山﨑 哲也 院長の独自取材記事
YSA スポーツと医科学のクリニック 横浜関内
(横浜市中区/関内駅)
最終更新日:2026/11/05
JR根岸線の関内駅から徒歩1分、2026年に開業した都市型複合施設の8階に「YSAスポーツと医科学のクリニック横浜関内」はある。横浜市スポーツ協会がスポーツ医療の拠点として開設したクリニックで、同じフロアにはジムも併設されている。院長を務める山﨑哲也先生は、野球をはじめさまざまなスポーツで負傷したアスリートの手術に携わってきたスポーツ整形外科のエキスパートだ。MRIやCTなど高水準の画像診断装置を備え、「スポーツ外傷・障害の診断はすべてここで完結できる」と妥協のない姿勢で語る。どの質問にもまず意図をじっくりと受け止め、豊富な経験をもとに多角的な視点から的確に答える、引き出しの多さが印象的だった。選手ファーストを貫く山﨑院長に、スポーツ医療にかける思いや理念を聞いた。
(取材日2026年9月25日)
運動器の究極に魅せられ、スポーツ整形外科の道へ
まずは、先生がスポーツ整形外科を志されたきっかけを教えてください。

整形外科は、体を動かすための「運動器」を扱う科です。そして運動をする上での究極の動きというのは、やはりスポーツの中に含まれていると考えています。物を投げる、跳ぶ、走る。そうした動作の中で関節には最大限の力が要求されますから、その究極の領域に対する憧れがありました。日常生活よりもはるかに高いレベルで運動器を使う人たちの診療に携わりたいという思いから、整形外科の中でもスポーツ整形外科の道を選んだのが原点です。1987年に滋賀医科大学を卒業した後、横浜南共済病院ではスポーツ整形外科部長や院長補佐を歴任し、現在は東海大学の客員教授も兼任しています。勤務医として長く研鑽を積む中で、一貫してスポーツによる外傷や故障と向き合ってきました。
これまでのご経験の中で、特に印象に残っていることはありますか?
これまでの経験の中で一番の喜びは、やはり手術に携わった選手の競技復帰を支えられることです。野球選手をはじめ多くのアスリートの手術に携わってきましたが、その経験の積み重ねこそが自分の強みであり、誇れるところかなと思いますね。スポーツのケガというのは、同じ部位の損傷でも競技ごとに求められる動きが異なりますし、復帰までの道のりも一人ひとり違います。例えば、あるケガを年に1〜2例しか診ていない病院と、年に何十例も診ている病院とでは、おのずと対応力に差が出てきます。豊富な症例を積み重ねてきたからこそ、選手の希望に沿える引き出しを持てていると感じています。その積み重ねが、今の私の原動力でもあります。
こちらのクリニックの院長に就任された経緯をお伺いします。

私の恩師である高澤晴夫先生が、新横浜にある横浜市スポーツ医科学センターの初代センター長を務めておられました。スポーツ整形外科の分野で知られている先生で、そのセンターの設立時から私も非常勤の整形外科医として関わっていたんです。その縁で横浜市スポーツ協会とは長年のつながりがあり、今回この新しい施設を協会が開設するという話をいただきました。ちょうど前の勤務先で定年が近づいていた時期と重なり、着任を決めた次第です。協会が掲げる「いつまでもスポーツが楽しめる 明るく豊かな社会の実現」という理念には共感しています。超高齢社会が進む中で、スポーツを軸に人々の健康づくりに貢献していくという方向性は、私自身がスポーツ医療に携わってきた思いとも一致するものでした。
診断を完結させ、選手の競技復帰を支える
クリニックのコンセプトや特徴を教えてください。

