村松 賢一 院長の独自取材記事
戸塚クリニック
(横浜市戸塚区/戸塚駅)
最終更新日:2025/07/17

戸塚駅西口から徒歩10分ほどの住宅地にある「戸塚クリニック」。日本循環器学会循環器専門医の村松賢一院長は、糖尿病をはじめとする生活習慣病と心臓病を一体的にケアする心血管代謝疾患の治療に取り組むドクターだ。さらに、甲状腺疾患などの内分泌疾患にも力を入れており、循環器疾患との関連性を考慮した診療を実践している。また、救急医療を主軸とする循環器内科での診療経験も豊富。現在はそのキャリアを生かし、地域の「かかりつけ医」として患者に寄り添った診療を提供している。糖尿病や甲状腺疾患を診るだけでなく、血管と心臓も同時に診る同院ならではの強みや、そこに至るまでのストーリー、そして患者への深い思いについて語ってもらった。
(取材日2025年2月5日)
糖尿病や心臓、甲状腺疾患。すべてを受け止める覚悟を
まず、先生がご専門を循環器内科まで広げられた経緯を教えてください。

私は研修医時代から糖尿病を中心とした生活習慣病を多く診てきました。その際、「糖尿病は多くの場合、心臓や血管の疾患に行きつく」ということを痛感したのです。実際に、糖尿病を長く患われている患者さんが、脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる重篤な合併症を引き起こす場面を何度も目の当たりにしました。そうなると救急対応が必要になりますが、当時の私は循環器内科にお願いするしか手段がなかったのです。その時、「血糖値だけでなく心臓や血管まで診られる医師になろう」と強く決意しました。その後、2005年から約10年間、さいたま赤十字病院の循環器内科で心筋梗塞や急性心不全、動脈解離、心肺停止など数多くの救急症例を診療し、カテーテル治療や人工呼吸管理など高度な医療にも携わりました。2014年には縁あって当院の院長に就任し、現在は糖尿病と心臓病を総合的に診る地域密着型の医療を提供しています。
先生が注力している心血管代謝疾患の詳細と、治療の重要性について教えてください。
心血管代謝疾患というのは、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病と、心臓や血管の病気が深くつながった状態です。これらの疾患は互いに影響し合い、血管を傷つけて動脈硬化を進めます。すると、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの深刻な病気のリスクが高まる恐れがあるのです。実際、冠動脈疾患の患者さんの約60%は糖尿病またはその予備群といわれ、糖尿病の患者さんの約3分の2は最終的に心血管疾患で亡くなられるというデータもあります。生活習慣の乱れは自覚症状のないまま血管を静かに傷つける大きな要因になり得るので、日頃から糖尿病や心臓病を一緒にケアすることが大切なのです。当院では私自身が両方の専門家として診察しますので、異常を早期に発見しやすく、かつ迅速に対応できます。院内で必要な血液検査や心電図、エコー検査なども実施できるため、患者さんがあちこち通院する手間も減るのではないでしょうか。
甲状腺疾患も循環器疾患を引き起こす可能性があると聞きました。

おっしゃるとおりです。甲状腺はホルモンを通じて体の調子を整えている大切な臓器で、その異常は心臓や血管にもさまざまな影響を与えます。例えば、甲状腺ホルモンが多すぎると、動悸や頻脈、不整脈などを引き起こしやすいですし、逆に少なすぎると心臓の働きが弱まり、心不全につながることも。実際に甲状腺の病気は症状が多様で、心臓や脈の異常がきっかけとなり発見される患者さんも少なくありません。そのため、甲状腺と心臓の両方を同時に診察できるクリニックは患者さんにとって非常に安心感があると思います。当院は循環器疾患の観点からもしっかりと甲状腺を診察・検査していますので、甲状腺の症状で少しでも気になることがあれば、ぜひ気軽に相談してほしいですね。
食事、運動、薬を適切に組み合わせた治療を行いたい
糖尿病の治療にはどう取り組まれていますか?

