白木 達也 院長の独自取材記事
みむろ しらきクリニック
(さいたま市緑区/与野駅)
最終更新日:2026/09/10
東武バス道祖土二丁目停留所から徒歩3分、さいたま市緑区三室に2026年に開業した「みむろ しらきクリニック」。木目調の落ち着いた院内には心地良い音楽が流れ、訪れる人の気持ちをそっとほぐしてくれる。院長の白木達也先生は東北大学卒業後、精神科医として認知症治療の専門性を培いながら、内科診療にも積極的に携わってきた。「具合が悪くて来たのに、原因がわからないからお帰りくださいとは言いたくない」と語り、体と心の両面から治療を探る。認知症の専門家でありつつ、困ったときに気軽に頼れるかかりつけ医もめざす白木院長。取材中は終始明るい笑顔が印象的で、患者とその家族の人生を見つめる温かさがにじんでいた。診療の根底にある思いや今後の展望について聞いた。
(取材日2026年8月7日)
心の不調も体の不調も相談できるかかりつけクリニック
まずは、先生のこれまでのご経歴についてお聞かせください。

東北大学を卒業後、緩和ケアチームで出会った精神科の先生の存在をきっかけに、精神科に進みました。臨床にも研究にも精力的に取り組む姿に惹かれ、その先生と同じ精神科の道を志したいと思ったのです。しばらくは東北の病院に勤務していましたが、精神科を訪れる患者さんの多くは認知症の方でした。診療を続けるうちに「内科の薬が切れたから出してくれないか」と頼まれることも増え、内科のことも勉強しながら対応するようになったのです。病院の入院患者さんの中には心の不調も併せ持つ方がいらっしゃり、そういった方も「自分が診ます」と積極的に担当するようになりました。そうした経験から、心と体の両方を診る医療が自分の専門分野として固まっていったのです。
そこから、開業に至った経緯を教えてください。
開業を意識したのは、周囲の方とのご縁がきっかけです。以前から自分の理想とする診療をかたちにしたいという思いはありましたが、勤務医の立場では精神科と内科の両方を診るスタイルを十分に実践しきれないもどかしさがありました。認知症を診る中でも、体の不調も抱えた方に対して、認知症の診療と内科の対応を両立する難しさを感じていました。「精神科だから体の不調は診ないというのは違うんじゃないか」という思いがずっとあったのです。開業先を探す中で、この地域には精神科・心療内科のクリニックが少ないとわかり、それなら自分がここで心と体の両方を診られる場をつくろうと決めたのが開業の経緯です。
内科と精神科の両方を掲げていらっしゃいますが、その意義を教えてください。

例えば、動悸がするので心臓を診てほしいと受診された方がいたとします。検査をして体に異常が見つからなかったとき、「異常ありませんでしたから、お帰りください」とは言いたくないんです。具合が悪くて来たのですから、ではどうすればいいのかを違う視点から探り、なるべくアドバイスできるようにしたいです。体に原因が見つからなければ、メンタルの不調から症状が出ている可能性もあります。その場合は「こういう治療で改善につながるかもしれませんよ」とご提案し、ご本人が納得された上で試してみる。それで改善につながれば、わからないと言って帰すよりずっといいと思います。体と心のどちらに不調の原因があるかわかりにくいケースは多く、どの科を受診すればいいかわからないという方は実際にいらっしゃいます。そうした方が行き先に困らないようにすることが、当院の使命だと考えています。
適切な治療を続けることで楽しく生きる時間をより長く
認知症は受診のタイミングに悩む方も多いと思いますが、先生はどうお考えですか?