当院の最大の特徴は、スポーツ外傷・障害に関する診断がクリニック内で完結できることです。エックス線、MRI、CT、超音波画像といった画像診断の設備を備えていますので、ほかの医療機関に検査を依頼する必要がありません。「この検査機器がないので別の病院へ行ってください」ということが起きない体制を整えました。画像の質についても妥協するつもりはなく、高水準の診断装置を導入しています。病態を診断した上で治療方針を決め、手術が必要であれば私自身のネットワークを通じて信頼できる高度医療施設にご紹介し、術後のリハビリテーションは当院が担います。スポーツ外傷・障害の領域に関しては負けないという覚悟で、この施設を立ち上げました。
診断後の治療から競技復帰までの流れについてお聞かせください。
スポーツ選手の場合、ゴール設定が一般の方とは大きく異なります。日常生活に支障がなくなれば終わりではなく、100%の状態で競技の現場に戻ることが求められます。ところが保険診療でのリハビリテーションには150日という期間の制限があり、それだけでは完全復帰に至らないケースも少なくありません。そこで当院では、同じフロアに併設されたジムとの連携体制を整えています。クリニックでのリハビリテーションを経た後も、ジムで継続的にトレーニングを行い、競技復帰までの道のりを途切れさせない仕組みです。選手にとっては手術そのものよりも、そこから現場に戻るまでの過程がもっとも大変なんですよね。その期間をクリニックとジムの両方で支えていきたいと考えています。
選手と向き合う際に、大切にされていることを教えてください。

私のモットーは、「自分の親が患者だったらどうする、自分の子どもが患者だったらどうする」という気持ちで接することです。それが診療の基本だと考えています。そして何より大切にしているのが「選手ファースト」の姿勢です。選手を完全に競技へ戻すには、医師だけの力では到底足りません。理学療法士やトレーナー、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、時には指導者まで、さまざまな専門家の力を借りる必要があります。正直なところ、医師がスポーツ選手の復帰に関与できる部分はごくわずかです。だからこそ医師の役割は、自分がやれることに全力を尽くした上で、次の専門家へ確実につないでいくことだと思っています。そうした信頼のネットワークをどれだけ持っているかが、医師としての技量ではないでしょうか。
多職種の連携で、スポーツ医療のさらなる高みへ
診療を支えるスタッフの体制について教えてください。

当院では、常勤の整形外科医2人に加え、専門性の高い大学医局から派遣される非常勤医師1人が毎日出勤しており、常に3人の整形外科医で診療にあたる体制です。非常勤の医師はスポーツ整形外科を専門とする医師で、それぞれの関節部位を担当する形で配置しています。さらに診療放射線技師2人、看護師1人のほか、理学療法士も多数在籍し、チームとして診療全体を支えています。スタッフ間の連携も大切にしていて、週1回のカンファレンスで患者さんの状態や治療方針を共有しています。幸いそれほど大きな施設ではありませんので、スタッフ同士がすぐ隣にいる距離感なんですよね。気になることがあればその都度声をかけ合い、日常的にコミュニケーションを取れる環境になっています。
今後、力を入れていきたいことはありますか?
保存的治療、つまりリハビリテーションを中心とした手術に頼らない治療については、さらにレベルを上げていきたいと考えています。今は新しい治療法がどんどん進歩していますから、選手にとって有益な治療であれば自由診療も含めて積極的に取り入れていくつもりです。もう一つの課題は、選手の完全復帰を支えるための多職種連携の仕組みをさらに改良していくことです。一人の選手がケガをして元の状態に戻るまでには、医師だけでなく理学療法士やトレーナー、指導者など多くの方の力が必要になります。そうした方々との連携をより良いものにしていきたいですし、このクリニックがその拠点として機能していければと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

スポーツでケガや故障を抱えた方に対して、確実な病態診断と質の高いリハビリテーション医療を提供する施設でありたいと思っています。さまざまな医療機関で診断を受けたけれど、なかなか良くならない、原因がわからないと迷っている方はたくさんいらっしゃるはずです。そうした方の迷いを一つでも解決する力になりたいですね。学生から社会人、高齢者まで、スポーツに関わる方であれば幅広く対応していますし、横浜市内にお住まいの方に限らずどなたでも受診していただけます。選手ファーストという信念のもと、自分がやれることにはすべて全力で取り組み、それ以外は信頼できるネットワークに託しながら、一人でも多くの方の競技復帰を支えていきたいと考えています。