病気だけを診るのではなく、患者さんの生活背景や心理面まで見て治療にあたる全人的医療のアプローチをベースに、一人ひとりの症状や生活習慣に合わせて食事療法、運動療法、薬物療法を適切に組み合わせた治療をめざしています。生活習慣病と呼ばれる糖尿病は、遺伝的な要因に偏った食事や運動不足などが重なって起こる2型糖尿病ですが、食事や運動のような生活習慣をすぐに変えていただくのは難しいことも多いのです。患者さんにすれば「検査の日はたまたま血糖値が高かった」「症状もないのに治療する必要があるのか」など言いたいことも多いでしょう。そのため当院では、病気の状態と、放置すると脳梗塞や心筋梗塞になるリスクが高まることなどを丁寧にご説明し、納得していただいてから治療を始めるよう心がけています。
糖尿病患者の食事療法で注意すべき点を教えてください。
食事制限というと拒否される患者さんも多いので、糖尿病治療における食事の重要性をご説明した上で、患者さんの食生活をもとに「より健康的な生活をめざすための一歩」として実現可能な方法を助言するようにしています。また健康食品を信頼しすぎないよう注意を促し、野菜ジュースや青汁は野菜の代わりにはならないことや、糖質制限も総摂取カロリーを抜きに考えられないことなど、健康情報に関するさまざまな誤解を解いていくことも大切だと感じています。もちろん喫煙は生活習慣病の治療を大きく妨げますから、禁煙をお勧めしています。
糖尿病の治療では、どんなことを重視されますか?

食事や運動など生活習慣を変えていただくことは大切ですが、時間がかかるため、必要な方には適切な治療薬を用いる薬物療法も重視しています。ここ十数年で糖尿病の治療薬は大きく進歩し、インスリンを出させるための薬の他、尿に余分な血糖を出して血糖値を下げる目的のSGLT2阻害薬、血糖値低下を図ることに加え体重増加の抑制も期待できるGLP-1受容体作動薬なども登場し、有用な治療が望めるようになってきたのです。一般的にSGLT2阻害薬は飲み薬で1日1回の服用、GLP-1受容体作動薬は当院の場合は注射薬を週1回の使用で処方し自己注射も可能です。薬により血糖値などの改善が図れたら、治療を続けようと患者さんのモチベーションも高まるでしょうし、食事や運動にも気をつけていただけるのではと思っています。
介護を経験して、患者に寄り添う大切さをさらに実感
生活習慣病の予防には、どんなことが大切ですか?

一番重要なのは「自分だけは大丈夫」と考えず、健康管理を意識的に行うことです。具体的には、「バランスの良い食事」「無理のない範囲での適度な運動」「年に一度は健康診断を受けて自分の体調をきちんと把握すること」。この3つを心がけていただきたいですね。また、些細な症状であっても自己判断せず、医師に相談することが大切です。当院も地域の皆さんの「かかりつけ医」として、糖尿病や心臓疾患はもちろん、甲状腺疾患などの内分泌疾患まで幅広く診察しています。健康に関する疑問や不安があれば、ぜひお気軽にお越しください。
院長に就任されて10年以上たちますが、どんな変化がありましたか?
当院に以前から通われている患者さんが高齢になる一方で、近隣にマンションができたからかお子さんや若い世代の患者さんも増えましたね。当院では、内科全般はもちろん幅広い症状を総合的に診ています。風邪や腹痛の他、呼吸器などの一時的な症状にも対応し、必要なときには専門の医療機関もご紹介していますから、今後も多くの方に来ていただければと思います。一方、私の家族も高齢になり自分が介護をする立場になったことで、これまで以上に患者さんやご家族の気持ちに寄り添う必要性を実感するようになりました。病気の自覚症状がない親に、病気がさらに進行したときのリスクと、病気を防ぐために薬を飲み続ける予防的治療の大切さを理解してもらう難しさにも直面し、今後の診療に生かせたらと考えています。
最後に地域の方にメッセージをお願いします。

当院では検査設備を充実させ、経験豊富な医師が診断をしていますので、何か調子が悪いと感じる方はぜひ受診していただけたらと思います。また関連の深い糖尿病や循環器疾患を、心血管代謝疾患として総合的に診療する点は当院の大きな特徴です。健康診断で再検査になってもそのままにされている方は、脳梗塞や心筋梗塞になるリスクを高めているのと同じと言っても過言ではありません。とはいえ、無理な食事制限や運動は長続きしにくいこともわかりますので、新しい糖尿病治療薬を用いるなど、お一人お一人に有用と思える治療法をご提案したいと思っています。まずはご相談ください。