中間 恵美子 院長の独自取材記事
つばさウィメンズクリニック
(鹿児島市/笹貫駅)
最終更新日:2026/05/08
鹿児島市電・笹貫電停から徒歩4分の「つばさウィメンズクリニック」は、2026年3月に開業した婦人科クリニックだ。院長の中間恵美子先生は日本産科婦人科学会産婦人科専門医。心と体のつながりに深い関心を持ち、漢方や心理療法も学びながら全人的なケアをめざす。「森の中の鳥の巣」をイメージしたというやわらかな雰囲気の院内には「ここで羽を休め、また羽ばたいてほしい」との願いを込めたという。オンライン診療も導入するなど、患者の気持ちに寄り添った診療を重視する。「つらい時は我慢しなくて良いんだよ、どうぞ頼ってきてくださいと伝えたいです」。そう、やわらかな笑顔を浮かべる中間院長に、診療への思いを語ってもらった。
(取材日2026年4月13日)
心と体のつながりに向き合いたくて、婦人科の道へ
まずは、婦人科を専門に選ばれた経緯をお聞かせください。

2013年に産業医科大学を卒業し、地元鹿児島の「いまきいれ総合病院」で初期研修を始めました。当初は病理学に進む予定でしたが、研修医の頃に産婦人科を回った際に心を動かされ、進路を変更しました。もともと私自身が小学校の頃に心身症を経験しており、心と体のつながりを学んで臨床に生かしたいという思いが医師をめざした原点にあります。上司に相談したところ「婦人科でも更年期うつや月経前の気分不調、産後うつなど、メンタル面の不調を診る機会は十分にあるよ」と教えてもらいました。実際に産後の気分不調やがんに伴う精神的な落ち込みを抱える患者さんと接し、その心に寄り添うことにやりがいを感じたのが、婦人科を選んだ一番の理由です。
そこから開業に至ったきっかけを教えてください。
自分自身の出産が大きなきっかけでした。それまでは仕事に人生をかけていたのですが、子どもが生まれてからは家族も同じように大切にしたいと思うようになり、自分らしく働ける場として開業を考え始めました。また、総合病院では一人の患者さんにじっくり時間をかけることが難しい面がありますので、自分がやりたい診療との間にもどかしさも感じていた部分もありました。加えて、鹿児島県は鹿児島市内に医療機関が集中しており、鹿児島市外の方にとっては通院そのものが大きなハードルという実情がありました。処方箋を一枚もらうためだけに何時間もかけて来院される方や、忙しさから通院が途切れてしまう方も見てきました。オンライン診療を生かせば遠方の方にも医療を届けられると気づき、いろいろな思いが重なって開業に至りました。
クリニック名や院内の設計などについても伺います。

クリニック名は、高校時代に所属していた「つばさコーラス部」からいただきました。そこで学んだ「人を大切に」「地域社会への貢献」という精神を、理念にも込めたいと思ったのです。「つばさ」には、女性がさまざまな場所でのびのびと羽ばたけるよう支えたいという意味と、オンライン診療を通じ遠方の方にも処方箋やお薬をつばさに乗せて届けたいという意味を重ねています。そんな思いから、院の内装は「森の中の鳥の巣」のイメージで、天井は空色、床はベージュ系にして、フェイクグリーンやリースで緑を添えました。ここで少し羽を休めて、また外に羽ばたいていってもらえたら、と。診察室にはゆったり座れるリクライニングチェアを置き、リラックスして何でもお話しいただける空間をめざしました。
オンライン診療で、遠方の患者にも広く対応
こちらではどのような診療が受けられるのですか?

