生活習慣だけが原因ではない
多角的な視点で行う糖尿病治療
三好丘こば内科クリニック
(みよし市/三好ヶ丘駅)
最終更新日:2025/07/25


- 保険診療
数多くの罹患者がいる糖尿病は現代日本における重大な健康課題だ。初期には自覚症状がほとんどなく、知らぬ間に進行し、神経障害や腎症、網膜症、心筋梗塞など、全身に合併症を引き起こす恐れがある。「重症化を防ぐには、早期発見と継続できる治療が鍵です」と語るのは、「三好丘こば内科クリニック」院長であり、日本糖尿病学会糖尿病専門医の小林大地先生。糖尿病は生活習慣だけでなく、遺伝やホルモンなど多様な要因も関与する。だからこそ「自分を責めたり、他人と比べたりする必要はありません」と話す。治療の継続の難しさが課題となる糖尿病だが、同院では日曜診療や先進の検査機器を導入するなど、通院しやすく負担の少ない環境づくりに取り組む。今回は小林院長に、糖尿病治療への思いや取り組みについて話を聞いた。
(取材日2025年7月8日)
目次
通いやすい環境とオーダーメイドの治療で、継続できる糖尿病治療の提供をめざす
- Q糖尿病とはどのような病気でしょうか。自覚するきっかけは?
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A
▲早期発見のためには、定期的な健康診断を受けることが何より大切
糖尿病は血糖値が高くなる病気ですが、初期にはほとんど症状が出ないのが特徴です。進行すると、喉が渇いたり、排尿の回数が増えたりすることもありますが、多くの方は健康診査で数値の異常を指摘されたり、他の病気の診察で偶然血糖値が高いことを指摘されたりといったきっかけで発見につながることがほとんどです。他にも受診のきっかけとして、最近太ってきた、または逆に痩せてきたなどの体の変化、また、ご家族の中に糖尿病を患っている方がいらっしゃる場合も注意が必要です。糖尿病は自覚症状がないまま知らず知らずのうちに進行し、全身の血管にダメージを与えることもあるため、定期的に健診を受けることが何より大切です。
- Q診断方法や治療法についても教えてください。
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A
▲新鋭の検査機器を取り入れ、検査の待ち時間を短縮
まず、糖尿病かどうかを診断するには、血液検査で血糖値のほか、「ヘモグロビンA1c」という過去2ヵ月間の平均的な血糖の値を示す指標を調べます。ただし、それだけでは判断が難しい場合もあり、その際は糖分を摂取して血糖値の変化を確認する目的の検査を行うこともあります。治療は、血糖値の状態や合併症の有無、ご本人の生活スタイルに応じて、食事・運動指導からお薬、注射までさまざまです。近年は糖尿病治療薬の進歩が著しく、血糖値へのアプローチだけでなく、心不全や腎症のリスクを低減する目的の薬も登場しています。服用回数や費用面なども含め、患者さんの希望を大切にしながら、続けられる治療を一緒に考えます。
- Q放っておくことのリスクは?
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A
▲日本糖尿病学会糖尿病専門医の資格を持つ小林大地先生
先ほどもお話ししたように、糖尿病は初期にはほとんど自覚症状がありません。だからこそ、気づかないうちに合併症が進行してしまうことが最大のリスクです。血管にダメージが蓄積することで、神経障害や腎症、網膜症、さらには心筋梗塞や脳梗塞など、全身に影響を及ぼします。例えば、目の血管が傷んで視力が低下したり、腎機能が悪化して透析が必要になったり、神経障害が進行して感染を起こし、足の切断につながるケースもあります。当院では、神経伝導検査、尿検査、眼底検査などを通じて、こうした合併症の早期発見に努めています。初診時にすべての検査を行うのは難しいため、看護師とも連携しながら、1ヵ月ごとに段階を踏んで進めます。
- Q糖尿病は治療に対するモチベーションの維持も大切だそうですね。
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A
▲看護師とも連携しながら患者の早期発見に努める
糖尿病の治療は生活習慣の改善が基本ですが、それを続けるのは簡単ではありません。そこで当院では、オンラインでの栄養指導を取り入れたり、持続血糖測定器(CGM)を活用したりして、患者さんの「見える化」をサポートしています。数値はリモートで当院側でも把握でき、リアルタイムで血糖の変化が双方で確認できるため、「ここを変えたら変化につながった」と実感しやすく、モチベーション維持にもつながります。数値の変化が目に見えることで、患者さん自身の取り組みが「ちゃんと結果に表れている」と実感できるんですね。こうした工夫を通じて、小さな変化を一緒に積み重ねていけるよう、私たちも伴走しています。
- Q糖尿病専門の先生に診てもらったほうがいいですか?
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A
▲患者の見える化をサポートし、モチベーション維持に注力
糖尿病は単純な病気ではなく、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。専門家であれば、お薬の選択はもちろん、運動や食事の工夫など、患者さんの体験から学んだ引き出しをたくさん持っているのも強みです。また、糖尿病は生活習慣だけでなく、遺伝やホルモンの病気が関係することもあります。1型糖尿病といって膵臓がインスリンを作らなくなるケースもあります。だからこそ、「自分のせい」と責めないでほしいですし、糖尿病に対する偏見や誤解を取り除くのも、専門家としての役割だと感じています。一人ひとりの状況に合わせて、できるだけ無理なく、その人らしい生活を送れるよう一緒に考えていきたいと思っています。