橋元 孝太郎 院長の独自取材記事
さくら在宅クリニック
(相模原市南区/小田急相模原駅)
最終更新日:2026/10/30
小田急相模原駅から徒歩12分の住宅街に、2026年8月に開設し、同年10月1日に診療を開始した「さくら在宅クリニック」。院長を務める橋元孝太郎先生は、島根大学卒業後、放射線を専門に脳腫瘍や肺がん、乳がんなど臓器を問わず幅広いがん診療に携わった経験を持つ。その後、生活に寄り添った総合的な医療をめざして在宅医療の道へ進み、内科・緩和ケア内科・精神科を軸にした訪問診療クリニックを開院した。体の不調だけでなく、認知症やうつなど心の問題にも1つの窓口で対応できるようにしていくという。「患者さんと医師は対等な立場。一方的に方針を押しつけるのではなく、話し合いながら進めていきます」と穏やかな口調で語る橋元院長に、対話を重視した診療への思いや地域に根差す在宅医療について聞いた。
(取材日2026年9月10日/情報更新日2026年10月1日)
祖母との日々を原点に、暮らしに寄り添う在宅医療へ
先生が医師をめざされたきっかけを教えてください。

幼い頃は両親が共働きだったこともあり、祖母と過ごす時間がとても長かったんです。祖母が病院に行くときはいつも一緒について行っていて、さまざまな医療機関を回っていました。そうした日々の中で、医師という職業がごく身近な存在になっていたんですね。劇的なエピソードがあったわけではなく、気づけば自然と「自分も医師になりたい」と思うようになっていました。島根大学を卒業してからは放射線治療の道に進み、脳腫瘍や肺がん、食道がん、乳がん、子宮頸がんなど、臓器を限定せず幅広いがんの診療に携わりました。1つの臓器にとどまらず全身を診る経験を重ねたことが、その後の総合的な医療への関心につながっていったのだと思います。
在宅医療に進まれた経緯をお聞かせください。
放射線を専門に臓器を問わずさまざまながんを診る中で、もっと総合的に患者さんと向き合いたいと思うようになり、在宅医療の道へ進みました。実際に始めてみると、大きな病院では難しかった「生活に寄り添う診療」ができることに魅力を感じたんです。お薬を自分で管理するのが難しい方や、1日1回しか服用できない方もいらっしゃいます。ご自宅に伺うからこそ、そうした暮らしの実情を踏まえて一緒に方法を考えられる。一方的に方針を押しつけるのではなく、話し合いながら進められるところに大きなやりがいを感じています。当院の開院はいろんなご縁や周囲の後押しもあり、自然と決まりました。クリニック名の「さくら」は、娘の名前に桜の字が入っていることに由来しています。温かみのある名前になっていればうれしいですね。
さくら在宅クリニックについてご紹介いただけますか。

当院は内科・緩和ケア内科・精神科の3つの専門領域を掲げる訪問診療クリニックです。体の不調だけでなく、不安やうつ、認知症といった心の問題にも対応し、体と心の両面からケアを行いたいと考えています。1つのクリニックで複数のお悩みをまとめてご相談いただけることが大きな特徴です。当院の訪問診療をご利用の患者さんには、24時間365日対応しますので、夜間や休日に急な体調の変化があった際もご安心いただけると思います。訪問エリアはクリニックから道のり7km以内を目安にしており、地域に密着したきめ細かな医療を届けています。住み慣れたご自宅で安心して暮らし続けていただけるよう、患者さんの生活に寄り添ったケアを大切にしていきます。
体も心もまず診る、対話を重ねる訪問診療を
訪問診療で心のケアが求められるのは、どのような場面ですか。