メインとなるのは、生理痛と更年期に対するホルモン治療です。漢方も取り入れ、健康相談にも対応しています。漢方はずっと独学で勉強してきましたし、育休中には心理療法なども学びました。大きい病院にいた頃は西洋医学的なアプローチが中心でしたが、精神面の支えを必要としている女性は本当に多いと感じていました。最終的には西洋医学と東洋医学、そして心のケアまで含めた全人的なサポートができるクリニックにしていきたいと考えています。年齢を問わず、学生さんから社会で頑張っている方、家庭を支えている方まで、すべての女性が笑顔で安心して毎日を過ごせるよう力添えしていくことが、当院の一番の軸です。
漢方ではどのような不調に対応できますか?
婦人科で使われる更年期や月経困難症の基本的な漢方は3種類ほどですが、学ぶほどにその方の体質に合った処方の選択肢が広がっていきます。西洋医学は検査の数値や画像ではっきりわかる疾患にはとても強い一方で「ちょっと体がだるい」「なんとなくイライラする」といった、検査では異常が出ない不調には対応しにくい面があります。東洋医学ではこうした状態を「未病」と呼びます。まだ病気には至っていないけれど少しバランスが崩れている状態を整えるための方法としては、漢方は適しています。体質や生活習慣と症状の関連をお話しして、原因を理解するだけで気持ちが軽くなることもあるかもしれません。「理由がわかってすっきりした」と納得していただけるよう丁寧にお伝えするようにしています。
離島や遠方にお住まいで通院が難しい方への対応はどのようにされていますか?

当院ではオンライン診療を保険診療の範囲内で取り入れています。初診は必ず対面で診察させていただき、状態が安定している方の再診処方にオンラインを活用するかたちです。対象地域は国内全域を想定しており、予約からビデオ通話、決済までオンラインで完結する仕組みにしています。仕事や学業で時間の融通がつきにくい学生さんや社会人の方が主な利用者になりますが、市外にお住まいの方や、地元の医療機関にプライバシーの面で通いにくいという方にとっても選択肢の一つになれると思います。定期的にお薬が必要な方が、安定した状態を無理なく保ち続けられるよう支えることが、オンライン診療の大きな役割だと考えています。SNSでも情報を発信し、必要な方に届くよう努めています。
我慢しなくて良い、頼ることが羽ばたくための第一歩
患者さんと接する際に大切にしていることを教えてください。

恩師から「ただ症状に薬を出すのではなく、その患者さんが何に苦しみ、どんな社会環境の中にあって、何をゴールとして求めているかを聴き取った上で治療を始めなさい」と教わりました。今もその言葉を大切にしています。治療にはいくつかの選択肢がありますので、それぞれの使用目的と副作用をお伝えした上で、ご自身の生活や希望に合ったものを選んでいただくようにしています。押しつけにならないよう、受容的に接することを心がけていますね。迷われる方には「こちらを選ぶ方が多いですよ」といった情報を添えることもありますが、最終的にはご自身で選ぶことが大切だと考えています。選びやすい提案の仕方、話の聞き方を常に意識しながら、患者さんが安心して決断できるよう努めています。
今後の展望を教えてください。
まずは声をかけやすいドクターとして、いろんな方に頼ってもらえる存在になることが目の前の目標です。その先には10年計画で取り組みたいことがあります。鹿児島県は鹿児島市内にしか分娩施設がなく、離島や市外から来る妊婦さんが臨月から陣痛までの間を安心して過ごせる場所が足りていません。そこで、市内に産前ケアの宿泊施設を作りたいと考えています。今は2人目のお産をためらう方も多いのですが、背景には「上の子を見てくれる人がいない」という切実な事情があります。託児施設を併設して、上のお子さんを安心して預けられる環境を整えれば、ご夫婦がお産に集中できるようになるのではないでしょうか。総合病院時代に患者さんに足りないと感じていたものを、一つずつ埋めていきたいという思いが原動力になっています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

「我慢しなくて良いんだよ」ということを一番伝えたいです。「皆も頑張っているから、自分も」と我慢してしまう方は本当に多いと感じています。でも、ちょっと話したり、人を少し頼ったりするだけで気持ちが楽になって、今度は自分が誰かに頼ってもらえる存在になっていけると思うんです。誰にも頼らず一人で抱え込むよりも、まずは人に頼ってみる。そこで少し元気を取り戻して、また誰かを支えられる自分になっていく。そうやって人と人がつながっていけたらすてきですよね。生理痛をずっと我慢してつらい思いを重ねてきた方も少なくありません。ため込まないでほしい、我慢しないでほしい。すっきりして笑顔で羽ばたいてほしい。その第一歩として、どうぞ頼ってくださいね。

