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多田 英司 院長の独自取材記事

藤山クリニック

(神戸市長田区/長田駅)

最終更新日:2026/07/14

多田英司院長 藤山クリニック main

長田駅から徒歩6分、長田神社のほど近くにある「藤山クリニック」。グレーを基調とした和モダンの外観が落ち着いた雰囲気を醸し出している。長年、地域に根差して診療してきた同院を、2024年から引き継いだのが多田英司院長。京都大学医学部卒業後、カテーテル治療を中心に研鑽を積んだ日本循環器学会循環器専門医であり、日本東洋医学会漢方専門医でもある。循環器と漢方の2つの専門性を生かし、西洋薬だけでは対処しにくい症状にも幅広く対応できる引き出しの多さが強みだ。ひょうひょうとした語り口ながら、「患者さんの訴えに真剣に向き合う」という言葉には実直さがにじむ。カテーテルの現場を知る医師が開業医の道を選んだ理由や、日々の診療で大切にしていることなどを聞いた。

(取材日2026年6月16日)

カテーテル治療を極めた先に選んだ、開業医の道

まずは先生が医師を志され、循環器内科を選ばれるまでの道のりを教えてください。

多田英司院長 藤山クリニック1

正直なところ高校生まで、特に何になりたいという明確な目標はなかったのです。ただ、病気の人を治すことへの関心から、親族に医療関係者はいなかったのですが、医師をめざすことにしました。京都大学医学部に進み、最初の1年間は、実は眼科に在籍していました。物が見えなくなるのは怖いことだと考えて、それを防げればと選んだのですが、眼科は全身については直接的には診ません。入院中の担当患者さんが心臓の不調などでつらそうにしている場面などを見るにつけ、そんな皆さんの力になりたいという思いが募り、内科の道へ。子どもの頃、おじいちゃんっ子、おばあちゃんっ子だったことから高齢の方に親しみがあり、高齢者の方々を診るなら循環器は避けて通れないだろうと考えて循環器内科を選びました。

循環器内科の勤務医として、どのような経験を重ねてこられましたか。

循環器内科の中でも、カテーテル治療にずっと携わっていました。心筋梗塞で救急搬送されてきた患者さんへのカテーテル治療を経験して、この治療にやりがいを感じ、もっと極めたいと思ってハイボリューム施設などで修行を重ねました。勤務医生活はトータルで24年になります。ただ、現場で診てきたのは、血圧やコレステロール、糖尿病といった生活習慣病を長年放置した末に重症化した方がほとんどでした。血管が傷みすぎてステントが入らない、心臓を治療しても他の血管が悪くて改善につながらない。そうしたケースを数多く経験するうちに、悪くなってからでは手の尽くしようがないのだと痛感し、もっと早い段階で介入することの重要性を意識するようになりました。

そうした経験を経て、こちらのクリニックで診療を始められたのですね。

多田英司院長 藤山クリニック2

勤務医時代、循環器専門の外来を続ける中で、患者さんから循環器以外のことをいろいろと相談されることがありました。ただ、専門の外来では時間的な制約もあり、そうした悩みに十分応えるのは難しかったのです。やがて、カテーテル治療をどこまでも極めていくより、さまざまな患者さんの話を聞いて対処を考えるほうが自分には合っているのではないかと感じるようになっていきました。ちょうど義父が、同じく循環器診療を行っていたこのクリニックがあり、ありがたいことに声をかけてもらいまして。2024年6月から、循環器内科をメインに漢方内科と内科を標榜する形で、継承した次第です。

循環器と漢方、2つの引き出しで症状に向き合う

循環器内科の診療で、クリニックならではの取り組みはありますか。

多田英司院長 藤山クリニック3

心不全の管理には特に力を入れています。心不全は、繰り返す方が少なくない疾患です。入院して良くなっても、自宅に戻ると食事の内容や塩分の取り方が変わり、またすぐに悪化してしまうのです。大きな病院では受診間隔が3ヵ月というのが基本ですから、その間に季節も変わり、目を離しているうちに状態が崩れてしまうことがあります。クリニックであれば通院の間隔を短くでき、受診のハードルも下がるのではないかと考えています。外来での心不全治療は大きな病院でもクリニックでも基本は薬の調節ですので、行うこと自体に大きな差はありません。循環器専門医としての知見を生かしつつ、大きな施設では難しいこまめな対応ができればと思っています。必要に応じて入院設備のある総合病院などへの紹介も行っています。