認知症かどうかという診断名よりも、周囲の方と一緒に過ごす中で摩擦が起きているかどうかが一つの目安になると思います。薬を使わない対応も含めて、できるだけ早い段階から気軽に相談していただくことが望ましいですね。ただ、認知症が進んでくると判断力も低下しますから、初めて会った医師に相談を決意するのはなかなか難しいことです。だからこそ、風邪や予防接種などで普段から顔を合わせている医師がいることが大切なのです。「ちょっと物忘れが心配なんだけど」と気軽に話せる相手がいれば、些細な変化にも早めに気づくことができます。早期発見・早期治療につながれば、ご本人の楽しい時間をより長く続けられると考えています。
認知症の治療は、具体的にどのように進めていくのですか?
最近注目されている、アミロイドベータの除去を図ることで進行抑制をめざすお薬がありますが、保険適用でも費用が高額なため、安易にはお勧めしません。お薬を使った治療では、神経を刺激する薬と気持ちを落ち着ける薬のバランスが大切です。ただ、落ち着ける薬を使うと頭がぼんやりしたり足腰がふらついたりすることもあるので、そういったデメリットはきちんとお伝えします。ご家族とも話し合って、薬なしで日常のバランスが取れているなら今のままで様子を見て、もしきつくなってきたらそのときにあらためてお薬を足しましょう、という段階的なご提案をしています。認知症と診断されると、これからの人生が不安になるのは自然なことです。でもまだ諦めるのは早くて、きちんと相談していけば楽しい時間はまだ長く続けていけると思います。
患者さんやご家族への対応で、大切にされていることはありますか?

ご本人とご家族の両方からお話を伺うようにしています。人間にはそれぞれ言い分がありますから、まずそれぞれのお話を聞いて、お互いを尊重することから始める。その上でどうバランスを取るか、一緒に考えていくことを大切にしています。訪問診療でさまざまなご家庭を見てきましたが、ご本人は自宅で過ごしたいと望んでいても、ご家族の負担が大きすぎて立ち行かなくなるケースがありました。ご家族の生活が破綻してしまうと、ご本人の希望もかなえられなくなります。ご本人を大切にしつつ、ご家族の負担が限界を超えないかは常に気にかけています。当院にはソーシャルワーカーも在籍し、介護保険の申請やデイサービスの活用など、制度面のご相談にも対応できる体制を整えています。
困ったらまずここへ。なんでも話せる場所をめざして
クリニックの設備やスタッフ体制で、特徴的な点を教えてください。

物忘れの背景に、頭の中でゆっくり出血が進むような脳の疾患が隠れている場合があります。物忘れがあるからといって、まさかそれが脳の出血によるものだとは思わない方がほとんどです。そうした可能性も視野に入れ、当院では必要に応じてCT撮影を行っています。頭部の画像は撮影時の姿勢のずれで見づらくなることがあり、診療放射線技師に週1回来てもらい、画像の品質管理や撮影条件の確認も行っています。より精度の高い判断につなげるための体制です。また、児童精神科にも対応しており、この地域で相談先に困っているお子さんの受け皿にもなりたいと考えています。風邪や熱中症といった一般内科の診療やワクチン接種にも対応していますので、精神科だからと構える必要はありません。
院内の雰囲気づくりでこだわった点はありますか?
院内は木目を基調にして、落ち着ける空間をめざしました。中待合を設けて、患者さんの動線が混雑しないよう配慮しています。もう一つのこだわりは、院内に常に音楽が流れていることです。来院されたときに、ふっと気持ちを落ち着けてもらえるような空間にしたいという思いから、音楽を取り入れました。もともと私は漫画や音楽が好きで、医師をめざしたきっかけも、学生時代に父が持っていた医療漫画にふれたことでした。作品の中の何げないセリフから人の心の動きを考えることが好きなんです。それは単なる趣味にとどまらず、患者さんの気持ちを理解しようとする姿勢にもつながっていると感じています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

心の不調か体の不調かに関わらず、困っている方にとって、「取りあえずここに相談すればなんとかなる」と思ってもらえる場所であることをめざしています。鼻水が出て熱っぽいとか、なんだかよく眠れないとか、具合が悪かったらとりあえずここに行こう、そのようにして身近な不調で利用していただける地域のホームドクターになることが今の目標です。もちろん、認知症や老年内科も専門にしてきた分野ですので、ご両親の様子や体調がいつもと違うといったケースで連れてきていただくこともお待ちしています。何かお困りのことがありましたら、どうぞ気軽にご相談ください。

