長坂 直樹 院長の独自取材記事
いけふくろう腎・泌尿器科クリニック
(豊島区/池袋駅)
最終更新日:2025/08/12

池袋駅西口から徒歩3分のオフィスビルに「いけふくろう腎・泌尿器科クリニック」がある。落ち着いた院内で迎えてくれる長坂直樹院長は、大学病院や基幹病院でさまざまな手術技術を習得し、日本泌尿器科学会泌尿器科専門医として専門性を磨いてきた。「病院で身につけた高い専門性を地域の患者さんに」と、自身の生まれ育った場所で2025年に開業。前立腺肥大症の水蒸気治療や過活動膀胱のボツリヌス毒素製剤注入療法など、専門性の高い治療に注力している。「患者さんに優しくあること」をクリニックの根幹とし、自身が患者として医療を受けた経験から、患者の不安な気持ちに寄り添う診療を心がける長坂院長に、地域医療への思いや専門治療について聞いた。
(取材日2025年7月17日)
地域への恩返しと専門医療の両立をめざして
開業のきっかけや、この地域を選んだ理由について教えてください。

大学病院や地域の基幹病院で、さまざまな手技など自分で納得できるレベルの専門性を身につけ、日本泌尿器科学会泌尿器科専門医も取得できたことがきっかけです。それを地域の患者さんに還元したいという思いが強くなりました。同じ医局の尊敬する先輩が開業されたことも、私の背中を押してくれました。目白から池袋にかけては私が生まれ育った地域で、そうした小さい時からなじみ深い場所での開業を検討。物件を探していた時にこのビルを紹介され、ご縁を感じて開業を決意しました。東武東上線や西武池袋線などさまざまな路線が集中する池袋という立地を生かして、埼玉方面からの患者さんにも自分の医療を受けていただければとの思いもあります。
これまでどのような経験を積まれたのでしょうか?
泌尿器科は外科の中でもさまざまなデバイスを使った手術方法があります。内視鏡、腹腔鏡、膀胱鏡を使った手術からロボット手術、腎移植まで幅広く、それらを大学病院や基幹病院を回りながら一つ一つ習得していきました。技術を磨く過程は大変でしたが、やりがいがあって楽しかったですね。クリニック名に「腎・泌尿器科」とあるように腎不全の全身管理やシャント造設、腎移植にも情熱を持って取り組みました。こうした先端医療も含むさまざまな手術法は大学病院・基幹病院などで行われますが、培った知識と経験を身近に患者さんに還元できるようになりたいという思いが次第に強くなっていきました。また、これまで外科医師として大切にしてきた、どんな時でも冷静でいる、感情的にならない、機器を繊細に操作する、といった部分は、当院を受診された患者さんにとってメリットになると思います。
クリニックの特徴について教えてください。

患者さんがストレスなく医療を受けられるような工夫をしています。まず、泌尿器科で使用頻度の高い薬は院内処方にして、診察後すぐにお渡しできるようにしました。泌尿器の病気や性感染症の患者さんは薬局で薬を受け取るのに抵抗があるかもしれませんから、その点でも役立てばと思います。検査設備も充実させており、超音波診断装置、軟性膀胱鏡の他、残尿測定装置、尿流量測定装置など排尿障害の重症度を明確にできる専門的な機器も備えています。また、徒歩1、2分の場所にある検査専門のクリニックと連携し、CTやMRIが必要な場合は迅速に検査を受けられる体制を整えました。
日帰りで受けられる排尿障害治療
水蒸気治療について詳しく教えてください。

