糸永 竜也 院長、糸永 美穂 さんの独自取材記事
いとなが内科クリニック
(芦屋市/芦屋駅)
最終更新日:2025/06/13

2025年5月、芦屋呉川メディカルテラス2階に「いとなが内科クリニック」は開業した。院長の糸永竜也先生は、心臓血管外科で研鑽を積む中で予防医療の大切さを痛感。健康意識の高い芦屋で、地域の健康寿命を延ばしたいとの思いから内科へ転身し、開業を決めた。「患者さんが生活習慣の改善を実感し、前向きな気持ちで通院してくれるようになると大きなやりがいを感じます。」と語る竜也院長と、その想いを共有する管理栄養士・運動インストラクターの糸永美穂さんに話を聞いた。
(取材日2025年5月30日)
医療・運動・栄養の3本柱で、健康な体をめざす
開業までの経緯を教えてください。

【竜也院長】私は約20年間、心臓血管外科に勤務し、その中でできるだけ患者さんの体に負担をかけずに手術ができるようにとカテーテルを使った低侵襲治療にも長く取り組んできました。このような医療技術の進歩によって高齢の方でも手術を受けることができる時代になった一方で、手術は成功したのに身体の回復が思わしくなく、元気もなくなってしまう事例が見受けられるようにもなりました。そんな経験を通して「万一、手術となっても耐えられる丈夫な体をつくること」をめざし、重点的に取り組みたいと考え始めました。ただ、何かが起きてから対処するのでは、元の健康な体を取り戻すことが難しい方もいらっしゃいます。できることなら大きな病気をせず逃げきれるのが一番。それには予防医学に注力すべきだと考え、外科から内科へと転身し、開業に至りました。
美穂さんのご経歴と、どのような形でクリニックに関わられているか教えてください。
【美穂さん】私はもともと管理栄養士として病院に勤務していました。病院勤務時代、栄養指導で食事の話はできても「運動はどうすればいいですか?」という患者さんの問いに十分に応えられないことにもどかしく感じることがありました。その思いから運動について学び始めたのですが、学べば学ぶほど「運動と食事」を組み合わせることでの期待値の大きさを体感するようになりました。組み合わせることで、生活習慣病・フレイル予防だけではなく、ストレス発散にもつながり、生活の質の向上がめざせます。そこで、こうしたアプローチを医療に組み込みたいと、今回の開業に際して、栄養指導と運動療法を担当しています。また、命に関わる症状ではないけれど、生活の質に大きな影響を与える女性特有のお悩みにも運動を用いて、改善のお手伝いをしていきたいと思っています。
どのようなクリニックをめざされていますか?

【竜也院長】「人生の最期まで自分の足でトイレに行けること」を目標に、医療・運動・食事の3本柱で患者さんを支えていきたいと思っています。これも在宅医療の経験を通して、トイレに間に合わなくなることがいろいろなことを諦めるきっかけになることを知ったからです。そうならないためには、若いうちからの運動や食事の習慣が大切。当院では幅広い年代が運動療法や栄養指導を受けられる環境を整えています。
【美穂さん】どんな悩みでも気軽に相談できる「かかりつけ医院」になりたいと思っています。医療だけではなく毎日食べる食事のこと、なかなか継続が難しい運動についても、患者さんのさまざまなお困り事の窓口となれるよう努めています。病気になる前から、そしてもし何かあった時にも「あそこに行けばいろいろ相談に乗ってくれる」と思っていただけるような存在をめざしています。
「食事は人生の楽しみの一つ」に基づいた栄養指導
御院で提供する診療について教えてください。

