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本井 宏尚 院長の独自取材記事

大船てんかん・神経・こどもクリニック

(鎌倉市/大船駅)

最終更新日:2026/10/15

本井宏尚院長 大船てんかん・神経・こどもクリニック main

大船駅から徒歩7分の場所に、2026年5月「大船てんかん・神経・こどもクリニック」が開院した。院長の本井宏尚(もとい・ひろたか)先生は、横浜市立大学附属市民総合医療センターをはじめ神奈川県内の複数の病院で20年にわたり小児科の経験を積んできた。その中でてんかん患者との出会いを転機に、アメリカ留学を経てさらに専門的な知識と技術を磨いてきた。淡いブラウンと白を基調にしたゆったりした院内で、穏やかな語り口で一つ一つの問いに丁寧に答える姿は、不安を抱える親子も安心できると感じさせる。クリニック名から専門特化の印象を持たれがちだが、「ベースは小児科。風邪・腰痛・皮膚の悩みでも遠慮なく相談してください」と話す本井院長に、専門のてんかん診療から一般小児科としての思いまで幅広く聞いた。

(取材日2026年9月14日)

てんかんの専門性と小児科の経験を携え、大船に開業

まずは、こちらのクリニックを開業された経緯をお聞かせください。

本井宏尚院長 大船てんかん・神経・こどもクリニック1

2026年5月に開院し、開業の大きな理由の一つが、この地域のてんかん診療の課題です。てんかんを専門とする医師が神奈川県の西部エリアにはほとんどいない状況でした。クリニックレベルでてんかんを専門的に診る施設がなく、患者さんは市外へ通院せざるを得ない状況だったのです。大学や横浜医療センターに勤務していた頃から現状を実感していたので、このエリアに専門性を届けたいと考えました。大船駅はターミナル駅で、都内からも県内広域からもアクセスしやすい場所で、実際に横須賀や平塚、小田原など遠方から通ってくださる方もいらっしゃいます。鎌倉市に住む者として、この地域に貢献したいという気持ちも後押しになりました。

先生がてんかんを専門分野にされた経緯を教えてください。

小児科医としてのキャリアは20年になります。てんかんは小児科でかかる方が多い病気で、キャリアの初期から日常的に患者さんと接していました。診療を重ねるうちに学問としても興味を持ち、徐々に神経の領域にシフトしていきました。横浜市立大学附属市民総合医療センターでは小児神経グループに所属し、神経の診療と一般小児診療の両方を担当していました。2015年には聖隷浜松病院の小児神経科に1年半国内留学し、てんかんの専門的な修練を積み、その後アメリカのミシガン小児病院でてんかんの研究にも携わりました。神奈川県を中心にいくつもの病院で小児科全般の診療経験を重ねてきましたので、幅広い症状に対応できる点も当院の特徴です。

クリニックづくりでこだわった点を教えてください。

本井宏尚院長 大船てんかん・神経・こどもクリニック2

まずこだわったのはレイアウトです。赤ちゃんからご高齢の方まで来院されることを想定し、ベビーカーや車いすでも無理なく移動できるよう、待合室や廊下を通常より広めに設計し、全館バリアフリーにしました。てんかんの診断に欠かせない脳波検査を院内で実施できる体制も整えています。診察室は複数設け、感染症管理のための隔離室も備えました。患者さんには各診察室に入っていただき、私がそこを回る診療スタイルを取ることで、待合室で長時間お待たせしない工夫をしています。内装は木目調を基調としたナチュラルな雰囲気にし、受付には絵画を飾って、落ち着いて過ごせる空間をめざしました。基本は予約制ですが、直接いらっしゃった方にも対応しています。

正しい知識と見通しを伝え、てんかんの不安に寄り添う

てんかんの治療は、どのように進めていくのでしょうか?

本井宏尚院長 大船てんかん・神経・こどもクリニック3

治療の中心は薬物療法です。全てんかんの7割から8割の方は薬剤でのコントロールが見込めるといわれています。小児の典型的なてんかんであれば寛解、つまり発作が長期間出ない状態をめざせることが多く、3割から4割の方は薬の中止まで持っていける可能性も望めます。一方で、薬がないと発作が再発する方も多く、大人になっても服薬を続けるケースがあります。当院ではてんかんに関して赤ちゃんからご高齢の方まで全年齢を対象にしています。小児科卒業後に行き先を失う「移行期医療」の課題は各地で深刻ですが、そのまま主治医として生涯診療を続けていく体制をめざしています。薬で改善が難しい場合には、横浜市立大学と連携した外科治療への橋渡しや生活指導といった選択肢もご提示できます。

お子さんのてんかんは、どのような症状で気づかれることが多いですか?

