長引く咳の受診目安は2週間続いたら
痰が絡む咳も一度検査を
用賀けやき内科 呼吸器内科・アレルギー科
(世田谷区/用賀駅)
最終更新日:2025/10/09
- 保険診療
長引く咳の中には呼吸器疾患が隠れていることがある。特に多いのは咳喘息というゼーゼーやヒューヒューという喘鳴(ぜんめい)がなく続く咳だが、そのまま放置すると気道が狭くなり、呼吸困難などを伴う気管支喘息に進行してしまうことも。とはいっても、熱などがなければ受診をためらってしまう人も少なくないだろう。そこで、長年大学病院や市中病院で診療を行ってきた呼吸疾患の専門家である「用賀けやき内科 呼吸器内科・アレルギー科」の藤原赤人院長に、受診目安となる期間や症状を聞いた。実際、長引く咳を主訴に、呼吸器内科にかかったときに受ける検査や治療のことも詳しく教えてもらった。
(取材日2025年9月25日)
目次
長引く咳は喘息だけでなく、後鼻漏や逆流性食道炎、咳過敏症候群の可能性も。診査診断で適切な治療を
- Q長引く咳には、どのような疾患が隠れている可能性がありますか?
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A
▲日本呼吸器学会呼吸器専門医など複数の専門医資格を持つ藤原院長
頻度が多いものは咳喘息、アトピー咳嗽(がいそう)というアレルギーの炎症によって起こる咳です。3週間以上続く咳の半数ほどが咳喘息と診断され、そのうち3割くらいが気管支喘息に進行します。ほかに、アレルギー性鼻炎や慢性の副鼻腔炎で、鼻水が喉のほうに流れてしまって起こる後鼻漏が原因の咳や、逆流性食道炎を原因とした咳などが挙げられます。加えて、それらの治療をしても咳が長引いてしまう場合、咳過敏症候群という病気も考えられます。文字どおり気道が過敏になって普通は咳が起こらないほどの刺激で咳が出てしまう病気で、一般的な薬では改善が見込めず、神経を抑えるための薬を用いた専門的な治療が必要です。
- Qどのくらい咳が続いたら医療機関を受診すべきでしょうか?
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A
▲咳が長引く際は、早めの受診を
1週間たった時点で咳が治まる気配がないようでしたら受診を検討してください。2週間続くときは何かしら原因があるのでぜひかかってください。一度受診して風邪と診断された場合も、2週間咳が続いたら受診のタイミングだと考えたほうがいいでしょう。特に痰が絡んだ咳の場合、咳喘息から気管支喘息に移行している可能性があります。また、肺炎や感染症、気管支炎、がんや結核などの病気も痰の分泌が増えますので、痰がらみの咳が2週間たっても治まらなければ必ず受診していただきたいです。同時に、夜間と早朝に咳が出るなど、時間帯によって症状に変動がある場合も何か原因がある可能性が高いため、一度検査を受けたほうがいいでしょう。
- Qどのような検査を行いますか?
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A
▲呼吸機能を評価するための肺機能検査にも対応する
まずはエックス線検査を行います。症状として咳が現れる病気の中で特に怖い結核や肺炎などをエックス線検査によって精査し、疑われる場合はCTなどで確定診断に進みます。次に、喘息の咳かどうかを評価するための肺機能検査と呼気一酸化窒素濃度測定を行います。肺機能検査は目いっぱい吸って吐くという動作で、吐く量とスピードを測定。喘息だとその量とスピードが落ちるので、平均的な数値と比べて診断します。呼気一酸化窒素濃度測定では気道の炎症の具合を測ります。それらの検査とともに大事なのは聴診器を当てて呼吸音を拾うことです。エックス線検査より先に肺の病気に気づけることもあり、聴診器は侮れません。
- Q喘息の治療についても教えてください。
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A
▲不安要素をできる限り緩和するための工夫をしている
喘息は気管支の病気なので、気管支の炎症を抑えるステロイド剤が入った吸入薬による治療が中心です。これにより咳や痰の排出の抑制をめざします。同時に、気道を開通させて呼吸困難の軽減を図る気管支拡張薬も併用します。今はステロイド剤と気管支拡張薬が1つになった合剤もあります。治療は咳喘息で3ヵ月ほど、気管支喘息で数年かかる場合がありますので、合剤なども含めて続けやすい方法を提案したいと思っています。咳喘息も気管支喘息も基本的にアレルギーの炎症が原因となりますので、飲み薬のアレルギー薬も処方します。また、咳は疲れやストレスが原因になっていることもあるため、無理のない生活をするようにというお話もしています。
- Q治療を進める上で、大切にしていることを教えてください。
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A
▲診療では、心身の些細な悩みに親身に耳を傾ける
呼吸器疾患には気管支喘息をはじめ、治療が長期にわたる病気もあります。そうした長期的な治療を行う際に、ただ「これをやっていれば大丈夫だから」と言われても、納得できず不安を抱えたまま治療を続けなければならず、継続する意欲もなくなってしまうのではないでしょうか。ですので、定期的に検査を受けていただいて、今の状況や目標を提示し、続けるモチベーションとなる根拠を伝えるようにしています。処方する薬も毎回同じものではなく、改善傾向にある場合は容量を減らしたり、別の薬にしたりと、患者さんごとのオーダーメイドの治療の提供にも努めています。何より患者さんが治療を継続できることが大事ですから。

