高須 倫彦 院長の独自取材記事
本陣こどもクリニック
(名古屋市中村区/本陣駅)
最終更新日:2026/04/02
本陣駅からほど近く、中村区役所に隣接する医療モールの2階に開業した「本陣こどもクリニック」。院長の高須倫彦先生は、日本小児科学会小児科専門医であり、日本小児神経学会小児神経専門医でもある、子どもの心と体に深く寄り添うドクターだ。「小児科は家庭を診るもの」と語るとおり、子どもだけでなく、母親や家族の気持ちにも寄り添う。太陽をモチーフにしたロゴが迎える院内は、動物のイラストが随所にちりばめられた、温かな空間。朗らかな笑顔で子どもに向き合う親しみやすい人柄でありながら、説明は丁寧でわかりやすい。また、高須院長自慢のスタッフも、皆が思いやりに満ち、子どもたちに真摯に向き合う頼もしい存在ばかりだという。そんな高須院長に、診療の信念や、不登校・思春期の子どもへの取り組み、そしてこれからの展望を聞いた。
(取材日2026年3月12日)
子どもへの愛情を胸に、「家庭を診る小児科」を開業
まずは、こちらの地域で開業された経緯をお聞かせください。

私は愛知県日進市の出身で、当初は地元での開業も考えていました。ただ、中村区には小児科が少なく、お子さんを連れて遠方まで通わなければならないご家庭があると知り、この地域で力になりたいと思ったのがきっかけです。昔ながらの下町情緒が残るエリアで、高齢化が進んでいた時期もありましたが、近年は新しいマンションや保育園も増え、若い世帯が少しずつ増えてきています。当院は中村区役所に隣接する医療モールの中にあり、本陣駅からも近いので、お子さんを連れて来ていただきやすい立地です。開業してまだ間もないですが、「歩いて通える小児科が近くにできてうれしいです」と言ってくださる方もいて、この場所を選んで良かったと感じています。
小児科、そして小児神経内科の道に進まれた理由を教えてください。
両親が医師だったこともあり、私にとって医療は幼い頃からごく身近な存在でした。大学で実際に子どもたちと触れ合う機会を得た時、その時間が何より楽しく、勉強でさえ夢中になって取り組めたんです。3年生の頃にはすでに「小児科に進もう」と心が決まり、今振り返っても天職だったのだろうなと感じています。子どもに好かれると、お母さんも自然と心を開いてくださることが多く、自分の明るい性格がそのまま診療に生きていると実感しました。さらに小児神経内科に進んだのは、症状から原因へと論理的にたどる過程が学問としてとても興味深かったからです。診療を重ねる中で、発達障害のあるお子さんを持つご家庭が相談できる場所の少なさに困り、孤立してしまう現実も知りました。相談先がなく不安だったお母さんが、関わる中で前向きに変わっていく姿を見て、「小児科は子どもだけでなく家族全体を支える医療なのだ」と強く感じるようになりました。
動物のイラストが描かれた扉など、温かい雰囲気のクリニックですね。

ロゴマークは太陽をモチーフにしていて、「みんなを照らせるといいな」という思いを込めました。オレンジや赤い丸は小さなお子さんの目にも留まりやすい色なので、子どもにも認識してもらえると考え取り入れました。院内の扉にはゾウやコアラ、クマといった動物のイラストを描いていて、カーテンにはさりげなく肉球のマークも入れてみました。「ゾウさんのお部屋にどうぞ」なんて声をかけながら、お子さんが少しでも楽しい気持ちで来られる場所にしたいんです。感染対策用の待合室も別に設けていますので、体調に合わせて安心してお待ちいただけます。ちょっとした遊び心ですが、病院が怖い場所ではなく安心できる場所だと感じてもらえたらうれしいですね。
心だけでなく体と環境も。不登校を総合的に診る
注力されている不登校・思春期の診療についてお聞かせください。

