瓜生 久美子 院長の独自取材記事
ふくろうクリニック目白台
(文京区/護国寺駅)
最終更新日:2026/01/15
2025年5月、護国寺駅から徒歩7分の場所に「ふくろうクリニック目白台」が開業した。院長を務めるのは、小児がん診療に長年携わってきた瓜生久美子先生。複数の基幹病院での経験を通して「子どもの病気は、家族まるごとをケアしなければ本当の意味で治せない」という信念を抱くようになったそう。めざすのは、0歳から100歳までを診る「究極のかかりつけ医」。内科、小児科、婦人科、乳腺外科、訪問診療まで幅広い診療科を備え、小児から成人への移行医療にも対応。公認心理師と臨床心理士も在籍しており、小児の発達相談や知能検査も行っている。成長やライフステージの変化に寄り添い、長く通い続けられる医療の提供に努める。「昨日の自分より少しでも成長していたい」とストイックな姿勢を見せる瓜生院長に、地域医療にかける思いを聞いた。
(取材日2025年12月10日)
充実した診療と健診で「究極のかかりつけ医」をめざす
こちらのクリニックの院長になった経緯について教えてください。

東京大学医学部の小児科の教授から「小児科医を探している」と声をかけていただいたのがきっかけです。実はこのエリアは私にとって特別な場所なんです。ピアノの恩師がこの近隣にいたこともあり、小中学生の頃から毎週通っていました。そこから高校時代も、この近隣の高校に通っていました。大人になって、アメリカから帰国後にこのエリアでの開業を考えていたタイミングにお声がかかり、まさに運命的なご縁を感じました。東京大学医学部附属病院の分院の跡地という意味も含め、そんな歴史ある病院の「再来」をめざす診療をここで実現したいと思ったんです。
幅広い年齢の患者さんに対応されているそうですね。
はい。めざしているのは「より総合病院に近いレベルでの外来診療」です。入院ベッドはありませんが、入院直前まで診られる体制を整えました。内科、小児科、婦人科、乳腺外科、在宅医療と幅広く対応し、現在は常勤医師2人、非常勤医師7人の体制で診療しています。内分泌専門の外来では低身長や甲状腺疾患を扱ったり、ほかにも循環器内科、物忘れなど、各分野のスペシャリストがそれぞれ専門に外来を担当します。CTやマンモグラフィも導入し、健診にも力を入れています。赤ちゃんから高齢者まで、専門的な治療が必要な疾患の方でもフォローできる、まさに「究極のかかりつけ医」を実現したいんです。
専門的な外来診療について詳しく教えてください。

内分泌、循環器内科、物忘れなど、専門的な外来を充実させています。特に婦人科の外来では女性医師・女性スタッフが対応するので、女性の患者さんも安心できる環境です。例えば学生の女の子も、普段だったら少し話しづらい「生理をずらしたい」といった相談でも、その場で婦人科の先生に診てもらうことができます。同じクリニック内なので紹介状も不要で、スピーディーな連携診療が可能です。また、私はアメリカで生活していた経験があるため、英語での診療にも対応ができます。子育ての相談や夜泣きの対応など、外国人のお母さんやお父さんが英語で相談できる環境はあまり多くありません。実際に英語診療を求めて遠方から受診される方もいらっしゃいます。海外経験を生かして、外国の方の心情も理解しながら診療にあたっています。
小児から成人へのスムーズな医療の移行を実践
小児がんを専門としたきっかけは?

