深刻な状態を招く恐れもある甲状腺の病気
放置せず、早めの受診を
かわばた頭頸部クリニック
(宮崎市/宮崎駅)
最終更新日:2025/09/26


- 保険診療
全身の健康を保つ上でとても重要な役割を果たしている「甲状腺」。甲状腺に異常が起きるとさまざまな症状が現れ、悪化すると命に危険が及ぶ可能性もある。甲状腺の病気は女性に多いのが特徴で、若くして発症することも。また、動悸やだるさなど更年期障害と似た症状が現れるため、「更年期だから」と見過ごされることも少なくない。「甲状腺の病気を疑う症状があるなら、放置せず速やかに治療を行うことが大切です」と語るのは、甲状腺外科を掲げる「かわばた頭頸部クリニック」の川畑隆之院長。勤務医時代に、脳より下で鎖骨より上の部分である「頭頸部」や甲状腺の疾患を中心に豊富な経験を積んだ。そんな川畑院長に、甲状腺の役割、病気の種類や症状、頭頸部を専門とするクリニックならではの検査や治療などについて詳しく聞いた。
(取材日2025年8月28日)
目次
生命維持に欠かせない重要な役割を担う「甲状腺」。甲状腺の病気は、専門家による早めの治療が大切
- Q甲状腺とはどのような臓器ですか?
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A
▲2025年5月に開院した「かわばた頭頸部クリニック」
甲状腺は、喉仏の下に位置するハートのような形をした臓器で、甲状腺ホルモンをつくり分泌しています。甲状腺ホルモンは、血液を通して全身に運ばれ、新陳代謝を促します。また体温や脈拍数、自律神経の調整、エネルギーの調節、成長や発達の促進、脳の働きの維持など、全身の健康に関わるとても重要な役割を担っています。その甲状腺ホルモンの分泌量をコントロールしているのは、脳の底部にある下垂体という器官。血液中の甲状腺ホルモンが不足すると、脳下垂体から甲状腺刺激ホルモンが出て、甲状腺を刺激し、ホルモンの分泌を促します。逆に過剰な場合は、甲状腺刺激ホルモンの分泌が抑制され、甲状腺ホルモンの分泌も減少します。
- Q甲状腺の病気について教えてください。
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A
▲診察室では画像での説明や図を描くなどしてわかりやすいよう説明
甲状腺の病気には、甲状腺ホルモンの異常によるものと、甲状腺に腫瘍ができるものがあります。甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気を「甲状腺機能亢進症」、不足する病気を「甲状腺機能低下症」といい、それぞれ代表的な病気として前者にバセドウ病、後者に橋本病が挙げられます。甲状腺腫瘍には良性と悪性があり、その病態は極めて多彩。このほか、甲状腺疾患は更年期障害と間違われることもあります。甲状腺ホルモンは女性ホルモンと関連しており、更年期に女性ホルモンが低下すると甲状腺機能にも影響が及び、似た症状が現れるからです。妊娠や出産も甲状腺機能に影響を与えるため、甲状腺の病気は女性に多く見られます。
- Qどんな症状があると、甲状腺の病気が疑われますか?
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A
▲患者の気持ちに寄り添って満足してもらえる治療をめざす
首の腫れは、甲状腺の病気全般に共通する一つのサインです。それ以外にも、甲状腺機能が亢進するバセドウ病では、目が前方に出てくる「眼球突出」、動悸や頻脈、体重減少、発汗過多などの症状が見られます。また、甲状腺機能が低下する橋本病を疑う症状は、体のだるさやむくみ、寒気、意欲の低下など。さらに脱毛症状が現れるケースも。甲状腺に腫瘍ができている場合、声のかすれや喉の違和感といった症状が出ることがあります。これら甲状腺の病気を疑われる症状が出ているなら、一度甲状腺疾患を専門とするクリニックで詳しい検査をお受けになることをお勧めします。もし1ヵ月以上症状が続いているようなら、できる限り早く受診してください。
- Qこちらのクリニックでの検査や治療についてお聞かせください。
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A
▲先進の機器を導入し、エコーや内視鏡などを駆使し検査する
甲状腺ホルモンの値を調べる血液検査や甲状腺の大きさを調べるエコー検査を実施します。また甲状腺に腫瘍がある場合、細胞を採取して顕微鏡で調べる細胞診を行います。さらに当院では内視鏡検査機器も導入しており、甲状腺がんが気管や食道に浸潤していないかを院内で調べることも可能です。治療は、お薬による治療が中心。薬で管理するのが難しい場合、甲状腺内科の医師と相談しつつ適切に対応させていただきます。また腫瘍の場合、細胞診に加え、画像検査も行い、総合的に判断した上で基幹病院へと紹介します。3ヵ月に1回ほど、東京のがん研究会有明病院の甲状腺専門の医師による診察も行っていますので、どうぞお気軽にご相談ください。
- Q治療はどのように進めますか? 治療せず放置すると危険ですか?
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A
▲早く診断し、適切な治療に結びつけることを信条としている
当院では、血液検査やエコー検査、細胞診などをし、診断を行った上で、必要に応じて甲状腺内科の医師にも相談しつつ治療を進めます。お薬での治療が可能な場合、院内で対応。例えば、バセドウ病であれば甲状腺機能を抑制するための薬を用い、橋本病なら、人工の甲状腺ホルモン剤を投与してホルモンを補います。手術が必要な場合は迅速に基幹病院に紹介します。甲状腺の病気は、早期発見・治療が重要。甲状腺機能亢進症は心房細動という不整脈を伴うことがあり、心房細動は脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めます。また甲状腺機能低下症が悪化すると心臓の周りに水がたまり、心不全を引き起こすことも。放置せず、速やかに治療を行うことが大切です。