倉員 正光 院長の独自取材記事
くらかずレディースクリニック
(福岡市西区/九大学研都市駅)
最終更新日:2026/08/31
若い世代の増加が著しい九大学研都市駅周辺地域。同駅から徒歩8分の場所で約35年にわたり地域の産科医療を支えてきた医院と志を受け継ぎ、2026年6月「くらかずレディースクリニック」が開院した。院内はホテルを思わせる快適さと新しい医療機器を備えた空間へと生まれ変わった。院長の倉員(くらかず)正光先生は、福岡大学病院や国立成育医療研究センターで周産期医療の研鑽を積んだ専門家。「この西福岡の産婦人科医療を未来につなげたい」という言葉に込められた強い使命感が印象的だ。患者とその家族を第一に考えるという倉員院長に、開業の経緯や無痛分娩への取り組み、女性のライフステージに寄り添う診療について話を聞いた。
(取材日2026年8月6日)
地域の産科を受け継ぎ、「おめでとう」を届け続ける
御院を開業された経緯をお聞かせください。

当院の前身である産婦人科クリニックは、先代の頃から約35年にわたりこの地域の産科医療を支えてこられた施設です。後継者が見つからず休院されていたのですが、ご紹介をいただいたことがきっかけで引き継ぐことになりました。ちょうど医師として20年の節目を迎え、新しいことに挑戦したいという思いがあったところにこのお話をいただいたんです。開業医の高齢化もある中で、この広い西福岡エリアの産婦人科医療を未来につなぎたいという気持ちが、前任の先生と一致したことが一番の原動力でした。その先生もご自身が築いてきたものを残したいという強い思いをお持ちで、その志を受け継ぐことができればと考えたのです。開院前の内覧会には多くの方に来ていただき、地域からの期待を実感しています。
先生が産婦人科の道を選ばれた理由を教えてください。
川崎医科大学を卒業後、地元の福岡に戻り救命救急の分野からキャリアをスタートしました。その後外科、麻酔科と経験を重ねる中で、自分が本当にやりたい医療を探し続け、たどり着いたのが産婦人科です。福岡大学病院の産婦人科に入局し、がんや不妊治療も含めた幅広いトレーニングを経た上で、周産期医療を専門に選びました。大きな転機になったのは、国立成育医療研究センターへの国内留学です。全国から周産期医療を志す同世代の医師が集まる環境で、赤ちゃんとお母さんだけに向き合い続ける日々はとても新鮮でした。周産期医療の何よりの魅力は、入院してもおめでとう、退院してもおめでとうと言えること。なかなかそういう科はありません。その後、福岡大学病院の診療准教授、飯塚病院の診療部長を務めた後、今回の開業に至りました。
院内はどんなコンセプトでつくられたのですか。

「ホテルの中に医院がある」というイメージです。最近は若い世代の妊婦さんがアメニティーを重視される傾向にあることも踏まえ、あまり病院感を出さない空間づくりを心がけました。ベッドはすべてセミダブルで、寝心地にもこだわっています。特に多いのが、ご家族と一緒に過ごしたいというお声です。パートナーも泊まれる家族同室の部屋を3室設けており、生まれたその日から当院で一緒に過ごし、ここから仕事に出勤してまた帰ってくるということも可能です。一方、医療の質も担保しなければなりませんので、医療機器はすべて新しいものに入れ替え、電子カルテの導入など医療のDX化にも力を入れました。入院中の食事も大切なものですから、栄養と味、見た目の3拍子そろったメニューを提供しています。
選べる無痛分娩と、女性に寄り添う幅広い診療
御院でのお産の特徴を教えてください。