私は恐らく「何でもできるようになりたいタイプ」で、病気だけでなく心のケアも含めた医療がやりたかったんです。小児がんは感染症も輸液も、すべての知識が必要で、常に100パーセント全力投球できる分野。それが自分に向いていると思いました。そこで浜松医科大学を卒業後、小児がん医療を学ぶために東京大学医学部の小児科に入局しました。小児がんの治療では半年以上も親御さんが付き添いで入院するのですが、その時に「家族まるごとをケアしないと小児がんの子は治せない」と痛感したんです。闘病を続けても、その間に家庭内不和が起こる現実を目の当たりにし、結局、究極の全人医療が求められていると感じました。
「家族まるごとケア」というコンセプトには、どのような思いが込められているのでしょうか?
小児がん診療で学んだのは、親御さんの状態が子どもの治療に大きく影響するということです。例えば、親御さんのメンタルが不安定だと、お子さんに薬をきちんと飲ませられなかったり、お子さんの病気が長引いたりすることもあります。不登校の問題も、子ども本人だけでなく周りの大人の影響も多分にあります。だからこそ、家族全員の健康状態を把握することが、小児の治療には不可欠なのです。また30〜50代の、病気が少ない働き盛りの世代の予防医学も重要だと考えています。健診を通じて予防意識を高めることで、将来の重大な病気予防につなげたいと思っています。
小児から成人への移行期医療にも力を入れているそうですね。

日本の医療の場合、小児科から内科へのバトンタッチがうまくいかないことが多いんです。それぞれが専門特化されていて、患者さんが40代でも小児科医が診ているケースは少なくありません。ここでは小児科医の私と内科医が常駐しているので、小児科から内科に移行する際にも医師同士が連携しながら進められます。多くは15歳頃に内科に移行しますが、15歳になった途端に成人の体や心になるわけではありません。小児から成人へのグラデーションの時期に柔軟に対応できる体制が必要です。また、小児がんを治療した後、大人になってから治療の影響が出現することがありますが、小児科と内科の医師で対応できる点も当院の強みです。内科側で困った時は小児科側が助言もできますし、患者さんもそのご家族も、小さい頃から大人になるまで同じ場所で安心して治療を受けられる。これが「トランジション(移行期医療)」の理想的な形だと考えています。
基本を大切にし、患者の顔を見て話す温かい医療を
診療で特に大切にしていることは何ですか?

まず初心を大切にし、どの患者さんにも聴診器をしっかり当てて所見を取ることを基本にしています。患者さんの観察は入室時から始め、3歳くらいの子であれば発達の問題や全身の異変なども見逃さないようにしています。医師はカルテに入力しながら診察を行うので、パソコンに向かいがちになってしまうのも理解できます。幸いにして私は、ピアノで培ったブラインドタッチの技術があるので、患者さんの顔を見ながらカルテ入力ができるんです。混雑で1人あたりの診療時間が短くなっても「先生はちゃんと目を見て話してくれる」「聴診器を当ててくれる」「たくさん話せた」と感じてもらえるよう、常に笑顔で話しやすい雰囲気づくりを心がけています。些細なことでも相談してもらえる、そんな環境であることが何よりも大切にしていることです。
各専門分野の先生方との連携はどのようにされていますか?
連携において特に大切にしているのは、先生方の人選と専門分野のバランスです。非常勤の先生方には、これまでのご縁の中で信頼してきた方々にお声がけし、快くご協力いただいています。中でも、小児期から成人期へと移行する医療に欠かせない循環器、内分泌、呼吸器、婦人科といった分野が専門の先生方を中心にお迎えしてきました。私からできるだけ直接お声がけし、日頃からこまめにコミュニケーションを取ることを心がけています。こうした連携体制の最大の利点は、患者さんへの対応をスピーディーに行える点です。総合病院のように改めて別の日に受診する必要がなく、同じクリニック内で迅速に対応できることは、患者さんにとっても大きな安心につながっていると感じています。
今後、クリニックは地域でどのような存在になりたいとお考えですか?

「ここに来れば解決してもらえる」と思われる存在をめざしています。近隣の基幹病院と強力な連携体制を構築し、連携の会合には必ず出席しています。個人的な知り合いの医師も各病院にいるので、患者さんの紹介もスムーズです。また、私はピアノが趣味なので、コンサートなどを通じて診療以外でも地域の方とふれあえる場をつくりたいと思っています。内覧会でもピアノ演奏を行いましたが、200人近い方にお越しいただきました。年齢や性別などを問わず、皆さんが「まず一度受診してみよう」と思えるクリニックにしたいと思っています。「こんなこと聞いて良いのかな」などと思わずに、気軽にいらしてください。国籍問わず誰もが通える地域の中核として「究極のかかりつけ医」を実現していきたいと考えています。

