河添 剛史 院長の独自取材記事
まもるデンタルクリニック
(箕面市/箕面船場阪大前駅)
最終更新日:2026/07/15
箕面市の緑豊かな住宅街に、2026年6月「まもるデンタルクリニック」が開院した。「歯を守り、患者の全身の健康と尊厳ある生活を守る」という揺るぎない理念を掲げた院名は、院長の河添剛史先生の愛犬の名前にもちなんで名づけられた。河添院長は工学部から歯科大学へ再進学した経歴の持ち主。学生時代の訪問診療実習で通院を諦めている高齢者の姿を目の当たりにしたことが、訪問歯科にかける志の原点になった。当院の訪問歯科ではポータブルの切削器具やバキュームを備え院内と遜色のない診療体制を整え、外来でも口腔内カメラや画像共有アプリによる見える化を徹底する。白と木目基調の明るい院内はバリアフリー設計で幅広い世代が通いやすい。「患者さんに気兼ねなく話してもらえる先生」でありたいと穏やかに語る河添院長に、その思いを聞いた。
(取材日2026年6月19日)
「人を助けたい」と、工学部から歯科医師の道へ
まずは先生が歯科医師になられた経緯をお聞かせください。

子どもの頃から漠然と医師になりたいという夢がありました。ただ高校で進路を考えた際に、工学部出身だった父の恩師が所属する研究室に興味を持ち、まずは工学の道へ進んだんです。私立大学に入学し、さらに別の大学にも入り直してみたのですが、勉強を重ねるほどに「計算や機械ではなく、やっぱり人を相手にしたい」という思いが強くなっていきました。痛みを抱えて困っている方に対して、自分の手で何かしてあげたい。その原点の気持ちに正直に向き合った結果、歯学部へ転向する決断をしました。大学を2つ経ての遠回りではありましたが、あの時間があったからこそ「困っている人を助けたい」という自分の軸がはっきりしたと感じています。
開業を決意されるまでには、どのような道のりがあったのですか。
もともと高齢の方と接するのが好きで、学生の頃から高齢者歯科に関心がありました。その思いが決定的になったのは、大学時代の訪問診療実習です。寝たきりや足が不自由で通院できず、痛みがあっても「もうどうしようもないよね」と歯科治療自体を諦めている方がたくさんいらっしゃいました。その現実を目の当たりにして、なんとかしてあげたいと強く感じたんです。卒業後は東京や静岡の歯科医院で訪問歯科に力を入れながら経験を積みましたが、患者さんに妥協のない最善の治療を届けるには道具も体制も自分の手で整える必要があると考え、独立を決意しました。子どもの頃からなじみのあるこのエリアで物件を探し、2026年6月にこの箕面の地で開院しました。
「まもる」という院名には、どのような思いが込められていますか。

お口の中の健康は、人が人として生きていくために絶対に必要なものだと考えています。歯を失うと噛めない、話せないだけではなく、人前に出ることに引け目を感じて活動量そのものが減り、引きこもりや寝たきりにつながることもあります。さらに噛む力が衰えると脳への血流量が低下して認知症のリスクが高まったり、心筋梗塞や肺炎といった全身の疾患に影響したりするともいわれています。つまり歯を守ることは、その方の健康と尊厳ある暮らしそのものを守ることにつながるんです。「まもるデンタルクリニック」という院名にはそうした強い思いを込めました。実は愛犬の名前も「まもる」でして、いろいろな縁を感じながら日々の診療にあたっています。
「何をされたかわからない」を絶対になくしたい
訪問歯科診療では、どのような診療が可能なのですか。