漢方内科にも取り組まれるようになった理由を教えてください。

国立循環器病研究センターに勤めていた頃、漢方好きの後輩がいまして、その影響で関心を持ったのです。大阪市内にある専門の施設でトレーニングをさせていただき、漢方専門医の資格を取得しました。西洋薬では、体がだるい、冷える、のぼせるといった訴えに対しては、実は、これといった選択肢がありません。漢方薬であれば、そうした方にも何かしらの対処ができればいいなと考えました。最初から漢方治療を希望して来られる方もおられますし、症状に応じて西洋薬と使い分けることもできます。

日々、患者さんと接する中で心がけていることがあれば教えてください。

多田英司院長 藤山クリニック4

患者さんの話は極力聞くようにしています。循環器の知識と漢方の技術の両方を生かして、どんなお悩みにも、できる限り対処する道を探していきます。また、生活習慣病の管理に関しては、ガイドラインに基づいた数値目標をきちんと設定して治療にあたっています。ガイドラインというのは、いわば今現在の人類の英知の結集だと考えていますので、そこに定められた基準はしっかり守るべきだという立場です。もちろん患者さんによって状況は異なりますから、管理の厳しさを一律に押しつけるつもりはありません。目標はぶれないようにしています。そのほか、健診の異常や風邪、痛風といった一般的な内科のご相談にも対応しています。

「病気から逃げるな」を胸に、地域医療を支える

これまでの医師人生で、今の診療のあり方に影響を与えた出来事はありますか。

多田英司院長 藤山クリニック5

京都の病院にいた頃、上司に「病気から逃げるな」と言われたことがありました。当時の自分は右も左もわからず、ただ与えられた仕事をこなしている時期だったので、逃げようもないだろうと思っていたのです。ただ、年次を重ねるにつれて気力や体力は変わってきます。すると次第に、あの言葉の意味がわかるようになってきました。そしてもう一つ、別の病院にいた時、同僚の担当患者さんが亡くなり、代わりに死亡確認へ行ったことがあります。ご家族がその同僚のことを「あの先生に診てもらえて本当に良かった、本人も自慢の主治医だったといつも言っていた」と口々に話しておられて、自分もそう言ってもらえるような医師になりたいと感じました。この2つは今も思い出す出来事です。

今後、このクリニックをどのようにしていきたいとお考えですか。

大きな病院に入院する方を1人でも減らしたい。悪くなってから大きな病院に回すのではなく、その手前の段階で当院がしっかり受け止めたいと考えています。診療の軸としては、このまま循環器と漢方の2本柱でやっていくつもりです。長く続けていけるよう、しっかり気分転換もしていますよ。休日はバイクで走りに出ることが多いです。太平洋側から石川県の千里浜まで、日の出から日没の間に走りきるイベントにも参加しました。道中、同じゼッケンの参加者とすれ違う一体感はなかなか楽しいものです。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

多田英司院長 藤山クリニック6

動悸や息切れ、心不全といった心臓周りの症状や疾患を、循環器専門医としてしっかりと診ていきます。診察から検査まで、気になることがあれば一つずつ確認しながら進めます。高齢の患者さんが多いので、人生の先輩として敬意を持って接すること、大きな声ではっきり話すことも心がけています。加えて漢方専門医の資格も持っていますので、冷えやのぼせ、疲労感など、西洋薬だけでは扱いにくい症状にも対応が可能です。生活習慣病の管理や一般的な内科のご相談まで、間口は広く持っているつもりです。何科に行けばいいかわからないという場合でも、お話を伺った上で方針を判断しますので、遠慮なく相談してください。