尾形 愛 院長の独自取材記事
SEED DENTAL CLINIC
(大阪市住吉区/長居駅)
最終更新日:2026/10/15
大阪メトロ御堂筋線の長居駅から徒歩5分。長居公園南側の住宅地に「SEED DENTAL CLINIC」はある。1952年の開業以来、3代にわたり歯科医療が受け継がれてきた。院長の尾形愛先生は、先代・先々代とは異なる医療を実現するため廃業・新規開業の道を選んだ。約30年のキャリアで小児歯科と訪問診療に携わり、口腔機能の重要性を感じる先生が掲げるのは、子どもの口の成長と睡眠の改善、大人にも睡眠を含めた長期視点のケアを届けること。木目とホワイトを基調にアロマが香る院内は、歯科医院であることを忘れるほど心地良い。「食べる、話す、呼吸するという口腔機能は日常生活そのもの」とやわらかな笑顔で語る尾形院長に、診療への思いを聞いた。
(取材日2026年9月9日)
祖母から3代。口腔機能を軸に踏み出した新たな一歩
まずはこちらのクリニックを開業された経緯をお聞かせください。

この土地に祖母が歯科医院を開業したのが1952年のことです。その後、大学を退官した父が引き継ぎ、2025年3月まで診療を続けていました。ただ、先代・先々代の医療と私のやりたい医療は異なります。名前をそのまま引き継いでしまうと昔からの患者さんが以前と同じ診療を求めて来られると思ったので、クリニック名も変え、一度閉じた上で新規として2026年2月に開業しました。当院では口腔機能の重要性に着目し、予防とメンテナンスを中心に据えています。子どもの口の成長と睡眠の改善、そして大人の方にも睡眠を含めた長期視点のケアを届けたいという思いで、新たな一歩を踏み出しました。
口腔機能に着目されたのには、どのようなきっかけがあったのですか。
30年前は子どもの虫歯が本当に多い時代で、毎日のように抜髄していました。それが小児歯科だと思っていましたが、20年ほどたつうちに虫歯は減ってきたのに歯並びの悪い子が目立つようになったんです。なぜだろうと考えるうち、口腔機能がうまく発達していないことが原因ではないかと思い至り、勉強を始めました。一方、2001年から携わっていた訪問診療の現場では、入れ歯を作ってもお口の機能がうまく働いていない方は使いこなせないという現実を何度も目にしてきました。小児の口腔機能を学ぶ中で、高齢者も根本は同じだと気づいた瞬間、すべてが1本の線でつながったんです。その時の気づきが今の診療の原点になっています。
口腔機能とはどういうものなのでしょうか。

口腔機能とは、食べる・話す・呼吸するという3つの働きで、一つ一つがバラバラではなくすべてつながっています。お母さんたちは「うまく飲み込めない」「発音が気になる」と別々に悩んでいらっしゃいますが、元をたどると原因は1つということも少なくありません。発達は実はおなかの中にいる時から始まっていて、五感や体のバランス感覚が育っていきます。お母さんの食事や姿勢・お口の状態も赤ちゃんに影響しますので、妊娠中からの意識が大切です。私がお伝えしているのは、普段の暮らしの中でちょっと気をつけてもらうこと。口腔機能は特別なものではなく、日常生活に密着しています。矯正ありきではなく、しっかり育てられれば歯もそれなりに並んでくれますから、子ども自身の力で成長できるのが理想ですね。
「食べる・話す・呼吸する」。すべてはつながっている
口腔機能のうち「食べる」については、どのような点に着目されていますか。