不登校は「心の問題」と捉えられがちですが、私は環境・心・体の3つに分けて考えることが大切だと思っています。環境とは苦手な相手が近くにいるなどといった状況、心は精神的なストレス、体は頭痛やおなかの痛み、朝起きられないといった身体症状です。この3つは密接につながっていて、ひどい頭痛がある時に人に優しくするのは大人でも難しいですよね。まず身体症状を少しでも軽くすることが、心の安定への第一歩になります。心からくる体の不調だと思っていたところ、実はメンタルが原因ではなく、思わぬ病気が隠れているケースもあるんです。まずは小児科にかかっていただき、必要に応じて血液検査などを行い、身体的な原因がないかを丁寧に確認することが大事です。
お子さんやご家族と接する際に心がけていることを教えてください。
まず大切にしているのは、お子さんを信頼するところから始めることです。不登校のお子さんに多いのが、性格はとても優しいけれど自尊心が低く、「言っても信じてもらえない」と感じている子が少なくない点です。親御さんと意見が食い違った場面でも、まずは本人の話に耳を傾けます。うまく言葉にできない悩みを一緒に言語化してあげると、「伝わった」という安心感が生まれるんです。それぞれのお子さんに合わせて寄り添い、一緒に考える姿勢が大事だと考えています。また、自尊心を育む魔法の言葉があります。それは「ありがとう」です。ご家庭でちょっとしたことにも「ありがとう」と伝えるだけで、お子さんが自分の存在を認めてもらえたと感じる大切なきっかけになるんですよ。
育児の相談をさせていただける時間も設けていらっしゃるんですね。

初めての育児では、げっぷと一緒にミルクが出てしまったというだけでも不安になりますよね。不安は理屈ではないけれど、安心するためには理屈が必要なんです。「なぜ大丈夫なのか」を丁寧に説明すると、お母さんの表情がふっと和らぐ瞬間があります。この時間は、診療時間とは別で設けているためワクチンや健診の方が中心です。安心して受診いただけるかと思います。また、オンライン診療も導入し、診療時間外や休診日の時間帯にも対応しています。共働きで来院が難しいご家庭や、外出が困難なお子さんにもご利用いただけます。不登校のお子さんにとっては、まず自宅という安心できる場所から画面越しに相談できる点で、受診の入り口になると考えています。
小さな不安も遠慮なく。地域の家族を支えたい
日々の診療を支えるスタッフの皆さんについて教えてください。

本当にスタッフには恵まれていると感じます。事務スタッフは患者さんへの対応がとても丁寧ですし、看護師は向上心のある方ばかりです。ある看護師は臨床心理に関するスキルを学びたいと自ら受講を始めてくれていて、他にも乳幼児の診療についてさらに勉強したいと言ってくれている人もいます。この近くには小児科が少なかったこともあり、「小児科で働きたかった」という思いで応募してくださった方が多いのも心強いですね。スタッフのおかげでクリニック全体が穏やかな雰囲気に包まれています。皆さんの力に日々助けられています。
今後、地域の中で取り組んでいきたいことはありますか?
不登校のお子さんの支援では、失われた社会性を取り戻す「心のリハビリテーション」がとても重要です。ただ、それをクリニックだけで完結させるのは難しいので、フリースクールや訪問診療など地域と連携していきたいと考えています。すでに行政や学校との協力体制を少しずつ模索しているところです。当院で診断やカウンセリングを行い、連携しながら社会復帰を支える仕組みをつくるのが目標です。学校に行かないこと自体は悪いことではありません。ただ、学校における最も重要な役割でもある社会性の獲得ができなくなってしまうので、その後にどんな支援が必要かをきちんと考えることが大切なんです。フリースクールにすら通えないお子さんもいますから、そうした子たちにも手が届く体制を本気でつくっていきたいと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

子どもは家庭だけで育つものではありません。近くに頼れる大人がいることを、お父さん・お母さんにもお子さん自身にも知ってほしいと思っています。どんな小さなことでも不安に感じたら遠慮なく相談してください。不安は言葉にしないとどんどん膨れ上がるもので、小さなモヤモヤのうちに話していただければ「それなら大丈夫ですよ」と一言でお伝えできることも多いんです。実はお母さんが「関係ないかもしれないんですけど」と切り出してくださった何げない一言が、診断の大きなヒントになることもあります。気になることは何でも聞かせてください。スタッフ一同、地域の皆さんのそばで支えたいと思っています。

