたきっかけを教えてください。

祖父が歯科医師でいとこの多くも医師になった環境で育ちましたが、私自身はパイロットや車の設計にも興味があり、医学部に進むまでにはさまざまな葛藤がありました。大学時代を過ごした金沢では地元の方々との交流を通じて視野が大きく広がり、今でもお付き合いが続いている方がたくさんいます。整形外科を選んだきっかけは、恩師である和田郁雄教授との出会いです。6年生の夏にお声がけいただき、見学を経て名古屋市立大学整形外科への入局を決めました。そこでは大塚隆信教授をはじめ、多くの先生方に一から育てていただきました。大学院では恩師のもとで足の解剖や計測の研究に取り組み、足の治療が専門になっていきました。今は足に加え、エコーを活用した痛みへのアプローチにも関心を広げています。振り返るとその時々の出会いに導かれて歩んできた道のりだったなと感じますね。
リハビリ以外にも、力を入れて取り組まれていることはありますか。
骨粗しょう症の予防にも力を入れています。開業してみて実感したのは、検査を受けたことがない方や途中で治療をやめてしまった方が想像以上に多いことでした。エックス線で骨のもろさが読み取れた場合にはお声がけし、DXA(デキサ)という腰椎と大腿骨で測定する検査や採血で精密な診断を行うようにしています。全身の状態も加味しながら、予防的な生活指導や薬の選択についても患者さんとご相談の上で一緒に決めていくことを大切にしています。また当院では漢方の処方も行っております。医療としての安全性に十分配慮した上で、痛みに対する選択肢をさらに広げていきたいと考えています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

とにかくオープンなクリニックでありたいと思っています。患者さんご本人だけでなく、ご家族の方もいろいろと不安を抱えていらっしゃることが多いものですから、そうした方々にも気軽にご相談いただける雰囲気と環境をしっかり作っていきたいですね。リハビリの体制についても、スタッフの充実を図りながら、痛みや機能面のお悩みに少しでも早くお応えできるよう日々努力を重ねてまいります。整形外科の枠にとらわれず、困った時に「まずはあそこに相談してみよう」と思い浮かべていただけるような、地域に開かれた存在でありたい。何でも構いませんので、お体のことで気になることがあれば遠慮なく聞いていただけたらありがたいです。