在宅医療の現場では、心のケアが必要な場面が想像以上に多いんです。特にご相談が多いのは、認知症が進んでご家族とうまくコミュニケーションが取れなくなったり、つい強い言葉が出てしまうといったケースですね。もちろん、うつ病や統合失調症のある方もいらっしゃいます。こうした方に対して「精神科はうちでは診られないので別のところへ」と言ってしまうと、在宅医療を入れている意味がなくなってしまいます。内科も心のケアも1つのクリニックでまとめて対応できることが大切だと考えております。皮膚の症状なども含め、まずはしっかり拝見した上で、ご自宅でできることはできる限りやらせていただきます。「対応できません」と最初からお断りするようなことは、なるべくしないのが私のモットーです。
患者さんやご家族と接する上で、大切にされてきたことはありますか。
私が大切にしてきたのは、患者さんと対等な立場で話し合いながら診療を進めていくことです。ご自宅に伺うからこそ、病院よりも自然にお話ができますし、患者さんが本当に何を大事にしているのかが見えてきます。ご本人の希望とご家族の思いが食い違うことも少なくありません。そうしたときには橋渡し役として、「ご本人はこれを大切にしているようですので、見守ってあげてもいいのではないですか」とお伝えするようにしています。また、生活習慣についてもいきなり「あれも駄目、これも駄目」と言うのではなく、長い目で徐々に一緒に取り組んでいく姿勢を大切にしています。お薬の管理が難しい方には生活のリズムに合わせた処方を考えるなど、その方の暮らしに合った診療を心がけています。
訪問診療ではどのような検査や治療が受けられるのでしょうか。

ご自宅ではさまざまな検査や治療をお受けいただけます。当院では、血液検査や尿検査、超音波検査、心電図検査のほか、認知機能検査やアレルギー検査、インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の抗原検査なども行います。治療面では、点滴や注射、縫合、褥瘡(床ずれ)の処置から、インスリンの自己注射管理、尿道カテーテルや胃瘻の管理、在宅酸素療法、予防接種まで幅広く対応します。医療用麻薬による緩和ケアや看取りもお引き受けしますし、精神科領域ではお薬の内服が難しい方への効果の持続性が見込める注射剤にも対応しています。
気軽に相談できる、地域に根差すクリニックへ
在宅医療を検討し始めた方は、まずどうすれば良いですか。

当院では紹介状がなくてもご相談いただけます。通院が難しくなってきたけれど、紹介状を取りに行くこと自体が大変な方は少なくありません。「紹介状がないと受けられません」と言ってしまうと、何も進まなくなってしまう。ですから当院では、紹介状がない場合でもまずご連絡いただければ、1度ご自宅に伺うところから始められるようにしています。訪問診療を検討し始めた段階でもかまいません。必要に応じて主治医意見書を作成し、介護サービスの導入につなげることも可能です。ご家族はもちろん、ケアマネジャーさんや訪問看護師さんからのお問い合わせにも対応しています。お電話でもウェブでもお受けしますので、気になった段階でお気軽にご連絡ください。
地域の中で、どのようなクリニックをめざしていますか。
当院では医療介護従事者専用の情報共有ツールを導入し、患者さんごとにケアマネジャーさんや訪問看護師さん、薬局さんなどとグループチャットで連携します。「今日はこういう様子でした」といった報告や相談をリアルタイムで共有できれば、患者さんに関わる全員が同じ情報でケアを進められます。訪問エリアをあえて狭めに設定したのも、既に診ている患者さんへの対応の質を落とさないためです。エリアを広げすぎると、急な往診の依頼にすぐ駆けつけられないこともあります。規模を大きくするよりも、お一人お一人との対話の時間をしっかり確保したい。それが地域に根差した医療につながると考えていますので、患者さんとじっくり向き合えるクリニックをめざしたいと思っています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

訪問診療がどんなものなのか、まだよくわからない段階であっても、まずは気軽にご相談いただいて構いません。「こんなことを聞いてもいいのかな」と迷われる方もいらっしゃるかもしれませんが、その一歩が状況を変えるきっかけになることもあります。私がめざしているのは、何でも話しやすく、相談しやすい医師でいることです。患者さんやご家族としっかり向き合いながら、その方にとって何が一番大切なのかを一緒に考えていきたいと思っています。体のことも心のことも含め、ご自宅での穏やかな暮らしを支えていけたらうれしいです。さくら在宅クリニックをそんな温かい場所に育てていきたいと考えています。

