沼口 隆太郎 院長の独自取材記事
沼口内科 江古田駅北口糖尿病クリニック
(練馬区/江古田駅)
最終更新日:2026/07/06
江古田駅から徒歩4分。閑静な住宅街に溶け込むように立つ「沼口内科 江古田駅北口糖尿病クリニック」は、2026年4月に開院したばかりのクリニックだ。院長のお父様が長年営んできた歯科医院をフルリノベーションした院内は、自然光がたっぷりと差し込み、ナチュラルで温かみのある空間が広がる。院長の沼口隆太郎先生は、大阪市立大学(現・大阪公立大学)の糖尿病内科で研鑽を積み、大学院では動脈硬化の研究に取り組んできた糖尿病診療のスペシャリスト。穏やかな口調で語る言葉の端々に、「患者さんを選ぶようなことはしない」という揺るぎない信念がにじむ。病歴を丁寧にひもとく診療へのこだわりから、生まれ育った江古田で地域医療を担う覚悟まで、じっくりと話を聞いた。
(取材日2026年4月30日)
予防への思いを胸に、生まれ育った江古田で開業
まずは、先生が糖尿病を専門にされた経緯を教えてください。

学生時代の病院実習で各科を回った時、どの診療科にも糖尿病の患者さんがいることに気づいたんです。さまざまな重い合併症を引き起こすのが糖尿病ですから、早い段階で糖尿病を治療したり、そもそも予防したりするのが大切ではないか。シンプルな考えですが、それが糖尿病内科を志した原点です。体が悪くなってから治療するよりも、日頃からきちんと管理していたほうが重篤にならずに済むことが見込めますし、予防に取り組むことこそ自分にできる社会貢献だと考えました。初期研修を経て大阪市立大学の糖尿病内科に進み、3年間集中的に研鑽を積みました。大学院では頸動脈エコーを用いて糖尿病患者さんの動脈硬化について研究し、血糖値だけでなく血管の状態まで見据える視点を養うことができたと思っています。
江古田で開業された背景をお聞かせください。
根本にあるのは、生まれ育った練馬区・江古田に貢献したいという思いです。縁もゆかりもない土地で仕事するよりも、愛着のある地元で診療したいと考えました。祖父の代から練馬区で医療に携わってきた家族の歴史もありますし、父も長年この場所で歯科医院を営んでいました。その父の引退に合わせて、建物を引き継ぐ形で開業を決めた次第です。もともと研究より外来診療のほうが自分には向いていると感じていたので、臨床の現場に軸足を置きたいという気持ちも後押しになりました。この地域は総合病院が少ないこともあり、クリニックの段階で病状を悪化させずに食い止めることが大事な使命の一つだと思っています。
長年親しまれたお父さまの歯科医院を、新しく生まれ変わらせたとか。

父の歯科医院を柱だけ残してフルリノベーションしました。設計で工夫したのは、発熱の患者さんとそれ以外の患者さんの動線を物理的に分けることです。発熱の方には裏口から入っていただき、専用の待機スペースでお待ちいただく形にしています。インフルエンザや新型コロナウイルス感染症と診断がついた場合には、そのまま裏口からお帰りいただけるので、一般の患者さんとは接触しない設計です。内装のデザインは「優しい雰囲気で、青を基調に」とお伝えして作っていただきました。窓が多い構造はもともとの建物の特徴で、日中は自然光がたっぷり入って明るいんです。自然な温かみのある仕上がりで、リラックスして過ごしていただける空間になったのではないかと思います。
病歴を丁寧にひもとく、専門家ならではの糖尿病診療
糖尿病の診療で大切にされていることは何ですか。