【竜也院長】一般的な内科診療を中心に、健康診断や各種検査にも対応しています。当院は循環器内科をメインに診療しており、心臓超音波検査や血管年齢の測定、エックス線検査など心臓・血管に関する検査体制を整えています。中でも心臓超音波検査は、AIによる診断補助機能を備えた先進機器を導入。それを経験豊富な検査スタッフが操作するため、通常の約半分の時間で検査可能です。また不整脈の診断には突発的な症状を発見するため、必要に応じて24時間記録が可能なホルター心電図を使用します。診断の結果、より専門的な治療が必要な場合は連携する病院のご紹介もしています。入院中の治療内容は、退院時に当院にも共有されるためその後のフォローもスムーズです。もちろん、病気になる前に介入できるのが理想ですので、管理栄養士による栄養指導を積極的に取り入れ運動療法も実施しています。
管理栄養士である美穂さんが常駐されているそうですね。栄養指導について教えてください。
【美穂さん】生活習慣病の予防や改善には、食事が重要です。ただ、指導と聞くと「怒られるのでは」と不安に思う方も多いため「食事は人生の楽しみの一つ」という前提を大切に、楽しみをしっかりと残しながら無理なく続けられる提案を心がけています。例えば、間食が家族との大切な時間になっている方には、それをどのような工夫をしたら継続できるかを一緒に考えます。一汁三菜をすべて手作りするのは負担になることもあるので、その方の食生活をベースに、足せるもの・引けるものを提案しています。初回の面談で話し合って目標を決め、次回に実践結果を確認します。その中で患者さんの意思がより明確になっていくので、その気持ちを大切にしながら指導を重ねていきます。指導というよりは、患者さんとのコミュニケーションの時間に近いかもしれません。だからこそ、また相談に行ってもいいかなと思ってもらえる環境を整えるよう心がけています。
患者さんに接するときに大切にされていることを教えてください。

【竜也院長】しっかり説明し、納得いただいた上で選択肢を一緒に探っていくことを大切にしています。外科にいた頃は、命に関わる判断を迫られる場面が多くありました。医師が一方的に決めるのではなく患者さんやご家族とともに選択肢を模索することの重要性を感じました。これは内科診療でも同じです。特に生活習慣病では「悪化させないこと」を目標に走り続けなければいけないので、患者さんに無理がないことを大事にしています。
【美穂さん】正しい情報を丁寧に伝えること、そして患者さんが伝えてくださる言葉をしっかりと受け入れ、一方通行にならないように一緒に目標に向かっての道筋を考え共有するように心がけています。栄養指導は生活習慣の改善が目標になるため、継続が必要です。ご本人が「それならやれそう」というご提案をできるだけお伝えし、達成感を持っていただきながら進めるようにしています。
先進機器で治療を「見える化」する
先進の機器をそろえられていますね。

【竜也院長】単に精度を求めるだけでなく、患者さんの“続けたい”という気持ちを引き出す工夫にもつながると考えました。生活習慣病の治療・予防には継続した通院が必要で、それには通院が苦痛にならない工夫が必要です。例えば体成分分析装置では、筋肉量や体脂肪率を部位別に測定できます。定期的に測定することで、自分の変化を数字で実感できます。そうした「見える化」が達成感を生み、モチベーションの維持につながります。
【美穂さん】糖尿病の管理では、HbA1c迅速測定器を導入しています。検査結果がすぐにわかるため、当日に治療計画を検討することができます。先進機器をそろえることで、在院時間をできるだけ短くできる環境づくりにも努めています。
お二人が医療の道を志した理由をお教えください。
【竜也院長】子どもの頃に読んだ、天才外科医を主人公とする漫画の影響が大きかったですね。自分の培った経験や知識、技術で直接人の役に立てる点に強く惹かれ、医師の道を志しました。
【美穂さん】私自身、食べることがとても好きだったことが大きいですね。ただ、食は人生の楽しみである一方で、健康に良くも悪くも影響するもの。それならば、その楽しみを良い方向へ導くお手伝いができたらと思いました。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

【竜也院長】生活習慣病は放置すると大きな病気につながる可能性があります。何かしらの症状が出ている時には、少し進行してしまっているケースが多いので自覚症状がないうちは、むしろ「いい状態」とも言えます。ですから、1年に1回はご自身の体を気使うタイミングとして、健康診断を受けていただきたいです。
【美穂さん】「栄養指導=怒られそう」と思われがちですが、決してそんなことはありません。気になることがあれば、お気軽にご相談いただければと思います。