星野 明弘 院長の独自取材記事
神奈川そけいヘルニア日帰り手術クリニック川崎武蔵小杉
(川崎市中原区/新丸子駅)
最終更新日:2026/05/14
新丸子駅西口より徒歩1分の場所で2026年4月に開院した「神奈川そけいヘルニア日帰り手術クリニック川崎武蔵小杉」。鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門的に行う同院。大学病院で食道がんや鼠径ヘルニアの診療に携わってきた星野明弘院長は、「鼠径ヘルニアは命に関わる病気ではないものの、生活の質に大きく影響する重要な疾患です。それにもかかわらず、専門的に診療する医師は少ないのが現実です」と話す。専門性の高い鼠径ヘルニア治療をもっと身近に、安心して受けられる環境を患者に届けたい――そんな思いで開業したという星野院長に、同院の取り組みについて詳しく話を聞いた。
(取材日2026年4月30日)
専門性の高い鼠径ヘルニアの日帰り手術の提供をめざす
まずは、クリニックを紹介してください。

当院は、鼠径ヘルニアでお困りの患者さんのための専門クリニックで、その日帰り手術を中心に診療しています。鼠径ヘルニアの手術は外科の中で、いわゆる盲腸といわれる虫垂炎、痔と並び、若手医師が経験する代表的な3つのうちの1つです。その中でも鼠径ヘルニアの手術は、外科の医師なら誰でもできるといわれることもありますが、実は難易度が高く、専門的な経験がなければ再発や合併症のリスクもあります。私自身は20年以上にわたり鼠径ヘルニアを専門としてきており、当院でもその経験や技術、知識を生かし、再発や合併症のない手術を提供することをめざしています。
開業にこの場所を選んだのはなぜですか?
一般的に外科の手術は虫垂炎が多いと思われがちですが、実は鼠径ヘルニアのほうが多く国内でも年間およそ15万件の手術が行われています。それだけニーズがあるにもかかわらず、鼠径ヘルニアの日帰り手術に対応している医療機関は、都内や横浜には多少ありますが、川崎市にはほとんどありません。日帰り手術が可能であれば、患者さんにとっては、自宅からできるだけ近い場所で受けられるほうが利便性も高く、安心にもつながります。私は、これまで新丸子や武蔵小杉に特別な縁はありませんでしたが、比較的近い場所に住んでいることもあり、この地域が再開発で発展していることも知っていました。加えて、武蔵小杉から近く、交通の利便性が高く日帰り手術に適した環境という点にも魅力に感じ、この地での開業を決めました。
院内作りでこだわった点を教えてください。

鼠径ヘルニアの患者さんは、9割が男性であることから、男性の目線で「カッコ良い」と感じてもらえる雰囲気を意識し、木目やグレーを基調に落ち着いた空間にしました。手術室には、腹腔鏡システムや電気メス、麻酔の装置などを備え、鼠径ヘルニア以外にも虫垂炎などの手術も実施しようと思えばできる設備を整えています。特にこだわったのはリカバリールームです。1日3件以上の手術ができるようリカバリールームも3室用意し、できるだけ患者さんが希望するスケジュールに合わせられるようにしています。また、待合室にはスマートフォンやノートパソコンを充電できるコンセントやUSBポートも備えて、高齢の患者さんの付き添いの方などが、手術が終わるまでの間に仕事などができるようにしてあります。
豊富な経験や知識、技術を生かした手術の実践に努める
鼠径ヘルニアの手術は、医療機関によって違いがあるのですか?

