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井窪 薫 院長の独自取材記事

はなこころのクリニック

(神戸市須磨区/板宿駅)

最終更新日:2026/06/15

井窪薫院長 はなこころのクリニック main

神戸市営地下鉄西神線板宿駅から徒歩5分。住宅街にひっそりとたたずむ「はなこころのクリニック」は、個人宅のような外観に小さな看板を掲げるだけ。2026年4月に開業した精神科・心療内科の同院を率いるのは、院長の井窪薫先生。川崎医科大学卒業後、精神科の臨床に加え児童相談所など多方面で活動し、講演会や地域誌のコラムを通じて子育て世代への情報発信にも力を注いできた。4児の母でもある井窪院長は、自らの子育て経験から必要な人に支援が届かない現実を痛感し、その受け皿となるべく開業を決意。「困ったときのちょっとした相談役」と穏やかに話すその人柄に、訪れる人の心がほどけていくような温かさを感じる。開業の経緯や診療への思い、今後の展望について聞いた。

(取材日2026年5月21日)

自らの経験を原動力に、精神科受診のハードルを下げる

まずは開業に至るまでの経緯をお伺いします。

井窪薫院長 はなこころのクリニック1

開業自体は5年ほど前から考えていました。私には子どもが4人いるのですが、自分の子育てを通じて、産後うつのスクリーニング後のフォローが十分に機能していない現実を痛感しました。検査で気になる結果が出ても、子どもを連れて精神科を受診するのは抵抗感もありますし、待ち時間を考えると難しい。私自身も3人目の出産時に引っかかりましたが、上の子のお迎えがあり、十分なケアを受けることができませんでした。枠組みがあっても、本当につらい人が頼れないんだと、身をもって感じたんです。児童相談所の仕事でも、早い段階でフォローが届かず苦しむ方を見てきました。当初は産婦人科の中に受け皿をつくれないかと模索しましたが実現は難しく、自分が受け皿になれる場をつくろうと決意したのが開業のきっかけです。

先生のこれまでのご経歴についても教えてください。

川崎医科大学を卒業後、精神科の臨床に携わりながら児童相談所にも関わり、産業医学についても学んできました。それと並行して、神戸市の子育て応援サイトで5年ほど啓発記事の連載を担当し、講演会などを通じて子育て世代に向けた情報発信も続けてきました。そんな中でも、子どもとの関わり方やメンタルケアについて入り口の部分は伝えられても、そこから先の受け皿が足りないという思いがずっとありました。2023年から約2年間はアメリカで子育てをする機会があり、帰国後に開業準備を本格的に進めました。私自身、須磨で育ちましたので、この地域の医療に関われるのはとてもうれしいです。これまでのさまざまな経験が、今の診療に一つずつつながっていると感じています。

外観や院内の雰囲気にこだわりを感じますが、どのような思いが込められていますか。

井窪薫院長 はなこころのクリニック2

もし自分が患者の立場だったら、「精神科」と大きく掲げられた入り口を開けるのは勇気がいると思います。来たくても来られない方にどうにか来てもらいたい、その思いから外観は個人宅のような雰囲気にし、看板もあえて小さくしました。院内では自動チェックインを導入していて、受付で人と話すことなく診察に進めます。診察にたどり着くまでにいくつもステップがあると大変だろうと考え、お会計も診察室で完了する仕組みにしました。終わったらそのまま帰れるので、時間を気にされる方も利用しやすいかと思います。ロゴにもこだわっていて、子どもがハートを支えているデザインなのですが、その手をあえて大きく描いてもらいました。ぎゅっと包み込む温かさを表現したかったんです。

困ったときの相談役として、出口の見える診療を

診療ではどのようなことを大切にされていますか。

井窪薫院長 はなこころのクリニック3

私がめざしているのは「出口の見える診療」です。精神科というと長く通い続けるイメージがあるかもしれません。ですが、当院では気軽に相談に来ていただいて、落ち着いたら来なくていいというスタンスを大切にしています。困ったときのちょっとした相談役が、このクリニックの立ち位置だと思っています。例えば産後うつの方であれば、状態が改善すれば通院は不要だと考えています。一方で、就労支援や行政のサポートが必要な方にはしかるべき機関へおつなぎします。私自身、行政の現場にも出入りしてきた経験がありますので、その方の状況に合った支援先を一緒に探していけるのは強みかもしれません。抱え込むのではなく、地域の中で連携しながら支えていく姿勢を大事にしたいです。