訪問歯科診療というと「歯磨きをしに来てくれる」「入れ歯を少し調整してくれる」くらいのイメージをお持ちの方が多いかもしれません。当院ではポータブルの切削器具やバキュームなどを装備しており、虫歯の治療から根っこの中の治療まで対応できます。残せる歯はしっかり残せるよう、ほぼ院内と変わらない治療を患者さんのもとでお届けできる体制を整えています。訪問先で何より心がけているのは、患者さんに不快感を与えないことです。特に認知症の方は、何をされたか覚えていなくても「この人は嫌なことをする人だ」という印象だけが残ってしまい、次から口を開けてくださらなくなることがあります。声かけや雰囲気づくりには細心の注意を払っています。
患者さんへの説明や情報共有で、工夫されていることはありますか。
「とりあえずよくわからないけど治療してもらった」という状態を絶対になくしたいんです。そのために画像共有アプリを導入し、エックス線や口腔内の写真を患者さんのスマートフォンにお送りしています。ご自宅でも治療経過やビフォーアフターを見返していただけますし、予約のリマインド通知で受診忘れも防げます。口腔内カメラは動画撮影にも対応しており、治療中の状態をその場でお見せしながら説明できるのが特徴です。子どもにも大人にも同じように丁寧にお伝えしていますし、訪問診療でもご家族の方がアプリを入れてくだされば治療内容を共有できるので、離れて暮らすご家族の安心にもつながると考えています。
治療方針を決める際に、大切にされていることを教えてください。

治療の選択肢は患者さんご自身にあると考えています。僕からはアドバイスをお伝えしますが、最終的にどうするかを決めるのは患者さんです。例えば医学的にはもう抜いたほうが良い歯であっても、患者さんにとっては長年大事に残してきた歯ですから「最後まで頑張りたい」という気持ちは当然あります。その思いは否定しませんし、決めたことに対しては全力でサポートします。そしていよいよ難しくなったときには「今まで頑張ってきたからここまで持ったんだよね」とお声がけして、後悔のない選択につなげたいと思っています。「抜歯された」ではなく「抜歯してもらった」と感じていただけるような関係づくりこそが、一番大事だと考えています。
「諦めなくていい」を一人でも多くの人へ
開院から間もないですが、日々の手応えはいかがですか。

おかげさまで、来てくださった患者さんとは笑顔で会話を楽しめるような関係が少しずつ築けています。例えば「3日後に娘の結婚式があるから、きれいにしておきたくて」なんて世間話が自然と出てくるような、リラックスした雰囲気ですね。僕が一番大切にしているのは、患者さんから気兼ねなく相談してもらえる先生でいることです。「先生だから変なこと言えないな」「こんなこと聞いたら駄目かな」という遠慮を、できるだけなくしていきたいんです。歯のことに限らず、ちょっと気になることでも気軽に話していただけるような空気感を、日々の声かけや対話を通じてこれからも丁寧につくり続けていきたいと思っています。
今後、力を入れていきたいことはありますか。
「歯医者に行けなくなっても諦めなくて良いんだよ、呼んだら歯医者さんは来てくれるから」。この事実を、もっと多くの方に届けていきたいと思っています。歯医者さんが自宅に来てくれるということ自体、まだご存じない方が多いですし、介護の現場で働くケアマネジャーさんの間でも十分には知られていないのが現状です。そこへ働きかけていくのは僕たち歯科側の使命だと考えていますので、地域の介護関係者への発信にはこれからも力を注いでいきます。将来的には歯科医師である妻と2人体制で診療を行い、外来と訪問の両面をさらに充実させていく計画もあります。通院が難しくなった方にも「ここに頼れる場所がある」と感じていただけるよう、訪問歯科の体制づくりを一層進めていきたいですね。
最後に、読者の方へメッセージをお願いいたします。

訪問診療については、どうか諦めないでほしいと心から思います。歯のことに限らず、日常生活のちょっとした困り事でも構いませんので、まずはお近くの地域包括支援センターやケアマネジャーさんに声をかけてみてください。当院へ直接ご連絡いただいても構わないのですが、訪問診療ではケアマネジャーさんとの連携が欠かせないため、先にそちらへ相談していただくほうが話がスムーズに進みやすいです。普段から信頼して相談に乗ってもらっている方からの紹介であれば、患者さんご本人も安心して受け入れやすいと思います。どんな些細な悩みでも望みでも、まずは声に出すことから始めていただけたらうれしいですね。