実は、明らかなけいれんを伴わないてんかんもあります。例えば欠神てんかんと呼ばれるタイプでは、会話の途中で急に動きや言葉がピタッと止まり、数十秒後にまた動き出すといった症状が見られます。ミオクローヌスといって、瞬間的に筋肉がピクンと収縮し、お箸で食べていた物をパッと飛ばしてしまうこともあります。いずれもガクガクと動くけいれんとは異なるため、最初はご本人も周囲もなかなか気づけません。脳のどこに異常があるかで症状は多彩で、そこが診断の難しさであり、専門家の目が必要な理由でもあります。受診時には発作が止まっていることが多いため、余裕があれば動画を撮っておいていただけると診断の助けになります。てんかんかどうかわからない段階でも、気になることがあればご相談ください。

患者さんやご家族の不安に、どのように向き合っていますか?

本井宏尚院長 大船てんかん・神経・こどもクリニック4

一番大切にしているのは、お困りになって来ている方に寄り添うことです。まずしっかりお話を聞いた上で、専門家としてのアドバイスと今後の道筋をお伝えします。てんかんと診断されたばかりの親御さんは、この先どうなるのだろうと不安を感じる方が多いものです。やはり先が見えないと不安ですから、正しい知識をお伝えしながら、お子さんのてんかんのタイプを絞り込み、何年くらい薬を続けるか、減薬の見込みがあるかといった道筋を具体的にお話しします。発作時の対応も「こういう時は救急車を」「翌日の受診で大丈夫」とシンプルにお伝えし、活動上の注意点もご説明します。思春期はつい服薬を忘れがちになりますので、ご本人の病気への理解を深めながらモチベーションを保っていくことも大切にしています。

風邪や発達の相談も。地域のかかりつけ医をめざして

てんかん以外には、どのような診療をされていますか?

本井宏尚院長 大船てんかん・神経・こどもクリニック5

風邪やアレルギーといった一般小児科の診療はもちろん、ワクチン接種や乳幼児健診にも対応しています。小児神経の領域は幅が広く、頭痛や起立性調節障害、首の据わりや歩行の遅れといった発達の相談にも対応できます。だんだんと発達相談でいらっしゃる方が増えている印象です。児童精神科は半年から1年待ちのところも多く、受診先を探して当院を見つけてくださる方もいらっしゃいます。夏休み明けに学校に行けなくなったお子さんの相談もあり、その背景に発達の課題が隠れている場合もありますね。

今後、どのようなクリニックに育てていきたいですか?

めざしているのは、専門領域と一般小児科の両方をしっかり回していくクリニックです。ワクチンや健診も含め、かかりつけ医としてお子さんの発育を日頃からフォローしていきたいと考えています。普段から診ているからこそ、発達の課題を早い段階で拾い上げることもできますし、かかりつけのお子さんがてんかんを発症した場合にも、そのまま専門的な対応へつなげられるのは大きなメリットだと思います。一般のクリニックに小児神経やてんかんを専門とする医師がいることはあまりありませんので、発達の評価も含めて、他の小児科とは少し違った角度の医療を提供できるのではないでしょうか。専門性をこの地域の方々に届けながら、地元の小児科としての役割もきちんと果たしていきたいと思っています。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

本井宏尚院長 大船てんかん・神経・こどもクリニック6

クリニック名に「てんかん」と入っているので、風邪の時にここにかかっていいのだろうかと迷われる方もいるかもしれません。ですが、私のベースは小児科医として20年診療してきた経験にあります。風邪やアレルギーなどの一般的な症状にもしっかり対応できますので、どうぞ遠慮なく頼っていただければうれしいです。てんかんに関しては、お子さんだけでなく成人も受診が可能です。小児科を卒業した後の通院先にお困りの方や、成人になってから発症された方もご相談いただけます。そしてもう一つお伝えしたいのは、明らかなけいれんがなくてもてんかんの場合があるということです。お子さんの様子に違和感を覚えたら、些細なことでも構いませんので、まずはご相談いただければと思います。