天田 雅文 院長の独自取材記事
てんた内科クリニック
(広島市佐伯区/楽々園駅)
最終更新日:2026/01/06
市街地の中に開院した「てんた内科クリニック」。白とベージュを基調にした明るくやわらかな印象の院内には花が飾られ、心地良い雰囲気が広がる。院長の天田(てんた)雅文先生は、岡山大学医学部を卒業後、岡山市・福山市で内科・糖尿病・内分泌領域を中心に経験を重ねてきた。物腰はやわらかく、患者の話にしっかり耳を傾ける誠実な人柄が印象的だ。地域には糖尿病を専門とするクリニックがまだ多くないことから、「困ったときにまず相談できる場」をつくりたいと開業を決意したという。配色や空間づくりには医療職の経験を持つ妻の視点も取り入れ、訪れる人の緊張を和らげる工夫が施されている。地域のニーズに応えながら、長く伴走できる医療をめざす天田先生に、診療の際に心がけていることや検査のついてのこだわりなどを聞いた。
(取材日2025年11月26日)
「地域のかかりつけ」として、小さな不安も拾い上げる
まずは先生のご出身と開業の経緯を教えてください。

私は広島の廿日市の出身で、幼少期は佐伯区薬師が丘で過ごしました。高校は広島学院高校、大学から岡山に進んで岡山大学で学び、その後は福山・岡山地区で勤務を続けてきました。40歳を超えた頃から「医師としてのキャリアも後半に入ってきたな」と感じるようになり、もともと志していた「かかりつけ医として診療する」という形を実現したいという思いが強くなり、開業を決意しました。
この地域で開業を決めた理由と、どのような患者さんが多く来院されているかを教えてください。
廿日市の東部方面を含め、この周辺は糖尿病を専門的に診るクリニックが多くない地域でした。そういったニーズもあり、この場所を選びました。当院は新しい土地で一から開業したクリニックで、勤務医時代の患者さんを引き継いだわけではありませんが、「近くに糖尿病のクリニックがなかったので助かります」とおっしゃる方もいて、徐々に受診される方が増えてきています。来院されるのは糖尿病・高血圧症・脂質異常症・甲状腺など、生活習慣病の方が中心です。風邪などの一般的な内科症状にも対応していますが、やはり糖尿病診療を軸に相談に来られる方が多いですね。午後しか来られない会社員の方も来られることがあり、地域の働き方にも合った受診動機があると感じています。
院内のデザインや設備でこだわられた点についてお聞かせください。

私が全部決めてしまうと、どうしてもダークな色合いになってしまうんです。そこで配色や内装の雰囲気づくりは妻にほぼ任せました。妻はもともと歯科医師をしていたのですが、今は家庭に入ってサポートしてくれていて、今回のクリニックづくりにも関わってくれました。設計や動線はクリニック設計に慣れた会社さんにお願いし、その上で内装や装飾の最終的な色味や雰囲気を妻が調整してくれました。結果として、白やベージュを基調にした明るい空間になり、花を飾るなどやわらかく清潔感のある雰囲気に仕上がったと思います。患者さんにとって過ごしやすく、居心地の良い空間を意識して整えた点がこだわりですね。
検査の負担を減らし、患者に寄り添う安心の診療体制
御院の検査体制について、注力していることや特徴を教えてください。

私自身、地域のクリニックを受診するときに「結果を聞くためにもう一度来院しなければいけない」という点を負担に感じた経験があります。特に働き盛りの世代の方にとっては、採血をして「では後日、結果を聞きに来てください」となると通院のハードルが非常に高くなってしまいます。そこで当院では、一般的な糖尿病の数値やコレステロール、肝機能・腎機能といった項目については院内で検査を行い、基本的に当日に結果をお伝えできる体制にしています。外注検査ですと1ヵ月前の採血結果を見て薬を調整せざるを得ないケースもありますが、私はできる限り新しい結果をもとに治療方針を決めたいと考えています。そのためにも、院内で完結できる検査項目をしっかり整え、結果を聞くためだけの再受診が生じないように工夫しています。
チーム医療の体制やスタッフの役割についてはいかがですか?
当院には管理栄養士・看護師・臨床検査技師が在籍しており、それぞれの専門性を生かしながら分業体制をとっています。血液検査機器を多数導入しているため、検査機器の管理や運用は臨床検査技師に集中的にお願いし、私は診察に集中できるようにしています。また、管理栄養士には食事面の指導を、看護師には患者さんの生活背景の聞き取りを担ってもらうなど、生活習慣病に必要なサポートをチームで行っています。生活習慣病は医師1人ではどうにもできない病気ですので、医師が取りまとめ役として環境を整えつつ、スタッフ全員が働きやすい土台をつくることを特に大切にしています。
診療で大切にされていることや、患者さんと向き合う際の姿勢を教えてください。

