武藤 由也 院長の独自取材記事
ひとやすみこころのクリニック 西新院
(福岡市早良区/西新駅)
最終更新日:2025/10/15
2025年7月に開院した「ひとやすみこころのクリニック 西新院」。院長を務めるのは、爽やかな笑顔が印象的な武藤由也先生。若手ながら大学病院をはじめ数々の病院で経験を積み、日々クリニックで診療を行う傍ら、空いた時間には勉強会に参加するなど、症例研究にも余念がない。そんなパワフルな行動の根底にあるのは、「患者さん一人ひとりと向き合い、人生を支えたい」という思い。学生にとってはなんでも相談できる兄のような存在であり、働く世代にとっては頼れる心のパートナー的存在だ。「学校や職場、家庭で忙しい毎日を送る中、不安になったり生きづらさを感じたりすることは誰にでも起こること。こんなこと相談していいのかなと迷うことでも、気軽に相談に来ていただきたいです」と語る武藤院長に、クリニックや患者への思いを聞いてみた。
(取材日2025年8月22日)
働く世代や学生の「心が一休みできる場所」に
姪浜院に続き、新たに西新院を開院された経緯を教えてください。

母体となる「ひとやすみこころのクリニック 姪浜院」が開院して4年。おかげさまで既存の患者さん、新規の患者さんともに増え、予約がいっぱいの状況が続いていることから、2025年7月に2院目となる西新院を開院しました。姪浜院はこれまでどおり、患者さんやご家族との信頼を大切にしつつ、西新院はより多くの方に知っていただき、新規の患者さんを増やしていくことに取り組んでいます。開院から1ヵ月が過ぎ、姪浜院から紹介されて来られる方や新規の患者さんも、少しずつ増えてきています。姪浜院は老若男女、幅広い層にご利用いただいていますが、西新院は場所柄、子育て世帯や働き盛りの世代、高校生・大学生という比較的若い層が多い印象です。地域に学校が多い文教地区ということもあり、学生さんご本人だけでなく、保護者からの相談も多くいただいているところです。
クリニックの理念についてお聞かせください。
現代社会は高ストレス・情報過多の社会です。その中で多くの方が忙しい毎日を送り、休むことや自分を見つめ直すこと、心を整える時間が取れない厳しい環境にあると感じています。そうした方々にとって、気軽に相談できる場所、心のケアができる場所でありたい。そして「ひとやすみできる場所」としてお役に立ちたい。そんな思いから「ひとやすみこころのクリニック」と名づけられています。クリニックに入った瞬間から、ほっと安心していただけるよう、ゆったりとした待合室を設け、木目のぬくもりや明るく温かな色合いで院内をデザインしています。
診療内容について、具体的に教えてください。

働く世代や学生さんのうつ病を中心に診療しています。最近は発達障害の相談も増えており、その対応にも力を入れています。治療の選択肢としては、薬物療法、精神療法、環境調整があります。そのほか心理士によるカウンセリング、このあたりでは珍しいTMS(磁気刺激装置)の導入もしています。また当院には私を含め3人の医師が在籍。いずれも多様な症例に対応してきた経験豊富な医師ですが、患者さんにとって相性もあるでしょうし、一度かかっていた先生でも思うように話せない時もあるでしょう。そうした場合は、別の医師に変更できる体制を整えています。
多様な治療法があるようですが、治療法にも相性があるのでしょうか。
そうですね。治療法にも相性がありますので、問診やカウンセリングを通してその患者さんに適した方法を見極め、その上で治療を進めます。治療法はさまざまありますが、私は特にTMS治療に注目していますね。この治療法は、一般的なクリニックではまだまだ浸透していないのが現状ですが、できる限り早いうつ病からの回復を望む方や薬の副作用に悩む方への新たな治療法の選択肢になることが期待できると考えています。
心のケアは百人百様。「オーダーメイドの治療」
治療には漢方も取り入れているそうですね。

