西村 光滋 院長の独自取材記事
にしむらクリニック
(尼崎市/園田駅)
最終更新日:2026/06/29
園田駅から徒歩約1分、地域で長年親しまれてきたクリニックを引き継ぎ、新たなスタートを切った「にしむらクリニック」。院長を務める西村光滋先生は、神戸大学医学部附属病院や加古川中央市民病院などで研鑽を積み、「患者ともっと近い距離で病気そのものに向き合いたい」と地域医療の道を選択。病気だけでなく患者一人ひとりの生活背景や価値観まで見据える「総合診療」を軸に、外来診療から訪問診療まで幅広く対応している。そこで今回は、「エビデンスに患者を当てはめるのではなく、患者を中心に必要な医療を考える」と話す西村院長に、診療へのこだわりやクリニックの特徴、今後の展望について詳しく話を聞いた。
(取材日2026年6月12日)
人生や価値観を含めて診る総合診療のクリニック
まずはクリニック開業の経緯から聞かせてください。

もともとは「一生続けられる仕事に就きたい」という思いから薬剤師をめざし、薬剤師として医療の現場で働き始めたのが、医療者としての私の第一歩です。しかし、実際に医療に携わる中で、薬を通して患者さんを支えるだけでなく、病気そのものや人生にもっと深く関わりたいと考えるようになっていきました。そこで改めて医学部へ進学し、医師になりました。卒業後は大学病院や総合病院で経験を積みましたが、大きな病院では診療方針が決まると地域の医療機関へ引き継ぐことが多く、患者さんのその後を見届ける機会は限られています。もちろん、そこにもやりがいはありましたが、「もっと患者さんに寄り添いたい」という思いは消えませんでした。そこで自分がこれまで研鑽を積んできた総合診療を軸としたクリニックの開業を決意し、ご縁があってこの場所を前院長から引き継ぐことになりました。
先生が研鑽を積まれた「総合診療」とはどのようなものですか?
総合診療は、特定の臓器や病気だけを診るのではなく、「患者さんそのものを診る」ことを大切にする医療のことです。例えば、ガイドラインで特定の治療が推奨されていても、高齢で他の病気を抱えていたり、生活環境によっては別の選択肢のほうが適していたりすることもあります。エビデンスをそのまま患者さんに当てはめるのではなく、その方に本当にガイドラインが適用できるのかを考えながら診療するのが「総合診療」のやり方です。また、症状が複数あったり、何科を受診すればいいかわからなかったりする方の相談窓口としての役割も私たちの大切な使命。病気だけでなく、その人の生活や価値観、将来まで見据え、一人ひとりにとって最善の医療を一緒に考え、病気の予防から初期治療、在宅医療まで一貫したケアを提供していきます。
先生が総合診療に興味を持ったのはなぜですか?

医師になりたての頃は、私も「病気をどう治療するか」ということばかりを考えていたように思います。しかし経験を積むうちに、病気が見つかっても年齢や体力、生活環境などを考えると、必ずしもガイドラインどおりの治療が最善とは限らない患者さんが数多くいることに気づいたんです。例えば90歳の患者さんがいるとします。病気を治療するという視点だけを大切にするなら、手術が正しい選択かもしれません。でも、その方の人生や価値観、ご家族の思いまで含めて考えた時、本当にそれが最善なのかは人それぞれなのではないか? そんなふうに考える自分と同じ疑問を抱き、向き合っている先生方が総合診療の分野にはたくさんいることを知り、病気だけではなく、その人自身を診る医療に魅力を感じたのがきっかけです。
訪問診療や往診にも対応し、総合的な診療を提供
では改めて、クリニックの特徴について教えてください。

