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河合 敏 院長の独自取材記事

河合耳鼻咽喉科医院

(横浜市金沢区/京急富岡駅)

最終更新日:2026/10/14

河合敏院長 河合耳鼻咽喉科医院 main

京急富岡駅の東口を出てすぐの場所に「河合耳鼻咽喉科医院」はある。祖父が開いた耳鼻咽喉科を父が継承し、1984年にこの地へ移転して以来、40年以上にわたり地域に根差してきた。院長の河合敏先生は横浜市立大学で嚥下をテーマに博士号を取得後、2004年に同院を受け継いだ。「往診をする医師になりたかった」という幼少期からの志を貫き、在宅医療に力を入れ続けている。中でも情熱を注ぐのが嚥下障害だ。専門的な評価なしに「食べられない」と判断されている患者を一人でも救いたいと語る言葉には、揺るぎない信念が宿る。富岡生まれの富岡育ちで、金沢区医師会会長も務める河合院長に、在宅医療や嚥下障害への思いについて聞いた。

(取材日2026年9月9日)

子どもの頃の体験を胸に診療する耳鼻咽喉科医

まずはこちらの成り立ちについてお聞かせください。

河合敏院長 河合耳鼻咽喉科医院1

もともとは祖父が横浜市神奈川区の新子安で耳鼻咽喉科を開いたのが始まりです。それを父が継承し、1984年にこの富岡へ移転してきました。私は富岡で生まれ育ちましたので、この地域には深い愛着があります。2004年に父から医院を引き継ぎ、院長になって約23年です。来院される方は大人が中心で、午前中はご高齢の方が多いですね。疾患としては難聴や喉の違和感が多く、私が力を入れている嚥下障害の方もいらっしゃいます。花粉症や風邪、副鼻腔炎といった一般的な耳鼻咽喉科疾患にも幅広く対応しています。小学校時代の同級生が来てくれることもあり、地域に根差した診療を続けられていることがありがたいですね。

先生がこちらを継がれた際、どのような思いがありましたか?

東京医科大学を卒業後、横浜市立大学の耳鼻咽喉科学教室に入局し、横浜市立大学附属病院で医局長や講師を務めながら診療と研究に取り組みました。博士号は嚥下に関するテーマで取得し、それが今の診療にもつながっています。実は、医師になったら往診をする医師になりたいとずっと思っていたんです。子どもの頃に体調を崩した時、近くの内科の先生が自宅まで来てくださったことがありまして、それがすごくありがたくてずっと心に残っていました。大学を辞めて開業する際に、勤務医ではできないことに取り組みたいと考えた時、真っ先に浮かんだのが在宅医療でした。ですから医院を継いだその日から在宅医療を始めています。耳鼻咽喉科で在宅医療に注力する先生はいまだに少ないのですが、だからこその意義があると思っています。

どのような在宅医療を展開されているのですか。

河合敏院長 河合耳鼻咽喉科医院2

診療所での外来診療が主体でその時間外に在宅医療を行っています。多いのは耳垢の除去と嚥下機能の評価です。耳の処置は専門的な技術が求められ、外耳道に入れた筒状の器具を左手で持ちながら、右手で外耳道内を操作して奥を確認します。日頃のトレーニングなしにはできない手技ですから、ご依頼いただく機会も多いですね。耳垢は大部分の方は耳栓状態になっているので、取るとたいへん喜ばれます。患者さんの喜びにつながるならいくらでも伺いますよという気持ちで取り組んでいます。嚥下の評価は嚥下内視鏡という機材を持参して行います。私たち耳鼻咽喉科の医師は日常的に鼻から内視鏡で喉を診ていますので、どの程度なら正常でどこから問題なのかを見極めることに精通しています。

口から食べられる喜びを。嚥下障害の診療に力を注ぐ

飲み込みに不安がある場合、どのように相談すれば良いでしょうか。

河合敏院長 河合耳鼻咽喉科医院3

「最近むせるようになった」「飲み込みにくくなった」という症状があれば、まず耳鼻咽喉科にご相談ください。飲み込みの問題は喉に原因があるケースが多いんです。検査では鼻から細い内視鏡を入れ、喉の状態を見ながら少量の液体などを飲んでいただいて評価します。診療所でもご自宅でも同じ検査が可能です。嚥下障害の原因は大きく2つあり、1つは加齢で喉の感覚が鈍くなって飲み込みのタイミングが遅れるもの。液体が最もむせやすいので、とろみをつけて対処します。もう1つは食道に物を押し込む力が弱まるケースで、筋力のリハビリテーションや姿勢の工夫が必要です。原因を見極めないとリハビリの方向が定まりません。必要に応じて言語聴覚士のほか、歯科医師や管理栄養士などの専門職とも連携しながら対応しています。

嚥下障害に悩む方やご家族に、知っておいてほしいことはありますか?

