小浪 佑太 院長の独自取材記事
南円山みんなの内科ハートクリニック
(札幌市中央区/西線9条旭山公園通駅)
最終更新日:2025/08/13

2025年6月、札幌市中央区に開院した「南円山みんなの内科ハートクリニック」は、地域のかかりつけ医として、循環器を中心に幅広い内科診療を行うクリニック。小浪佑太院長は、複数の病院で心筋梗塞や心不全などの治療に10年以上携わり、救急現場でも豊富な経験を重ねてきた。そうした中で、予防医療の重要性を実感し、クリニック開業を決意。専任のスタッフによる心臓リハビリテーションにも対応するなど、充実のスタッフ・設備も特徴だ。「家庭医療学」の考えをもとに地域の人々の生活の質を守るべく励む院長に、診療方針やクリニックのかじ取りを担う上での想いについて、詳しく聞いた。
(取材日2025年7月4日)
地域に根差し、幅広く診る「家庭医療学」に惹かれて
循環器内科医の道を選んだ理由をお聞かせください。

高校時代に観たドラマが医師という仕事に興味を持ったきっかけです。私は兵庫県神戸市の出身なのですが、幼い頃に阪神淡路大震災を経験したこともあり、人の役に立つ仕事がしたいという漠然とした思いもありました。循環器内科を選んだのは、研修先の勤医協中央病院で救急対応をしていた循環器の先生方の姿がとても頼もしく、憧れを抱いたからです。例えば心筋梗塞など、一分一秒を争う病気に立ち向かう姿を目の当たりにして、自分もその一員として力になりたいと感じたのを覚えています。
出身地でない北海道で開業した理由を教えていただけますか?
医学生時代に出会った「家庭医療学」の考え方に惹かれ、北海道での研修を選びました。北海道は広大なので、一つの医療機関が担当するエリアも広い分多くの役割を担う必要があり、家庭医療学のような考え方が根づいているように感じたためです。かかりつけ医として長く関わることのできる環境は魅力的ですね。これまで勤務していた病院では、心筋梗塞などを発症してから救急搬送される患者さんを多く診てきました。その中には、生活習慣の改善で防げたのではと見られる方も多く、「もっと早く介入できていれば」と感じる場面も多かったんです。クリニックなら予防に力を入れることができ、発症前の段階から健康を支えることができます。そういったビジョンから、この度の開業に踏み切りました。
「家庭医療学」とは、どういったものなのでしょう。

特定の臓器や疾患に特化せず、あらゆる世代・症状に対応する「かかりつけ医」のための学問です。風邪や高血圧、心の不調、介護や生活習慣の相談まで、幅広く診療し、必要に応じて専門の医師へつなぐ役割も担います。患者さんの背景や家族構成、生活環境なども含めて継続的に関わるのが特徴です。高齢化が進む中で、その重要性は今後ますます高まるでしょう。高齢の患者さんは複数の疾患を抱えている方もいらっしゃいます。かかりつけ医がいることで、疾患ごとに別々の医療機関へ通院し、そのたびに薬を処方してもらうような負担も軽減できます。家庭医療学では、患者さんとの信頼関係がとても重要です。今後の関わりの中で、その信頼を一歩ずつ築いていきたいですね。
日本循環器学会循環器専門医として、心疾患予防に注力
こちらのクリニックの特徴を教えてください。

当院は地域の皆さまが気軽に来られるよう、交通アクセスを重視し、十分な駐車スペースを確保しています。市電の駅やバス停からも近く、通院しやすい立地になっています。クリニックのロゴは親しみやすい象の親子をモチーフにして、受診中に緊張しがちな患者さんの気持ちを和らげられるよう工夫しました。このキャラクターが、札幌市内にある円山動物園の象のように皆さまの心を和ませ、安心感につながるとうれしいです。クリニック内の動線は待合から診察室、リハビリテーション室、処置室までの流れがロの字型になった回遊型にし、スムーズに移動できるようにしました。また同院の大きな特徴として、心臓リハビリテーションのためのリハビリテーション室を備え、専門性の高い医療を提供しています。
心臓リハビリテーションについて、詳しくお聞かせください。
心臓リハビリテーションは、心臓のポンプ機能低下に対して、適切な運動療法を行う治療プログラムです。心臓が弱った方にとって適切な運動はとても大切で、無理なく続けることで再発や入院のリスクを大幅に減らせるという研究結果もある一方で、提供できる医療機関がまだまだ少なく、本来必要とされている方に行き届いていないのが現状です。当院では専用のリハビリテーション室と理学療法士が常駐し、患者さんの状態に合わせて負荷を調整。過度な負担を避けながら、心肺機能の向上をめざします。札幌市中央区でも数少ない、外来で心臓リハビリテーションを行うクリニックとして、患者さんの健康維持に力を入れています。
こちらも、予防的な観点を大切にされていることから導入したのでしょうか?