鼠径ヘルニアの手術は、基幹病院などでは数日の入院を伴うことがほとんどですが、当院では日帰りで実施しています。手術である以上、誰が執刀するかは重要です。現在、鼠径ヘルニアの手術を行っている医療機関の多くで一定の診療レベルは担保されていますが、必ずしも専門の医師が執刀しているとは限りません。また、鼠径ヘルニア手術は剥離、メッシュ展開、腹膜縫合など多様な操作を腹腔鏡で行うため、より高度な技術が求められます。さらに、ヘルニアの大きさや肥満、体格などによっても難易度は異なります。つまり、比較的容易に行えるケースもあれば、非常に高い技術を要することもあり、その見極めが重要なのです。私は長年、鼠径ヘルニアを専門としてきた中で若手医師の教育にも携わり、専門書も執筆してきました。その経験や技術を還元して手術を提供できることが、当院の大きな特徴だと考えています。
再発なども気になります。
一言で鼠径ヘルニアといっても大きく「外鼠径ヘルニア」「内鼠径ヘルニア」「大腿ヘルニア」の3種類があり、併存していることがあります。経験が少ないとそれらに気がつかないことがあり、本来は両方とも治療しなければならないのに、見えている1つのヘルニアしか処置しないと、すぐに再発する可能性があります。また、手術ではメッシュと呼ばれる素材で弱くなった腹壁の補強を図りますが、この入れ方や位置も再発に大きく関係します。さらに、手術では腹膜を剥がす必要がありますが、神経に近い位置で行ってしまうと、手術後に慢性疼痛が出ることがあります。こういった点も考慮しながら実施できる専門の医師や医療機関だと安心感につながるのではないかと思います。
鼠径ヘルニアの手術は、どのように行うのですか?

手術には、「鼠径部切開法」と「腹腔鏡手術」の2つがあります。鼠径部切開法は、基本的な鼠径ヘルニアの手術方法の一つです。足の付け根5〜7cmほど切開し、脱出した腸や腹膜を元の位置に戻した上で、弱くなった腹壁をメッシュで補強します。皮膚切開がやや大きいため、術後の痛みが強めであったり、生活に制限が出ることがあります。当院では、そのような状況をできるだけ避けるため、基本的に腹腔鏡手術を行っています。腹腔鏡手術ではおなかに5〜10mmほどの切開を3ヵ所行い、そこからカメラと器具を挿入し、モニターで映像を確認しながら、切開法と同様の処置を行います。手術にかかる時間は1時間弱で、大きく切開しないため、術後の負担が比較的少なく、翌日からデスクワークや散歩など、日常生活に戻れる方が多いですね。
鼠径ヘルニアが疑われる症状があれば心配せず受診を
診療の際に心がけていることはありますか?

インフォームドコンセントをすると、患者さんは3割程度しか理解していないという調査結果があります。ですから、丁寧に話しながら要点をしっかりと伝え、少しでも深く理解してもらえるよう心がけています。そのため、初診時は30分の枠を取っています。「先生にお任せします」とおっしゃる患者さんも多いのですが、それでも手術に対する不安や疑問をまったく持っていない方はいないと思っています。ですので、私はまず、鼠径ヘルニアの手術には「鼠径部切開法」と「腹腔鏡手術」の2つの方法があることをしっかりお伝えします。その上で、それぞれのメリット・デメリットをご説明し、最終的に腹腔鏡手術のメリットが大きいことをご理解いただいた上で、治療方法を選んでいただくようにしています。そうして少しでも安心して手術を受けてもらえるよう努めています。
話は変わりますが、先生はなぜ医師を志したのですか?
高校2年生の頃までは、会社員になろうと思っていました。しかし、一緒に住んでいてすごく仲の良かった祖父が病気になり、治療方法がないと言われ、どんどん弱っていき、亡くなってしまったのです。それを目の当たりにしたことがつらく、誰も治せないのなら自分が治してやろうと思い、医師をめざすことにしました。臨床研修でさまざまな診療科を経験する中で、最終的には自分の技術や判断で患者さんを直接治療できる外科に大きな魅力を感じ、外科医の道を選びました。そして、大学病院では食道がんや鼠径ヘルニアの診療に携わりました。さらに、その後勤務した関連病院に鼠径ヘルニアの専門部門があり、そこで鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術の奥深さに魅了されたことが、現在につながっています。以来、ずっと鼠径ヘルニア治療に力を入れてきました。
最後に、今後の抱負をお願いします。

鼠径ヘルニアの日帰り手術といえばここだと言われるようなクリニックにしていきたいです。そのために患者さんに優しくて安心、安全な手術をめざし取り組んでいくことはもちろん、今後は、若手医師の育成や勉強会での活動にも力を入れたいと考えています。足の付け根のふくらみや違和感など、鼠径ヘルニアが疑われる症状でお困りの方は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。検査の結果、別の疾患だったとしてもまったく問題ありませんので、どうぞ安心して受診してください。また、地域でご開業されている先生方も、鼠径ヘルニアの患者さんがいらっしゃいましたら、ご紹介いただけますと幸いです。