現代のうつ病は、重症で外に出られない方よりも、「なんとなく気分がすぐれない」「仕事の効率が落ちている」「気力が湧かない」といった軽症の方が多い印象です。気分がふさぐ、眠れない、不安感が強いといったようなケースでは、漢方が非常に有用で、副作用も少ないため、安心して飲んでいただけるのではと考え、積極的に取り入れています。
発達障害の患者さんには、どんな診療やケアを行っていますか?
「会社や学校の中でうまく立ち回れない」「日常生活の中で片づけられない」「人の話がなかなか覚えられない」といった苦労や悩みを抱え、当院に来られる方が増えています。発達障害と診断がはっきりすることで「原因がわかって安心した」とほっとされる方もいらっしゃるのではないかと思います。病気とは異なりますが、ともすると社会から疎外感を抱いてしまうこともあるため、対応の仕方や生活上の工夫をアドバイスするほか、場合によっては会社や学校への診断書の提出、ご本人を通じて助言を行うこともあります。近年は社会参画や障害者雇用の流れもあり、認知や理解が広がっています。困っている方がようやく相談できる時代になってきたと感じています。発達障害だとわかった方たちに「生きやすくなった」「周囲も助かった」という声をいただけるように、しっかりサポートしていきたいです。
患者さんと接する上で大切にされていることは何ですか?

初めて心療内科を訪れるのは、大きな勇気がいること。だからこそ、その勇気を出して来院してくださった患者さんを、温かくお迎えすることを大切にしています。そして、お話を丁寧に伺い、これからの人生や生活をどうしていきたいかを共有しながら、そのためにどんなサポートができるかを一緒に考えます。治療方法や薬の処方も一方的に決めるのではなく、希望を踏まえ、患者さんと話し合いながら治療方針を決めていく。患者さん一人ひとりに合わせた「オーダーメイドの治療」を心がけています。この思いや姿勢は、スタッフにも常に伝え、チーム全体で患者さんに寄り添うことを大切にしています。「電話の対応ですごく安心できたので、クリニックに足を運んでみようと思いました」と言われた時はうれしかったですね。
不安や悩みは、些細なことでも気軽に相談を
先生が医師をめざしたきっかけや、精神科を選ばれた理由を教えてください。

父や親戚が内科医師だったこともあり、自然と医師をめざしていた、というのが正直なところです。とはいえ、自分自身も高校や大学の頃、この先どうしようかと悩み、気持ちが沈んでいた時期がありました。誰にでもあることかもしれませんが、精神科を選んだ背景にはこの経験があると思います。医学部に進学し、さまざまな科の実習を受ける中で、内科や外科で臓器の治療を学びましたが、「これで終わりなのか?」と物足りなさを感じてしまいました。そんな時に精神科の診療に参加し、心を救うことで人生を新たに進めるようになるという場面に出合いました。「こんな救い方があるのか」「人生の質まで変えられるのか」と感銘を受け、大きなやりがいを感じて精神科医を志しました。
患者さんとのやりとりでうれしかったことや、ご自身のプライベートについてもお聞きかせください。
患者さんが生活や人生を取り戻していく姿を見ることは、とても大きな喜びです。「先生が良かったのでこちらに移りました」と言っていただけたり、ご家族から「本人が以前のように戻った」と感謝の言葉をいただけたりすることも、やりがいにつながります。患者さんご本人、ご家族、学校や職場など周囲の方々にも喜んでいただける。本当にやりがいのある仕事だと感じます。基本的にはインドア派ですが、たまにキャンプに出かけますし、最近はゴルフも再開しました。仕事関連の本を読むのも好きですが、この仕事は人生や趣味と医療が切り離せない部分が多く、患者さんの人生経験や趣味を伺う中で、私自身も共感したり知識を広げたりしています。常に学び続けられる科だと思いますし、「ぜひいろんなことを教えてください」という気持ちで患者さんと向き合っています。
最後に、メッセージをお願いします。

「こんなこと相談していいのかな」と迷うようなことでも、気軽に相談に来ていただきたいです。どうしても心療内科・精神科に行くというと、「医師の治療を受ける」というイメージがあるかもしれませんが、「相談」のつもりで構いません。病気を治すことだけでなく、今の悩みや心の状態を確認するだけでも、お力になれると思います。学生生活、家庭生活、職場の中で困ったときには、ぜひ一度いらしていただければと思います。