そうした考えのもと、特に力を入れている分野を教えてください。

もともと愛着の問題や子育ての悩みには力を入れています。私自身4人の子育てを経験していますので、今の状態が良いのか悪いのかはさておき、私の家庭ではこうやって乗り切りましたよと、実感の伴った言葉でお伝えできるのかなと思います。また、通院したいのに時間が取れないという方のために、再診ではオンライン診療にも対応しています。精神科では、診察室に入られる時の雰囲気からその方の状態をある程度把握できるところがありますので、初診は対面で丁寧にお会いするのが基本です。ただ、30分の診察のために往復で1時間半かかってしまうと足が遠のく方もいらっしゃいます。行きたいのに行けないという状況をどうにかしたくて設けた仕組みですので、状況に応じて活用していただければうれしいですね。

患者さんと向き合う上で、心がけていることはありますか。

井窪薫院長 はなこころのクリニック4

まず、先入観を持たないことを意識しています。当院ではウェブ問診票を事前にご記入いただくのですが、実際にお会いすると印象が異なることも考えられます。書かれた内容だけで状態を決めつけず、目の前の方をしっかり診るようにしています。精神科の場合、調子の良い時に来院される方が多いので、調子の悪い時もイメージしながら、自分の勝手な印象で助言しないよう注意しています。お薬に関しても、盲目的に出すことはしません。処方する際には「落ち着いたらこれは減らしていきましょうね」と方向性を最初にお伝えします。必要な時期にはしっかり服用していただきますが、いらなくなったお薬まで飲み続ける必要はありませんので、減薬の見通しは常に共有するようにしています。

地域をつなぐ場として、必要な支援を届けたい

開業されてみて、どのような方が来院されていますか。

井窪薫院長 はなこころのクリニック5

子育て世代の方を多く想定していたのですが、開業してみるとビジネスパーソンの方もたくさん来てくださっています。駅から近く、チェックインから診察、会計までスムーズに進み、比較的短い時間でお帰りいただけるので、忙しくて時間が取れない方でも来やすいクリニックと感じていただいているのではないかと思います。これは、家事や育児に追われて「自分のことは後回しになりがち」なママにとっての通いやすさにもつながると思っています。お子さんのお迎えの合間でも通いやすく「こんなことで受診していいのかな」と感じるような段階でも、無理なく来ていただけるような場所でありたいと考えています。

今後の目標や、めざすクリニック像を教えてください。

つらくなくなったら、来なくてもよくなるクリニックでありたい、というのが一番の目標です。必要な方にはしっかり届けて、状態が落ち着いた方には「もう大丈夫ですよ」ときっぱり伝えてあげられるようにしたいですね。もう一つ、地域をつなげる場の1つになりたいという思いも持っています。児童相談所や行政とのつながりはありますが、近隣の病院やクリニックとの連携はまだこれからのところがあり、今後しっかり広げていきたい分野です。私は町のクリニックですから、上手に必要なところへ支援を届ける相談役でありたいと思っています。ここだけで完結するのではなく、その方に合った場所やサービスへつないでいく。そうした役割を果たせるよう、これからも取り組んでいきます。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

井窪薫院長 はなこころのクリニック6

実際に来られる方の中には、内科で異常なしと言われたもののメンタル面を指摘されて不安になった方や、どうしたらいいかわからないけれど、とりあえず来ましたという方もいらっしゃいます。言葉にしにくいお気持ちは、無理に整理せず、そのまま持ってきていただければ大丈夫です。初診でお会いした時の雰囲気から、今どういったフォローが必要かをイメージし、一緒に方向性を考えていくことができますので、うまく話せなくても心配はいりません。また、講演会や地域誌のコラムを通じた情報発信にも取り組んでいますので、ご本人だけでなくご家族にも届くものがあればうれしいですね。気になることがあれば、まずはウェブ予約でご相談いただければと思います。