初めて受診される方は、多くの場合大きな決心をして来られています。専門家の目から見て、検査値が医学的に大きな異常ではない場合でも、患者さんご自身にとっては大ごとです。そのため、まずは「よく来てくださいましたね」と、お伝えするところから始めるようにしています。また、「こんなこと相談していいのかな」と迷われる方も多く、眼科など他科の領域と思われるケースでも、丁寧に説明した上で適切な医療機関へ矢印を向ける役割を担うことも大事にしています。発熱や咳といった一般的な症状にも対応しつつ、「これはCTが必要だな」と判断すれば近隣の医療機関へご紹介し、自分一人で抱え込まないよう心がけています。患者さんの背景や働き方はさまざまですが、過度に踏み込みすぎず、その中でもできる範囲で丁寧に耳を傾け、長く伴走できる関係をつくることを診療の軸にしています。
働き盛りの世代のための、当日に結果がわかる検査体制
糖尿病・生活習慣病の治療で、特に重視している点を教えてください。

糖尿病や生活習慣病は本当に幅が広く、食事療法だけで経過を見られる方から、薬が必要な方までさまざまです。特に2型糖尿病では、薬剤の種類が増えている分「どの段階で、どの薬を提案するか」が非常に重要で、ここは専門性が問われる部分だと思っています。1型糖尿病に対してはインスリンポンプ治療という選択肢もありますが、基本的には大きな病院でしか扱えないことが多いのが現状です。若い世代の方も多く、平日は仕事の都合で受診が難しいという声もよく聞きます。そこで、当院では土曜日も診療することで、土曜しか来られないけれど専門的な治療を望む方にも対応できる体制を整えました。治療の選択肢は以前より大きく広がっていますので、その中から最適な方法を一緒に見つけていきたいと考えています。
お薬の説明で工夫している点や、治療継続を支えるために心がけていることはありますか?
よくわからないまま服薬を続けるのはつらいという声はよく耳にしますので、同意をいただき、納得した上で治療を進めてもらえるよう、なるべく丁寧に説明します。副作用のことや低血糖のリスクなど、糖尿病治療薬ならではの注意点もあるため、重要なポイントは紙に書きながらお話しするようにしています。「なぜこの薬を飲むのか」という仕組みから説明することで、続けようという気持ちにつながる方も多いですね。また、治療を続ける中で、どうしても薬をやめたくなる瞬間が訪れることもあります。自己判断で通院を中断してしまうと、戻ってこられた時に状態が大きく悪化していることも少なくありません。「やめてしまっても、また相談に来てくださいね」というスタンスで、長く伴走していくことを大切にしています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

糖尿病治療は新しい薬や治療法が次々と出てきますので、知識をアップデートし続けることが欠かせません。適切な治療を提供し続けるためにも、積極的に学びの時間を確保していきたいと思います。スタッフについては、将来的に糖尿病に関する専門性を深めてもらえるような体制づくりを進めたいと考えています。地域に根づき、「糖尿病で困ったらここに相談しよう」と思っていただけるクリニックをめざして、私自身もスタッフも一緒に成長していければと思っています。初めて血糖値の異常を指摘された方や一度治療を中断してしまった方でも、気負わずに受診していただける場所でありたいですね。背景や生活スタイルは人それぞれですので、無理に踏み込みすぎず、できる範囲で丁寧に耳を傾けながら、長く一緒に治療に取り組んでいければと思っています。

