成川 研介 院長の独自取材記事
吉祥寺なるかわファミリークリニック
(武蔵野市/吉祥寺駅)
最終更新日:2025/10/02
吉祥寺サンロード商店街の中にある「吉祥寺なるかわファミリークリニック」。成川研介院長は祖父が広島で原爆により病院を失った経験から、白血病治療を志して東京大学で研究に従事。東日本大震災で目の前の患者を助けられない無力感を感じ、臨床医への転向を決意した。武蔵野赤十字病院の救急科外来で軽症患者が9割を占める現状を見て、土日診療と即日検査で地域医療を支えるクリニックを開業。「大人も子どもも遠慮なく来てください」と語る成川院長に、家族まとめて診察できる新しい診療スタイルや、インターネットを活用した現代的な医療について聞いた。
(取材日2025年8月27日)
研究から臨床へ、そして地域医療への転身
医師を志したきっかけと、その後の経歴について教えてください。

祖父が広島で1910年に設立した病院を経営していましたが、原爆で完全に破壊され一族のほとんどが亡くなりました。高校時代、広島の平和記念公園にある折り鶴を掲げた少女のブロンズ像を見て、白血病で亡くなった女の子がモデルになっていることを知り、それがきっかけで治らない白血病を治す治療法を開発したいと思い、東京大学の血液内科に入局し基礎研究を始めました。そんな中、東日本大震災が起き、研究者として何もできない歯がゆさを感じました。研究は遺伝子の一部分を扱う狭い世界。新薬は簡単に開発できるものではないと思い知らされ、まずは目の前の人を助ける臨床医をめざすことに決めました。
なぜ血液内科から総合診療、そして開業の道を選んだのですか?
臨床医として幅広く診療をしたいという思いから、武蔵野赤十字病院の総合診療部門に戻りました。しかし、大きな病院では内科の狭い分野しか担当できず、診療の幅に限界を感じるようになりました。医師を志した当初は、白血病の子どもを治したいという想いから小児科をめざしていたこともあり、「子どもも診たい」という気持ちはずっと心の中にありました。新米医師時代の救急科外来や、東京大学での小児骨髄移植のカンファレンスなど、これまでのキャリアの中でも子どもを診る機会は少なくありませんでした。また、自分自身が2人の娘の父親になったことで、子どもと接する喜びをより深く感じられるようになり、「自分が本当にやりたい医療を実現するには、開業するしかない」と考え、念願だった“子どもも大人も診ることができるクリニック”をつくる決意をしました。
吉祥寺サンロード商店街という立地を選んだ理由は?

私は吉祥寺で生まれ育ち、この町が本当に大好きなんです。一時期は本郷に住んでいたこともありましたが、やっぱり吉祥寺がいいなと思い、戻ってきました。この商店街は、親子連れやお年寄り、会社勤めの方など、幅広い年代の人たちが行き交う場所です。夜遅くまで明るいアーケード街で、雨の日でも駅からぬれずに来られる場所です。仕事帰りのお母さんが、夜6〜7時に子どもを連れて来ても、暗い時間帯でも安心して受診できる環境が整っています。地域の皆さんの生活に寄り添い、少しでも貢献したいという思いも、ここでクリニックを開く大きな理由の一つでした。
家族まとめて診察できる新しいスタイル
院内設備で特にこだわった点を教えてください。