きちんと噛めず丸のみしているお子さまは少なくありません。奥歯に食べ物を入れてそのままごっくん、という状態でも外から見ると正しく食べているように見えるので、お母さんが気づきにくいんですね。大切なのは食べる時の姿勢と環境です。椅子に座って足が床につくとおなかに力が入り、姿勢をまっすぐに保てます。体がまっすぐでないと食べ物がうまく嚥下できず、左右バランス良く噛めません。足が届かなければ段ボールでもいいので足置きを作って、膝と腰が90度になるようにしてあげてください。テレビの位置やお母さんとの座る位置関係も影響します。当院では管理栄養士が食事の内容や生活リズムまで伺い、その子の歯の数や発達段階に合わせた食べ方を一緒に考えています。お子さまの食事の中で違和感があればぜひ一度ご相談にお越しください。
「話す」や「呼吸する」の面では、どのようなことを注視されていますか。
「話す」の面では発音を確認します。例えば「き」や「す」の音だけうまく出せないお子さんは意外と多いんです。ただ年齢によりタイミングがあり、3歳ならいったん様子を見て、4歳を過ぎても特定の音が出なければ指導を始めます。舌のトレーニングで改善が見込める場合は院内で対応し、専門的な力が必要なら連携している言語聴覚士を紹介します。「呼吸する」については鼻呼吸がとても重要です。鼻呼吸で脳の発達が促されるのですが、口呼吸になるとその働きが発揮されず、いびきや睡眠中の無呼吸にもつながることがあります。お子さんでもいびきが増えていますし、大人の方もお口の状態からいびきの可能性が見えることがあります。歯だけでなく体全体の健康を守るために、睡眠と呼吸は大切なキーワードです。
診療の際に大切にされていることはありますか。

大切にしているのは、押しつけではなく寄り添うことです。ご家庭ごとに事情は異なりますから、個々の背景を考慮しながらお話ししています。子どもは育つ力を持って生まれてきているので、その能力を伸ばすサポートをする、ただそれだけなんです。その子に合わせて少し上を行く目標をつくり、できた時の喜びが自信につながるよう工夫しています。お母さんには「難しいことは任せてくれたらいいよ」とよく声をかけます。歯が生えていなくてもできることはたくさんあります。お子さまには外出できるようになった頃から定期的に関われるといいですね。早い段階から見守ることでスムーズな発達につながりますし、口腔機能を小さいうちから育てることは、お母さんが子どもにしてあげられる大きな贈り物です。
身構えず相談できる、ぬくもりの場所をめざして
クリニックの雰囲気づくりや設備面でこだわった点を教えてください。

予防とメンテナンスが中心のクリニックですので、歯科医院っぽい雰囲気は出したくありませんでした。かといって小児歯科に寄った内装だと大人の方が来にくくなるので、木目とホワイトを基調にナチュラルな空間にしています。待合室と診察室でオリジナルブレンドのアロマを使い分けていて、待合室は柑橘系でワクワク感を、診察室はティーツリーなどで睡眠をイメージしています。チェアはあえて1台にして、落ち着いて過ごせるようにしました。カウンセリングスペースも設け、ヒアリングや指導に活用しています。設備面では、気道を確認するためにCTを導入しました。滅菌にもこだわっていて、自分の口に入れたくないものは患者さんにも使わないという方針をスタッフ全員で徹底しています。
診療を支えるスタッフの方々についてお聞かせください。
当院には保育士、歯科衛生士、管理栄養士が在籍しており、いずれもベテランのプロフェッショナルです。ありがたいことに、紹介や志願で集まってくれました。曜日ごとに専門の異なるスタッフが入る体制をとっていて、保育士の日は体のサポートが必要なお子さんに来てもらい、睡眠に詳しい歯科衛生士の日は睡眠の相談を集めるなど柔軟に対応しています。外部との連携も大切にしていて、長年のお付き合いがある小児科の先生や助産師、言語聴覚士の方々も心強い存在です。近くの大阪急性期・総合医療センターとも地域連携を取っており、対応が難しい場合はすぐに紹介できる体制です。専門家同士がつながることで安心していただける仕組みをつくっています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

私の理念は、未来の子どもたちの笑顔に貢献することです。今の子どもたちをしっかり育てれば次の世代はもっと良くなる、それを信じて日々取り組んでいます。私一人の力には限りがありますから、思いを引き継ぐ後進の育成にも力を入れたいですね。将来的にはスタッフ全員女性という環境を生かし、女性のいびきのための外来も月に1回ほど設けたいと考えています。皆さんにお伝えしたいのは、身構えず何でも相談してほしいということです。専門職のスタッフも連携先もそろっていますから、一人で悩まず気軽に声をかけてください。食べる、話す、呼吸するという口腔機能は特別なものではなく、日常生活に密着していて全身の健康と深く関わっています。そのことを大人も子どもも知っていただけたらと思います。
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。