私が最も大切にしているのは、患者さんの病歴を丁寧に把握することです。初期研修医時代に「糖尿病の方の病歴は、発症する前の健診異常から通院歴、薬の変遷まで全部まとめなさい」と叩き込まれまして、それが今も診療の土台になっています。例えば過去にどんな薬を使い、何が合わなかったのかを把握していれば、同じ薬を繰り返し処方するような遠回りを防げます。血糖コントロールの経過を追えば合併症のリスクも予測しやすくなりますし、必要な検査の漏れも防げます。ただ単純に現在の血糖値を見て「今日はいいですね」「今日は良くないですね」で終わるのではなく、これまでの流れを踏まえた上で次の一手を考える。それが糖尿病専門の医師の診療だと思っていますし、私が一番こだわっている部分でもあります。
こちらで受けられる検査や治療について教えてください。
血糖値の管理では通常の測定に加え、24時間血糖を記録できる持続血糖測定器も活用しています。薬物治療ではインスリンの調整、週1回のGLP-1製剤なども副作用に配慮しながら処方し、合併症の早期発見に力を入れています。尿検査はほぼ毎回実施し、腎臓の指標となる尿中アルブミンは半年に1回確認します。頸動脈エコー検査や脈波検査で動脈硬化の進行を評価し、心筋梗塞や脳梗塞を起こさないことを目標に検査計画を組んでいます。高血圧や脂質異常など生活習慣病の管理や、発熱患者さんの診療にも対応可能です。治療方針を決める際は生活背景や経済面にも配慮して、一人ひとりの事情に合わせた調整を大切にしています。
治療を継続してもらうために、心がけていることはありますか。

糖尿病の診療で最も怖いのは、治療の中断です。重い合併症に至る方の多くは、治療を中断した経験があります。ですから、まずは「今の薬だけはやめないでください」とお伝えして、病院やクリニックに通い続けてもらうことを最優先にしています。患者さんにもいろいろな方がいらっしゃいます。患者さんが何かしらの不満などを抱えている場合は、まずそれを全部聞くようにしています。その奥にある本当の理由をくみ取れれば、そこから信頼関係を築いていけますから。合併症の怖さを知っていても前向きな治療行動に移せる方はひと握りというのが現実です。とにかく通院を重ねて粘り強くサポートしていけば、治療への取り組み姿勢が前向きに変わるタイミングが来ると思いますし、糖尿病専門の医師とつながっていれば、合併症の兆しを早めにつかめるので、その後の治療の幅も広がります。だからこそ、その方のペースに寄り添っていく診療が私の役割だと思っています。
誰もが安心して通える、地域に根差したクリニックへ
患者さんへの向き合い方は、どのように培われたのでしょうか。

高校の頃からストリートダンスを続けていまして、さまざまなバックグラウンドを持つ仲間と交流する機会が多くありました。私が取り組んでいるダンスのジャンルはLGBTQコミュニティーに起源があり、20歳の頃からそうした仲間とともにダンスに打ち込んできたんです。ダンスを通して、立場や背景が異なる人たちとコミュニケーションを取り、どんな人に対しても偏見なく自然に向き合い対話できるようになったと感じます。医療の現場では本当に多様な考え、背景の方がいらっしゃいます。その中で、どなたに対しても同じように向き合い、同じ医療を提供する。患者さんを選ぶようなことはしない。それが私のポリシーです。
今後、地域で取り組んでいきたいことを教えてください。
一つはフレイル、つまり加齢に伴う心身の衰えの予防に、ダンスを活用することです。自分自身のダンス経験を生かして、50代・60代以上の方を中心にダンスで交流が図れたらと思っています。体を動かすことで数値の改善も期待できますし、目標があると運動も継続しやすくなるはずです。健康面やスポーツに関しても深く学んでいますので、地域のスポーツイベントや運動の普及にも関わっていきたいですね。もう一つは、糖尿病や合併症に関する啓発活動です。いつかは個人的に市民公開講座を開き、予防の知識をお伝えする場をつくれたらと考えています。症状がないうちは予防に意識が向きにくいものですから、まず病気について知ってもらう機会を地域の中でつくっていきたいと思っています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

糖尿病は発症してすぐの段階では自覚症状がほとんどなく、そのまま放置してしまう方が少なくありません。しかし、症状のないうちから専門的な管理を受けることで、将来の合併症リスクを下げることが期待できます。もし治療を中断してしまっている方がいらっしゃれば、まずご相談だけでも構いませんので声をかけていただきたいです。通い続けてもらえるようにサポートしていくことも、私にとって大切な役割ですから。どんな背景をお持ちの方であっても、丁寧に向き合い、一人ひとりに合わせた医療を届けていきます。生まれ育ったこの江古田で開業した以上、地域の皆さんの健康を長く守り続けていきたい。それが私の一番の思いです。