武蔵野赤十字病院の救急科外来で行っていた検査項目を、クリニックでも同等に受けられるよう設備を整えました。採血は15分以内に結果が出るため、入院が必要かどうか、またどの診療科に紹介すべきかをその場で判断できます。新型コロナウイルスやインフルエンザの検査も、かかったその日のうちに検査できる精度の高いもので、約15分ほどで結果が出ます。さらに、はやり目(流行性角結膜炎)の原因となるアデノウイルスの検査も可能です。今後は、百日咳やマイコプラズマ肺炎など、通常の診断が難しい咳の原因を特定できるPCR検査装置の導入も予定しています。当院が土日診療をすることで、少しでも近くの大学病院の救急科外来に患者を集中させず、本当に必要な方が行けるよう充実した検査設備を整えましたので、待ち時間にも配慮しながらその日のうちに診断の白黒がはっきりし、安心して帰っていただけるのが、当クリニックの大きな特徴です。
小児科と内科を両方診療することのメリットは何ですか?
子どもが風邪をひくと家族全員にうつってしまうこともありますよね。でも、小児科と内科を別々に受診すると、病院だけで一日が終わってしまうこともあるかと思います。当院では、家族4人が一緒に入れる診察室を設け、くつろぎながら診察を受けられるようソファーも設置し環境を整えました。家族みんなで診察から処方までできるので、時間も手間もぐっと減らせるようにしました。また、子どもの頃からの病気で、大人になっても小児科に通い続けるケースが多いと小児科学会でも問題視されていますが、当院は小児科から内科への移行もスムーズにできるよう、同じ医師がかかりつけとして診続けることができるので、安心して治療を続けられると思います。
診療で心がけていることや、工夫していることは?

当院では、患者さんが気軽に話せるよう、幅広く質問しながら診察を進めています。希望を伺いながら、必要な検査や薬を提案するスタンスです。待ち時間のストレスを減らすため番号呼び出しシステムを導入し、順番が近づくとSNSで通知が届くので、周辺のお店や自宅など好きな場所で待機できます。診察中の方とはじっくり向き合いながら、他の方の時間も有効に使える仕組みです。診察では55インチのモニターを使い、画像や処方箋の情報など一緒に見てもらいながらわかりやすく説明します。例えば手足口病が心配な方には、実際の画像を検索して「これが手足口病ですね」とお見せすると「あ、違うね」とすぐに納得していただいたり。親御さんがインターネットで調べてきた情報も否定せず、一緒に確認することで、安心して話せる関係を築いていきたいと思います。ネットを診療に活用することで、医師とのコミュニケーションの垣根が低くなったらうれしいですね。
吉祥寺の健康を支える総合カウンセラーとして
スタッフとの連携で大切にしていることは?

当院の看護師は、武蔵野赤十字病院、榊原記念病院、東京大学医学部附属病院などで経験を積んだ方々が、友人の紹介などを通じて自発的に集まってくれました。皆さん非常に頼もしく、自分の役割を自主的に見つけて動いてくれるので、私は邪魔をしないことを心がけています(笑)。院長として責任を持ち、方向性は示しますが、現場には余計な口出しをしない方針です。また、受付には医療事務経験者ではなく、あえて一般の接客経験者を採用しました。医療に慣れすぎることで態度が硬くなってしまうのを避け、患者さんを心から大切にしてくれる方に来てもらっています。それぞれの個性や経験を生かすことで、ここにしかないクリニックができたと感じています。
武蔵野赤十字病院での経験が開業にどう生かされていますか?
救急科外来では、土日の一晩だけでも数多くの患者さんを診ていましたが、実はその9割が軽症の方でした。昼間は仕事で病院に行けず、夜間や休日に受診されるケースが多かったんです。こうした背景から、土日や夜間に開いているクリニックが地域にあれば、大規模病院への患者集中を防ぐことができます。特に吉祥寺では病院が減り医療資源が手薄になっているため、軽症の方をクリニックで診て、本当に必要な方だけを大きな病院に送ることで地域全体の医療の質を高められると考えています。また、健康の総合カウンセラーとして、「何科に行けばいいかわからない」といった相談も受けますので、適切な医療機関をご案内する役割も担いたいと思っています。軽症の9割を診られるクリニックをつくることが、地域医療への大きな貢献になると信じています。
読者へのメッセージをお願いします。

当院は土日も診療を行っており、すぐに結果がわかる検査設備も整えています。お子さんから大人の方まで、どなたでも気軽にご来院ください。当院で対応が難しい場合は、適切な大規模病院をご紹介しますし、対応できることは最後までしっかり寄り添っていきます。かかりつけ医として、いつでも相談できる存在でありたいと思っています。エレベーターが少し狭くて驚かれるかもしれませんが、4階まで上がっていただくと、温かく落ち着いた空間が広がっています。私自身も子育て中の親として、子どもに関する悩みや不安には共感できますし、患者さんの目線を大切にした診療を心がけています。どうぞご家族そろって、安心してご受診ください。

