松浦 孝紀 院長の独自取材記事
まつうら整形外科スポーツ・リハビリクリニック
(尼崎市/尼崎駅)
最終更新日:2025/10/06

尼崎駅から徒歩8分、目の前の公園の緑が印象的な「まつうら整形外科スポーツ・リハビリクリニック」。松浦孝紀院長が、整形外科医として19年研鑽を積んだ後、2025年に開業したクリニックだ。「痛みという結果だけでなく、その原因を追究することが大切」と語る松浦院長は、痛みの根本原因を全身で考える診療スタンスを貫く。大学院で痛みの脳内メカニズムを研究し、カナダ留学も経験。診察室のドアにある「ほかにもお聞きしたいことはありませんか?」というメッセージには、患者への敬意と不安軽減を大切にする姿勢が表れている。動作を評価するシステムを導入し、予防から治療まで幅広く対応。痛みのプロフェッショナルとして地域医療に取り組む松浦院長に、診療への思いを聞いた。
(取材日2025年9月10日)
痛みの根本原因を全身で考える診療
開業に至った経緯と、この地を選んだ理由を教えてください。

病院で整形外科疾患の手術に数多く携わる中で、「なぜこの人がこの手術をしなければいけなくなったんだろう」という疑問が湧いてきたんです。新型コロナウイルス感染拡大による影響に関する研究では、運動不足により筋力が低下した患者さんは手術成績も悪くなることがわかりました。手術する・しないに関わらず、いい状態を保つことは患者さんがより良い生活を送ることにつながる。そう確信し、予防やリハビリテーションを地域医療で実践するため、開業を決意しました。JRの尼崎駅周辺は新しい街で、目の前に大きな公園があることに惹かれました。公園で運動する人を眺めながら、「しっかり歩いて体を動かす」ことを意識してもらえる。まさに私のコンセプトにぴったりの立地でした。
「痛み」に興味を持ったきっかけは何ですか?
勤務医時代に担当した関節リウマチの患者さんで、炎症反応は少ないのに痛みが続く方がいました。「気にしすぎ、神経質」で終わらせていいのかと疑問に思ったのがきっかけです。また、椎間板ヘルニアの痛みで苦しんでいる方は多いですが、思いきって手術を受けても再発するリスクは残ります。患者さんにとって手術は負担が大きいものですから、手術をしなくても痛みをコントロールできるようになれば、患者さんの不利益を減らせるのではないかと思うように。そこで大学院で生理学を学び、痛みの脳内メカニズムを研究しました。現在は産業医科大学の学長を務めておられる上田陽一先生の指導を受けながら痛みの根本原因を追究に取り組みました。上田先生の指導は熱心かつ的確で、論文を書く機会にも恵まれ、多くの知識を得ることができました。整形外科は運動器の痛みを診るのが根本であり、その原点を大切にしたいと思っています。
院内の雰囲気づくりでこだわった点は?

木目を基調とした清潔感とぬくもりのある空間を意識しました。医療機関というより、カフェのようなくつろげる雰囲気にしたかったんです。「整形外科に行くほどでもないけど」という方にも気軽に足を運んでいただきたいですね。待合室の窓際にはカウンタータイプのシートを設置。目の前の公園を眺められるようにしました。学生さんには勉強しながら待ってもらえます。実は、ロゴマークにもこだわりがあります。骨と筋肉、痛みをイメージした脊髄、勉強を表す本、そして私の名前から松の盆栽を入れました。勤務していたカナダのトロント大学とイギリスのエディンバラ大学のエンブレムをヒントにしており、わかる人にはわかるかもしれません(笑)。
先進の設備を駆使して、痛みの原因を追究
診療では動作評価を活用されているそうですが、これはどのようなものですか?

