阪中 啓吾 院長の独自取材記事
桜上水泌尿器・内科クリニック
(杉並区/桜上水駅)
最終更新日:2025/10/10

甲州街道沿いのメディカルモール1階、シックな内装が印象的な「桜上水泌尿器・内科クリニック」。2025年6月に開業した阪中啓吾院長は、大学病院で手術指導まで担当した日本泌尿器科学会泌尿器科専門医だ。手術を極めた医師が開業を選んだ背景には、勤務医としての「達成感」を感じるようになったという転機があった。そして2人目の子どもの誕生を機に「子どもの成長も見ていきたい」という父親としての決意が後押しした。泌尿器科は「内科と外科が完結できる」魅力的な分野だと語る先生は、40~50代の尿トラブル改善を図り、生活の質向上につなげることに特に力を注ぐ。地域のかかりつけ医として医療機能分担の重要性を説き、専門性の高い診療と傾聴を大切にする姿勢について話を聞いた。
(取材日2025年8月18日)
大学病院から地域医療へ、新たな挑戦の始まり
大学病院から開業医へ転身された経緯を教えてください。

率直に言うと、勤務医としての達成感を感じる機会が増えたことが一番の理由です。次第に「第二の医師人生として次のステップに進みたい」と考えるようになっていきました。そんな時期に2人目の子どもが生まれることになり、家族との時間も大切にしたいと強く思うように。子どもの成長を見逃したくないという思いが日に日に強くなっていきました。いずれは開業をと考えていましたが、家族のタイミングも踏まえて、踏み出すなら今だと決心しました。
桜上水という場所とクリニックのデザインにこだわりはありますか?
以前浜田山に住んでいたこともあり、この辺りが住みやすい住宅街だということは知っていました。東京慈恵会医科大学附属第三病院で働いていた経験もあり、困った時に紹介できる距離感も重要でした。そして広さのバランスも考えて、ここならいけると判断しました。内装は無機質でソリッドな感じにこだわりましたね。自然でナチュラルな感じではなく、シックでかっこいい雰囲気をめざしました。ロゴにも泌尿器科らしさを込めています。腎臓と膀胱、水の流れをデザインに取り入れ、実は前立腺まで入っているんです。当時このメディカルモールは1階が空いていて、立ち寄りやすい場所で内科も併設することにより、「泌尿器科受診への抵抗感をより和らげられるようにしたい」という想いもありました。
実際にはどのような患者さんが来院されていますか?

高齢の方が多いだろうなと思っていたんですが、案外幅広い年齢層の方が来院されていますね。6割くらいは泌尿器科の患者さんで、高齢の方の頻尿や残尿感のご相談が多いです。一方で、膀胱炎の若い女性も多く来院されています。発熱時の外来も行っているので、内科の患者さんも含めると年齢層は本当にさまざまです。小児泌尿器疾患も診察できるようにしていて、成育医療センターで働いていた経験から、停留精巣など検診で引っかかるような疾患の診断も可能です。男性の患者さんが多いのは変わりませんが、女性の方も「泌尿器科」という名前への抵抗を乗り越えて来てくださっているイメージです。住宅街も近いので、地元の方も多く来院されています。
専門性を生かした治療と受診ハードルを下げる工夫も
泌尿器科の特徴について教えてください。

例えば、頻尿に関しては内科や婦人科でも診られていると思いますが、そこで行われる多くのものは対処療法になります。一方、泌尿器科の場合の治療は、頻尿の原因を調べるところからスタートし、その原因の治療を行うことで頻尿の改善を図っていく、根本的な治療のアプローチになります。また、泌尿器科は腎臓から膀胱、前立腺まで扱う臓器が多く、がんも良性疾患も診ます。内視鏡手術も開腹手術も全部泌尿器科で完結することが可能です。泌尿器科は内科的な側面と外科的な側面の両方を持つ。それが魅力でもあります。
40~50代の患者さんへの治療で重視していることは?
40~50代は働き盛りで活動的な世代でもあるので、尿トラブルがあると、日常のさまざまなシーンで気にしながら生活をすることになります。逆に言えば、尿トラブルを改善できれば、生活の質が大きく変わる世代だと思っています。例えば、会議中にトイレを気にしなくて済むようになったり、映画や観劇も楽しめるようになることも期待できます。ただ、この世代は受診への抵抗が強いと感じています。年のせいだと諦めたり、恥ずかしさから来院を躊躇される方が多いです。症状が軽いうちに受診してもらえれば治療もしやすいので、早期の受診も生活の質向上へとつながることを知ってほしいですね。
受診への心理的ハードルを下げるためにしている工夫はありますか?

まず「あなただけではないですよ」とお伝えします。みんな悩んでいるということを知ってもらうだけでも安心できると考えています。また当院で内科も標榜しているのは、泌尿器科という名前への抵抗を和らげる意味もあります。まずは内科の受診をきっかけにして、来院してもらえればなと。診療では、傾聴を大切にしていて、じっくり話を聞くことで患者さんの不安軽減を図ります。また、泌尿器科というと性病のイメージが強いかもしれませんが、実際は尿のトラブル全般を診る科なんだということも知ってほしいですね。
医療機能分担で地域医療の架け橋に
地域のかかりつけ医としてめざしている医療とは?

大学病院にいたからこそわかるのですが、大きい病院は軽症の患者さんで混雑しているのが現状です。大きい病院に行けば安心と思う患者さんの気持ちもわかりますが、それでは大きな病院がパンクしてしまう。私は適材適所、役割分担が大事だと考えています。地域のクリニックで解決できることは地域のクリニックで、手に負えない場合に大きな病院に紹介する。これが本来の医療機能分担だと思います。そこで当院はファーストコンタクトの医療機関として、まず受診してもらえる場所でありたい。泌尿器科だけでなく内科も一緒に診ることで、幅広く地域の方の健康を支えていきたいと思っています。大学病院での経験を生かして、適切な判断と紹介ができることを強みとしています。
検査設備や診療体制の特徴を教えてください。
泌尿器科なので尿検査は必須です。その場ですぐ結果が出せる体制を整えています。膀胱鏡も設置していて、血尿の精査で膀胱がんがあるかどうかの判断もできます。泌尿器科では半数以上が膀胱鏡を置いていると思いますが、クリニックでがんの可能性を判断できれば患者さんも安心につながります。エックス線や超音波もあり、必要な検査は一通りできる体制です。膀胱鏡検査はかなりの件数を対応してきたので、できる限り痛みを抑えて短時間で済ませる技術に自信があります。診療体制については、今の診療を充実させていくことが目標です。新しいことを始めるより、今の患者さんにしっかり向き合っていきたいと考えています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

泌尿器科に抵抗を感じず来てください、というのが一番伝えたいことです。尿トラブルは適切な治療を行うことで、生活の質向上が期待できます。特に40~50代の方は、仕事や日常生活への影響が大きいと思うので、早めの受診をお勧めしたいですね。年のせいだと諦めずに、ちょっと困っているぐらいの時にぜひ来てください。内科の受診でも構いません。皆さんの健康を支えたいという思いで診療していますので、ぜひ気軽にご相談ください。