そうですね。治療に薬は重要ですが、副作用のリスクもあり、運動や栄養といった生活習慣の改善も大切です。当院の心臓リハビリテーションでは、心肺機能が落ちてしまう以前の生活習慣病の段階から、生活習慣や栄養の指導も受けつけ、薬のみに頼らない予防医療を推進しています。さらに、心臓疾患の方は感染症の影響を受けやすいため、発熱の外来を別室に設置しました。発熱や風邪の症状がある方は個室で待機し、私たちスタッフが診察に赴く方式を取っており、院内で各種感染症の検査も行っています。
AI技術も積極的に取り入れられているそうですね。
ウェブ予約と問診システムを導入しています。患者さんは場所や時間帯を問わず予約と問診入力ができ、来院時には手書きの負担がなくなることで、時間短縮とストレス軽減を実現しています。診察時にはAI音声認識で医師の説明や患者さんの訴えをリアルタイムに文字起こしし、電子カルテへ自動で反映。そのため医師の記録負担も減り、患者さんとのコミュニケーションに集中できます。検査機器も充実しており、心電図、エックス線に加え、2週間もの長期間装着が可能なホルター心電図や、自宅で行う睡眠時無呼吸の検査機器も備えています。超音波検査は専門の臨床検査技師が心臓から腹部、血管まで幅広く対応しています。診察室はコンパクトにまとめつつも、処置室やリハビリテーション室を広く確保し、患者さんがストレスなく受診できる環境づくりに配慮しました。
チーム医療の力で、地域を支える環境をつくる
開院から1ヵ月を経た現在の様子はいかがですか?

まず、患者層は若い世代の方が多く、10代から60代まで幅広く来院されていますね。ウェブ予約の利便性もあり、風邪や一般内科の症状で来られる方が目立ちますが、循環器疾患の患者さんも少しずつ増えてきています。そして私は現在、勤医協中央病院の救急科でも週1回勤務を続けており、重症の患者さんへの対応や先端の知識を学び、スキルアップを図っています。各分野の専門家の医師の方たちとディスカッションをして得る学びも多いです。その経験も生かして、幅広い疾患に対応し、重症患者の早期発見や専門機関への迅速な紹介も可能な、安心の医療を提供できるよう、日々励んでいます。
「医師になって良かった」と感じるのは、どのような時ですか?
医療チームのかじ取り役として、多職種の専門家の意見をまとめ、患者さんに最適な治療方針を示せたときです。看護師や管理栄養士、理学療法士、臨床検査技師など皆が力を合わせる中で、うまく連携が取れた瞬間に大きなやりがいを感じますね。その思いからクリニック名は「南円山みんなの内科ハートクリニック」としました。自分一人の名前を冠すのではなく、患者さんやスタッフ、地域の皆さんとともに健康を守る場所でありたいという願いを込めています。開院から1ヵ月、スタッフとともに構想を形にでき、これからも多くの方に安心と元気を届けていきたいと思っています。
今後の目標と、読者へのメッセージをお願いします。

今後の目標は、スタッフ全員が働きやすく、やりがいを持てる環境づくりです。これが結果として医療の質向上につながり、患者さんにより良いケアを提供できると信じています。AIや機械が進化しても、人と人との信頼関係や温かさは代えがたいもの。循環器医として、患者さんの命に直接関わるやりがいを感じながら、どんな症状でも相談しやすい身近なクリニックでありたいと考えています。健康のことであれば些細に思えるようなことでも、ぜひお気軽にご相談ください。スタッフ共々、お一人お一人のご相談にきちんと向き合い、対応してまいります。