藤田 朋大 院長の独自取材記事
TOMOぬくもりメンタルクリニック
(大田区/蒲田駅)
最終更新日:2026/06/05
蒲田駅東口から徒歩2分、ビルの4階にある「TOMOぬくもりメンタルクリニック」。院長の藤田朋大先生は三重大学医学部卒業後、精神科病院や在宅医療の現場で研鑽を積み、2026年5月に同院を開業した。ロゴマークには風呂に浮かべるアヒルをモチーフに採用、院内設備も温かみを重視するなど、クリニックの随所に受診のハードルを下げるための工夫が光る。「精神科は怖い、という心理的なハードルを下げたくて」。その思いの原点には、研修医1年目の頃に自身も精神的な不調を経験しながら受診に踏み出せなかった過去にあるのだとか。患者とともに歩む診療への思いや、受診ハードルを下げるための工夫などについて話を聞いた。
(取材日2026年5月18日)
研修医時代の実体験が、患者に寄り添う診療の原点に
医師を志し、精神科を選ばれた経緯をお聞かせください。

学生時代から理系科目が好きで、高校1年生の頃には理系の道に進もうと決めていました。その上で職業を考えた時、人と密に関われるような仕事がしたいという思いがありました。振り返ると、昔から友人に悩みを打ち明けられることが多く、「あなただから話せる」と、頼ってもらえる場面も多くありました。その経験を何か生かせないかと考えていた中で、医師という職業に惹かれていきました。中でも精神科を選んだのは、病気そのものだけでなく、その方の生活背景やその人自身をしっかりと見つめるという点に強く興味を持ったからです。症状の裏側にある気持ちにまで目を向け、人と深く関わっていきたい。その原点は、学生時代の経験にあったように思います。
今の診療スタイルにつながる原体験ですか。詳しく教えてください。
研修医1年目の時、学生から社会人へと環境が大きく変わる中で、精神的につらい時期がありました。医師はチームに指示を出す立場ですが、右も左もわからない状態でそれを求められるストレスは大きく、ふがいなさに悩んで睡眠に支障が出ることもありました。家族や同期に話を聞いてもらいながら過ごしていましたが、当時の自分にとって精神科はハードルが高く、受診できなかったんです。今振り返ると、感情を吐き出す場所としてだけでも使えば良かったと感じますね。あの経験があるからこそ、患者さんの不安やつらさが自分事としてわかります。当時、インターネットで情報を探して「自分だけじゃないんだ」と救われた経験から、同じ思いの方の支えになればとコラムの発信にも取り組んでいます。
この蒲田の地を選ばれた理由をお聞かせください。

三重大学医学部を卒業後、地元・三重県の病院での研修医期間を経て、県内の精神科単科病院に勤務しました。もともと好奇心旺盛な性格で、さまざまな方がいる東京で刺激を受けたいという気持ちがあり、上京後は同じ蒲田駅にある「かわいクリニック」で在宅医療に携わりながら、非常勤で精神科の外来診療にもあたっていました。大田区内のお宅を訪問して診察する日々を3年間続けるうちに、蒲田の地域の方々の温かい人柄にとても親しみを感じるようになったんです。同時に、この街で精神的な不安を抱えている方のニーズの高さも肌で実感しました。自分が親しんだこの場所で支えになりたいという思いが固まり、学生時代からずっと抱いていた開業の夢をここでかなえようと決意しました。
ぬくもりある空間で、患者と「ともに」歩む診療を
クリニックづくりでこだわった点を教えてください。