口からの食事が難しいと思われていた方でも、嚥下機能を丁寧に評価することで、食べる可能性を見いだせることがあります。実際に、これまで十分な評価を受ける機会がなかったという方もいらっしゃいます。入院をきっかけに気持ちが落ち込み、食事が取れなくなって、胃ろうのまま退院される方もいらっしゃいます。食べることは、人生の大きな楽しみの一つですよね。たとえ一食でも、あるいはお楽しみ程度でも口から食べられるようになれば、ご本人にとって大きな喜びになります。そうした可能性を一人でも多くの方に見つけていくことが私の仕事だと思っています。どうか最初から諦めずに、一度ご相談いただければと思います。

普段の診療で、患者さんにお伝えされていることはありますか?

河合敏院長 河合耳鼻咽喉科医院4

診療でよくお伝えしているのが、耳掃除は基本的に不要だということです。人間の体にはどの臓器にも自浄作用があり、鼓膜にインクを垂らしても約2ヵ月で自然に外に出てきます。外耳道の皮膚がゆっくり外側に動いているからなんです。外耳道の自浄作用が未熟な幼少児、自浄作用が低下した高齢者、耳垢がネバネバしていて溜まりやすい方を除いて、耳掃除は風呂上りに外耳道の入口付近を拭く程度で十分です。綿棒や耳かきはかえって耳垢を押し込んでしまうだけでなく、外耳道を触ることで湿疹ができてかゆくなったり炎症を起こして痛くなったりします。耳掃除は実は日本独自の文化で、海外の医学書には不必要と明記されています。知っているかどうかで大きな差が出ますので、ぜひ覚えておいてください。

地域とともに歩み、在宅医療をさらに広げていく

クリニックを支えるスタッフの皆さんについて教えてください。

河合敏院長 河合耳鼻咽喉科医院5

スタッフは現在10人で、そのうち4人は父の代から在籍しているベテランです。一番勤務歴の短い人でも5年以上ですから、全員が長く続けてくれていますね。大切にしているのは、みんなで顔を合わせて話す機会をつくることです。全員がそろう食事会を年に2回、有志の会を年に3回ほど開いています。全員参加の回はちょっといいお店を選んで、来て良かったなと感じてもらえるよう工夫しているんです。誕生日にケーキや花束を贈ったりもしていますが、2年続けて同じものだと喜ばなくなるのが不思議なところで(笑)、毎年何にしようか頭を悩ませています。スタッフへの感謝はきちんと形にして伝えることで、皆に気持ち良く働いてもらいたいと思っています。

今後、力を入れていきたいことについてお聞かせください。

これから在宅医療を必要とする方はますます増えていくと思いますが、横浜市で在宅医療を行っている耳鼻咽喉科医は若干名しかいません。時間的な制約により、現在私が在宅医療に伺えるのは基本的に金沢区内のみです。今後在宅医療を行う耳鼻咽喉科医が増えることが私の夢です。金沢区医師会会長や横浜市耳鼻咽喉科医会会長も務めていますが、その立場からも地域医療全体に貢献していきたいと考えています。在宅医療を充実させるにはケアマネジャーや言語聴覚士、管理栄養士、歯科医師といった多職種の方々との連携が欠かせません。顔を合わせて話し合える関係を大切にしながら、地域の皆さんが安心して暮らせる医療体制づくりに取り組んでまいります。

最後に読者の皆さんへメッセージをお願いいたします。

河合敏院長 河合耳鼻咽喉科医院6

体のことで気になることがあったら、遠慮なくご相談ください。特に嚥下障害については「もう食べられません」と言われたとしても、そこで諦めないでいただきたいんです。きちんと専門家が機能を評価すれば、食べられるとわかるケースがあります。少しでも口から食べられる可能性があるなら、その道を一緒に探っていきたい。それが私の強い思いです。私は富岡で生まれ育ち、この富岡で開業しています。だからこそ金沢区という地域をとても大事に思っていますし、皆さんに少しでも良い医療を届けたいという気持ちで日々の診療にあたっています。耳・鼻・喉のことはもちろん、飲み込みや耳のケアなど、どんな小さなことでも構いません。気軽に頼れる身近な存在でありたいと思っています。