前立腺肥大症に対する水蒸気治療は、2022年に保険収載された比較的新しい治療法で、当院の大きな強みです。水蒸気で前立腺の肥大した組織を破壊することで、従来の電気メスやレーザー治療より患者さんの体への負担軽減をめざせます。手術時間は10分以内で日帰りでき、出血も少ない。主に高齢の方や血液をサラサラにするための薬を飲んでいる方、従来の入院手術が難しい方に対して適応があります。術後は前立腺の一時的なむくみのため1週間から数週間カテーテルを使用しますが、看護師が丁寧に管理方法を説明しますので安心してください。1週間後に来院いただき、排尿状態を確認して問題がなければ管を抜いていきます。
過活動膀胱に対するボツリヌス毒素製剤注入療法とはどのような治療ですか?
過活動膀胱は膀胱が過剰に収縮してしまい、我慢できない尿意や尿漏れなどで生活の質を大きく落とす疾患です。30代後半から症状が出始める方もいらっしゃいます。通常は薬物療法や、膀胱に尿をためる訓練などの行動療法で改善を図れることが多いのですが、1剤、2剤と飲んでも改善が図れない重度の方がいらっしゃるんです。そういった方に対して、ボツリヌス毒素製剤を膀胱に約20ヵ所注射します。筋肉の過剰な収縮を和らげ症状の改善を図ります。現在は女性の過活動膀胱の患者さんに限定していますが、薬物療法で改善が図れない方にとって役立つ治療の選択肢です。ただし、薬物療法を十分に行っても改善が図れない場合の治療なので、まずは内服治療から始めていただきます。
排尿障害の治療はなぜ重要なのでしょうか?

排尿障害は命に関わらないかもしれませんが、生活の質に大きく影響します。出かける時に不安がつきまとう、行動が制限される、それがメンタルにも悪影響を与えることもあります。高齢の方だと外出を控えるようになり、精神的に落ち込んで体全体の健康状態も悪化することがあります。多くの方が排尿障害は「年のせい」と諦めていますが、治療できる可能性がある病気なんです。内科で相談しても改善しない場合は、ぜひ泌尿器科を受診していただければと思います。当院では超音波検査の他、膀胱が尿をどの程度ためられるか、尿が出る勢いはどのくらいかなど専門的な検査ができます。夜間頻尿の原因が睡眠時無呼吸症候群のこともあり、当院では検査からCPAP治療まで一貫して対応できる体制も整えています。
患者の気持ちに寄り添う診療をめざして
診療で大切にしていることは何ですか?

私の尊敬する先生から最後にいただいた言葉があります。「患者さんの話をしっかり聞いてあげてください。そして持っている技術で患者さんを治してあげてください」と。これが私の中で大きな指針になり、開業後も患者さんの目を見て話を聞き、患者さんが何を不安に思って、どうしたいのかを理解することを大切にしています。実は数年前、自分がまったく違う分野の医療を受けた経験があって、専門知識もなく不安だったんです。受付の対応一つで気持ちが沈んだり、医師との話し方で安心したり。患者側の気持ちを実感しました。大学病院や基幹病院では患者さんが多く、一人ひとりの細かい悩みを聞く時間が限られてしまいますが、クリニックなら丁寧にお話を聞くことができます。患者さんには「ここに来て良かった」と思って帰っていただきたいです。
スタッフとの関係性やクリニック運営で心がけていることは?
「患者さんに優しくあること」をクリニックの根幹として、毎朝の朝礼でスタッフに呼びかけています。幸い、スタッフ全員がこの理念に共感してくれて、患者さんに寄り添って対応してくれています。院内の関係性の良さは患者さんがドアを開けて入ってきた瞬間に伝わると思っていて、医師やスタッフ、スタッフ同士の和も大切にしています。院長としてリーダーシップを発揮しなければならない場面もありますが、スタッフの意見も聞きながら、みんなが気持ち良く働ける環境づくりを心がけています。
今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。

もっと多くの高齢者の方に排尿障害の治療を受けていただきたいですね。排尿の悩みを内科に相談する患者さんも多いですが、ぜひ泌尿器科を受診してください。「年のせい」で済まされていた症状が、実は治療可能な病気かもしれません。当院の専門的な検査で排尿障害の重症度が明確になれば、適切な治療につながります。勇気を出して受診していただければ、心と体の健康を維持するお手伝いができると思います。また自分自身としては、もっといろんな検査や治療ができるようになりたいという思いがあります。クリニックでは手術などに限界がありますが、その中でなんとか病院に近い医療ができないか常に考えています。がん診療の精査や日帰り手術など、自分が培ってきた技術をできる限り患者さんに還元できるよう、地域の皆さんの泌尿器科のかかりつけ医として努力を続けていきます。