柔軟性、体幹の維持、動作の質を評価するシステムになります。腰痛の人は腰だけの問題ではない場合があります。股関節の手術をした人が腰を悪くすることも多く、1ヵ所だけ見ても良くならないんです。例えば前屈したとき、胸は動くけど腰がまったく動かない人がいます。1ヵ所に負担がかかると、そこがすべり症になったり変形したりしてしまいますが、スムーズに全体が動けば負担は分散されます。私たちは変形という結果しか見ていませんが、実はその原因は以前から始まっているんですね。全身を評価することで、その人の10年後、20年後をより良いものにできたらと考えています。スポーツだけでなく、日常生活も一種のスポーツだと考えています。
検査機器も充実していますね。
長尺エックス線撮影装置は絶対に入れたかった設備です。膝が痛いという訴えの場合、膝だけを撮影する先生は多いですが、実は股関節が原因ということもあります。1回の撮影で全身を撮ることで、側湾症の角度も精密に把握できます。骨と筋肉、どちらの異常なのかを判別する際にも役立ちます。あとは骨粗しょう症の診療にはDEXA法の骨密度測定器を使っています、超音波検査機は、カラードプラで血流を見ることで炎症の有無がわかります。可視化は診療において重要なポイントで「ここに炎症があるから痛い」と画像で示すことで患者さんの理解を深めることにつながります。
患者さんと接する際に心がけていることは?

まず患者さんに敬意を持って接することです。そして、親しみやすくなんでも話してもらえる環境づくりを心がけています。診察室を出る時に思い出したことを聞いてもらえるように、ドアに「ほかにもお聞きしたいことはありませんか?」と書いているのもその一環です。不安は痛みを助長するので、不安を軽減することを大切にしていますね。「変形しているから治りません」で終わらせず、筋力をつけることや炎症を抑えることで痛みを減らせることを伝えるなど、あらゆる可能性を提示したいと思っています。慢性痛でうつ気味になっている方には、今できることを具体的にお話しして、認知行動療法的なアプローチも取り入れています。
未来を見据え、地域の人たちの健康意識を高めたい
スタッフとの連携で大切にしていることは?

開業初日に「ワンチームでやりたい」とスタッフに伝えました。リハビリスタッフも受付業務を経験してもらい、受付スタッフもリハビリ室に入ってもらう。小さい施設だからこそ、クリニック全体で何をしているかわかってもらうことが重要です。私は全体のことは把握しますが、各スタッフの専門性を尊重します。専門性を高め合うことでクリニック全体がより良い状態になると考えています。毎朝「何か気になることはないですか?」と声をかけ、出た意見には真摯に向き合い、コストのかからないことはすぐ改善するという方針です。まだ開業したばかりなので、さまざまなことに柔軟に対応していきたいと考えています。今後、当院のコンセプトに共感してくれる理学療法士を増員し、さらに体制を充実させる予定です。
今後の展望と地域医療への思いを聞かせてください。
地域の皆さんの生活習慣を見直すことで、健康寿命を延ばすサポートをしたいですね。高齢の患者さんであれば、「ずっと自分の足で歩きたい」という願いをかなえ、若い方ならスポーツできる体づくりをしっかり学んでもらいます。肩をしっかり振って歩くだけで胸郭が動き、体全体の動きが改善します。医師の言葉は意外と皆さん信じてくれるので、効率良くできる体操を診察の中で実際にやってもらっています。パンフレットを渡すだけでなく、5分の体操でも正しい体の動かし方をレクチャーさせていただきます。10年後、20年後に健康志向の人が増えて、関節の変形症を予防できたらいいですね。今後、市民講演などでそういう機会が持てるなら、どこへでも行きたいと思っています。
読者へのメッセージをお願いします。

生活の中で体を使うことは避けられませんから、体のお手入れやメンテナンスをすることはとても重要です。「痛みはあるが整形外科に行くほどではない」という方も多いと思いますが、そういう方にこそ来ていただきたいです。最近は、当院のホームページを見て予防目的で来られる方も増えています。診察では体の動かし方のアドバイスをして様子を見ることもあるので、必ずしも皆さんに薬を出すわけではありません。当院では、全身の動作を評価するシステムを活用し、全身を診るコンセプトで、腰痛、肩凝り、膝、足首の痛みなど、あらゆる症状に対応します。痛みをずっと抱えている必要はありません。体のチェックだけでも構いませんので、気軽に相談に来ていただければと思います。