当院は内科を標榜していますが、実際には「総合診療」を軸に幅広いお悩みに対応していることが大きな特徴です。風邪や頭痛、腹痛などの急性疾患、高血圧症や糖尿病といった生活習慣病への対応はもちろん、皮膚のトラブルや関節の痛み、禁煙治療、肥満症治療、さらには訪問診療や往診まで、一人の患者さんを総合的に診ています。例えば、糖尿病があり、膝の痛みで運動が難しい方であれば、血糖値の管理だけでなく痛みや肥満症へのアプローチも並行して行います。症状ごとに複数の医療機関へ通う負担をできるだけ減らし、必要に応じて各分野を専門とする医師とも連携しながら診療を進めています。どこを受診すればよいかわからない時も含め、ご自身の体のことで困ったことがあれば、まずは気軽にご相談いただきたいです。
訪問診療や往診にも対応されているのですね。
通院が難しくなった患者さんや、ご自宅で療養を続けたいと希望される方を対象に、訪問診療や往診を行っています。定期的にご自宅へ伺うだけでなく、体調の急変など何かあれば電話をしていただき、できる限り迅速に駆けつけるよう心がけています。当院では、かかりつけの患者さん全員に私の携帯電話番号が記載された名刺をお渡しし、「困ったことがあればいつでも連絡してください」とお伝えしているんですよ。在宅医療では病気を診るだけではなく、その方がどのような環境で暮らし、どんな最期を望んでいるのか、ご家族がどのような思いで介護されているのかまで含めて考えることが大切。患者さんだけでなく、ご家族にも寄り添いながら、たとえ病気であっても、その人らしく安心して自宅で過ごせるようサポートしていきます。
診療する上で大切にしていることを教えてください。

患者さんに「なぜこの治療が必要なのか」をきちんと理解していただくことを大切にしています。例えば高血圧症や糖尿病の治療は、単に数値を下げることが目的ではありません。将来、心不全や脳卒中、腎障害などの重い病気を予防するために行うものです。しかし、そのことを十分に理解した上で受診される方は決して多くありません。ですので、薬を処方して終わりではなく、「血圧が高いと何が起こるのか」「この薬を飲み続けることでどんなメリットがあるのか」を丁寧に説明するよう心がけています。また、生活リズムや仕事の都合で薬が飲めない方もいらっしゃいますので、「どうして続けられないのか」という背景まで一緒に考え、その方に合った治療を提案することを大切にしています。
相談しやすいクリニックをめざす
痛みの診療にも積極的に取り組んでいらっしゃるそうですね。

体の痛みに悩む人は多いのですが、受診しても大きな異常が見つからず、「年のせいだから」と我慢している人は多いです。そこで、ブロック注射をはじめとする痛みに対して必要な初期治療に、当院で可能な限り対応しています。慢性の痛みに悩んでいる方はご相談ください。糖尿病や肥満症などの併存疾患や生活背景まで考慮しながら、状況を見て各分野を専門とする医師とも連携し、その方にとって適切な診療につなげていきたいと思います。
一人ひとりの患者さんを大切に診療されている様子が伝わってきます。
患者さんと近い距離で診療をしたいという思いが、私が医師を志し、開業を決意した原点。今は毎日、一人ひとりと向き合いながら診療することができるので、医師として幸せだなと思っています。日々の診療の際に患者さんはもちろん、そのご家族のお話を伺うことで新たに見えてくるものがたくさんあります。病院勤務時代には経験できなかったことも多く、一人の患者さんの人生やご家族との関わりまで含めて見届けられることは、私自身にとっても大きな学びです。医師としてだけでなく、一人の人間としても成長させてもらえる環境に感謝しながら、これからも地域の皆さんに寄り添う診療を続けていきたいと思っています。
最後に今後の展望を聞かせてください。

まずは地域の皆さんにとって、気軽に何でも相談できるクリニックになれたらと思っています。開院前にこの場所で診療されていた先生とは、また違った雰囲気のクリニックになっていますので、「相談しやすいクリニックができたんだ」と、まずは知っていただくことから積み重ねていきたいですね。また、外来診療だけでなく訪問診療にもさらに力を入れ、通院が難しくなった後も継続してサポートできる体制を整えていきたいと考えています。私と同じような思いで地域医療や在宅医療に取り組みたいと考える先生とのご縁があれば、仲間を増やしながら、より多くの患者さんを支えられる環境をつくっていきたいです。病気だけでなく人を診ながら、地域に根差した医療を続けていきたいと思っています。