精神科には「怖い」というイメージがまだ根強く、受診をためらう方も少なくありません。その行きづらさをできる限りなくしたくて、空間づくりには特に力を入れました。木目調の素材を多く取り入れて間接照明や観葉植物を配置し、天井や柱にも木材を使うことでロッジのような落ち着いた雰囲気に仕上げています。大理石調の白い床で清潔感も意識しつつ、病院らしさは極力減らしました。アロマディフューザーも導入し、待合室と診察室で香りを使い分けています。ロゴマークにはお風呂に浮かべるアヒルのおもちゃをモチーフにしました。お風呂は癒やしの象徴ですから、その安心感を込めています。院名の「TOMO」には私の名前と「ともに」という意味を重ね、「ぬくもり」には患者さんに安心感や温かみを届けたいという願いを込めました。
診療で大切にされていることをお聞かせください。
まず意識しているのは、絶対に高圧的にならないということです。患者さんは不安を抱えて来院されますし「うまく話せるだろうか」と緊張されている方も多いので、安心して言葉を出せる雰囲気づくりを大切にしています。初めから根掘り葉掘り尋ねるのではなく、通院を重ねる中で少しずつ関係を築きながら、一緒に治療を考えていくことを大事にしています。お薬に抵抗がある方には、メリットとデメリットをきちんとお伝えした上で、ご本人が納得された場合にのみ処方するようにしています。ストレス性の不調や適応障害の場合は、必ずしも薬が必要とは限らず、環境の調整や物の捉え方の癖を見直すことのほうが大切な場合もあるんです。押しつけではなく、相談しながら進めるという姿勢は常に心がけています。
特に力を入れている分野について教えてください。

社会人のメンタルヘルスには特に力を入れています。産業医学についても学んできた経験を生かし、仕事上のストレスを抱えた方や休職中の方の支援に取り組んでいます。その中で、休職から復職までのサポートにはきめ細かな対応が欠かせないと実感しました。クリニックでも休職支援・復職支援を大切な柱と位置づけており、外来での診療を通じて働く方々を支えていきたいと考えています。また、患者さんの通院が難しくなって在宅医療が必要と判断した場合は「かわいクリニック」と連携して、スムーズにご紹介できる体制を整えました。状態が変化しても途切れることなく支援を届けられるよう、備えておくことが大切だと思っています。
「来て良かった」と思えるクリニックをめざして
「こんなことで受診しても良いのか」と迷う方も多いかと思います。

迷われる気持ちはよくわかります。ただ、精神科は相談をするだけ、気持ちを吐き出すだけでもまったく構わない場所です。何かあったときのセーフティーネットとして考えていただければと思っています。毎回通う必要はなく「また相談したくなったら来てください」とお伝えする場合もあります。ご自分が今どういう状態なのか気になっている方も多く、お話を伺って客観的にお伝えすることが安心につながればと考えています。「自分だけじゃないんだ」と感じていただくことで、少しでも気持ちが楽になればうれしいですね。インターネットで調べて堂々巡りになっている方ほど、一度専門家に話していただくと整理がつきやすくなります。精神科に行けば必ず薬を出されるということもありませんので、その点もご安心ください。
今後の展望についてお聞かせください。
社会人の方が安心して通えるクリニックをめざしていきたいと考えています。仕事のストレスや職場環境の悩みを抱えている方はとても多く、そうした方が気負わずに相談できる場所でありたいという思いが開業の根幹にあります。在宅医療の分野は連携先に託し、私自身は外来診療に専念しながら、産業医学で得た知見も日々の診療に還元していきたいですね。産業医学も引き続き学びを深めていきたいと考えています。外来診療の経験を重ねることで、働く方々が抱えるさまざまな悩みに、より深く寄り添えると思っています。患者さんと一緒に考え、ともに歩んでいける。そんなクリニックをこれからもつくっていきたいです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

受診のハードルが高いというお気持ちは、自分自身がかつてそうだったからこそよくわかります。だからこそ「来て良かった」と思っていただけるクリニックにしたいです。「ちょっと相談してみようかな」ぐらいの軽いきっかけで構いませんので、早い段階でお気持ちを聞かせていただけたらうれしいです。症状が重くなってからでは治療に時間がかかることもありますが、軽いうちであればお薬を使わずに対応できることも少なくありません。早めにご相談いただくことは、ご自身を守る上でとても大切なことだと思います。精神科は怖い場所ではなく、気持ちを整理するための場所です。少しでも気になることがあれば、気軽にお話を聞かせていただけたらと思います。