一番の特徴は無痛分娩です。方法は2つあり、陣痛が来る前に入院して促進剤を使う計画無痛分娩と、陣痛が始まってから麻酔を入れるオンデマンド無痛分娩のどちらにも対応しています。妊婦さんのご希望に寄り添い、方法を選んでいただけるスタイルです。私自身、麻酔科で研鑽を積んだ経験があり、当院では麻酔科も診療していますので、安心感を持っていただけるのではないでしょうか。近年、無痛分娩のニーズが高まっていますが、その背景には女性の社会進出があると感じています。体力を温存してお産に臨むことが見込めるため、産後の立ち上がりにも良い影響が期待でき、仕事復帰を考える方にとっても選択肢の一つです。痛いのを我慢してこそお母さん、というのはやはり違うと思うんです。人それぞれですから。選択肢を知らなければ選ぶこともできませんので、この地域の皆さんに広くお伝えしていきたいですね。
妊娠中から産後にかけてのサポートについて教えてください。
産後ケアのショートステイにも開院翌月から取り組んでいます。お子さんをお預かりすることで、お母さんにはしっかり休息を取っていただき、育児に向き合っていただくための仕組みです。背景には産後うつという深刻な社会問題があります。育児の中で疲れや孤立を感じ、追い詰められてしまう方も少なくありません。行政も支援に力を入れており、当院でも受け入れを行っています。当院では、妊娠中からコミュニケーションを取り、不安を解消しながら出産に臨んでいただくことを大切にしています。こうした支援の枠を将来的にさらに広げていきたいと考えています。
出産を控えた方以外にはどのような方が来院されますか。

九州大学が近いこともあって留学生含め学生さんも多く、おりものや月経の悩みなど相談内容はさまざまです。月経困難症については医療用のピルで痛みや精神的な落ち込みを和らげることが期待できますが、ピルに抵抗感をお持ちの方もまだ少なくありません。適切に使うことで女性としての生活の質を高めることも期待できますので、正しい情報をお伝えするのも私たちの大切な役割だと感じています。また更年期の症状に悩む方も多いですね。私は「女性のウェルネス」という言葉を大切にしていて、年齢を重ねてもお薬の調整などで輝いていただきたいと思っています。月曜には副院長が婦人科の外来を担当し、女性の医師に診てほしいという声にもお応えできます。不妊の初期相談やがん検診にも対応していますので、困ったなと感じたときがきっと受診のタイミングだと思います。
西福岡の産婦人科医療を未来につなげたい
一緒に働くスタッフの方々について伺えますか。

前身の医院の休院から1年以上がたっていましたので、一からオープニングスタッフを募集し、看護師、助産師、医療事務のメンバーを集めています。かつてこちらで働いていた方が戻ってきてくれたケースもあれば、一度介護の分野に移っていた助産師が「もう一度お産に携わりたい」と来てくれたケースも。経験豊富なスタッフがそろい、それぞれが異なる施設で培ってきたものを持ち寄ってくれていますので、良いところは取り入れ、改善を重ねながら独自のチームをつくっている最中です。私からは「何でも言ってください」と伝えていて、風通しのよい雰囲気を大事にしています。また、福岡大学病院や福岡山王病院にバックアップしていただいていますので、万が一の際にも迅速に連携できる体制が整っています。
開業されて、感じていることはありますか。
開業してからは、20代や30代の頃にやっていたことをもう一度やっているような感覚で、毎日がとても新鮮です。何より実感しているのは、患者さんとの距離がぐっと近くなったこと。一人ひとりとしっかり向き合いながら、妊娠から出産、そしてその先まで一緒に歩んでいけるのは、開業医ならではの大きなやりがいです。正直なところ体力的には大変な面もありますが、それでも赤ちゃんの誕生に立ち会い、お母さんの笑顔や退院されていく姿を見ると、やっていてよかったなと思えます。本当に産婦人科医冥利に尽きるといいますか、この仕事を選んでよかったと改めて感じる日々です。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

この西福岡の産婦人科医療を未来につなげたい。それが私の一番のメッセージであり、自分に与えられた役割だと思っています。ここに根を下ろし、20年のキャリアの中で培ってきた経験や知識を、地域の皆さんに還元していくことができればと思っています。お産のことはもちろん、月経や更年期の悩みまで、女性のさまざまなライフステージに寄り添える場所でありたいと考えています。我慢するのが当たり前ではなく、医療の力を使ってご自身の生活の質を高めることをめざす選択肢があること、まずはそれを知っていただきたいんです。当院では患者さんとそのご家族を第一に考え、スタッフ一同、同じ思いで診療にあたっています。主体的に、お一人お一人に自分に合った選択をしていただけるよう、これからもこの地で力を尽くしてまいります。

