多賀谷 知輝 院長の独自取材記事
たがやクリニック
(日進市/米野木駅)
最終更新日:2025/08/29

米野木駅から徒歩7分、閑静な住宅街に2025年5月に新規開業した「たがやクリニック」。日本腎臓学会腎臓専門医である院長の多賀谷知輝(たがや・ともき)先生は、藤田医科大学病院など基幹病院で豊富な経験を積んだ腎臓内科の専門家である。「腎臓は沈黙の臓器といわれるほど自覚症状がないのが特徴。だからこそ早期発見・早期治療が重要です」と語る。生まれ育った地に医師として培った経験で恩返しをしたいという思いから開業に至った。「すぐ近くの小学校に野球のユニフォームを着て通っていたのに、今は白衣でここに座っているのが感慨深いですね」と笑顔で穏やかに話す多賀谷院長のモットーは、「家族を診るように」。専門である腎臓内科で取り組みたいことや、同院の診療方針、そして地域医療への熱い思いを語ってもらった。
(取材日2025年8月8日)
腎臓の身近な相談役として、予防や早期治療に注力
開業までの経緯を教えてください。

私の医師としてのスタートは、中部労災病院でした。腎臓病や膠原病など、さまざまな疾患を診ながら経験を積む中で、「もっと専門的に学びたい」という思いが強くなり、母校である藤田医科大学へ移りました。大学では腎臓内科の専門性を深める一方で、「幅広く患者さんを診る力も大切にしたい」という気持ちも忘れず、学位の取得とともに、日本腎臓学会腎臓専門医、日本内科学会総合内科専門医といった資格を取得しました。腎臓病は進行すると透析が必要になりますが、その前段階での治療や予防がとても重要です。しかし大学病院の特性上、初診の時点ですでに重症の方が多く、早期介入の機会は限られており、「もっと早く関われていれば……」と感じることも少なくありませんでした。そこで、身近な腎臓の相談役として地域で予防や早期発見に力を注ぎたいと考え、開業を決意しました。
腎臓内科はどのような病気を診る科なのでしょうか?
腎臓内科では、腎臓の働きが低下するさまざまな病気を診ています。患者さんの半数ほどは糖尿病を背景に腎機能が悪くなった方で、多くは高血圧症や動脈硬化など、生活習慣病が関係しています。こうした慢性的な病気が少しずつ腎臓に負担をかけ、機能が低下していくケースが多いです。一方で、生活習慣病とは関係のない遺伝性の病気や、診断に時間がかかる膠原病などによる腎臓病も一定数あります。腎臓病というと生活習慣の影響ばかりと思われがちですが、実際には原因は多岐にわたります。そのため、一人ひとり異なる原因を丁寧に探し出し、適切な治療を行うことが腎臓内科の大きな役割です。原因を突き止め、治療につなげていく過程こそ、この診療科ならではの醍醐味だと感じています。
腎臓病の患者さんは、どのようなきっかけで受診される方が多いのですか?

腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、機能が低下しても自覚症状がほとんどないのが特徴です。尿に血が混じる血尿やタンパク尿といった異常があっても、気づかないまま進行することが多いです。大学病院では、腎機能がかなり悪化した末期の段階で紹介されるケースが多かったのですが、開業後は健診で異常を指摘され、症状がないまま受診される方が多くなりました。その中には、軽度の異常や一時的な変化の方もいますが、一定数は腎臓病の初期段階にある方です。そういった患者さんには、「このまま放置すると透析など体に負担の大きい治療が必要になる可能性がある」ことをしっかり説明し、早期治療や生活習慣の改善の重要性を理解していただくよう努めています。
腎臓専門医として、地域のために尽くしたい
腎臓内科をご専門にされたきっかけがあったのでしょうか?

腎臓は全身のあらゆる臓器とつながっており、心臓や血管、皮膚、さらには睡眠との関係まであります。また、糖尿病や脂質異常症、膠原病など多くの病気が腎臓と密接に関わりがあります。実は私の父が消化器内科の医師だったことから、当初は同じ道に進もうかとも思っていましたが、医師になってさまざまな症例にふれる中で、どの疾患にも腎臓が深く関わっていることに気づきました。その奥深さに興味を持ち、その学問に惹かれ、自然と腎臓内科の道を選びました。
これまで診療されてきた中で、特に印象に残っている患者さんやエピソードはありますか?
腎臓病の治療では、人工透析をどうするかという選択が大きなテーマになります。「透析になったら一生寝たきりになるのでは?」「もう人生が終わったも同然だ」と患者さんからネガティブな言葉を聞くこともありました。しかし、人工透析は体調の安定をめざすもので、透析前と同様に活動的に過ごすための治療でもあります。ですので、私は、透析が必要になる前から栄養・食事・運動の指導を行い、今後、透析療法を始めることになっても、その移行をスムーズにして体力を保てるような治療を大切にしています。透析はゴールではなく、その先も元気に生活できるようにするための手段だと皆さんにお伝えしたいですね。
だからこそ、透析の前段階に介入されるために開業されたのですね。

そうですね。残念ながら腎臓は、一度悪くなると元には戻らない臓器です。そのため、できるだけ進行を遅らせることが腎臓内科の最大の役割です。開業によって早い段階から介入できるようになり、予防や生活習慣の改善にもより深く関われるようになったと感じています。また、腎臓は全身とつながっているため、腎臓内科は他科と情報を共有し、必要に応じて治療方針を調整するオーケストラの指揮者のような役割を担うことも特徴です。地域のクリニックでも、患者さんは複数の診療科を受診していることが多いですが、中には腎臓に負担をかける薬が処方されている場合もあります。この地域には腎臓内科を専門とするクリニックが少ないため、開業後間もなく重症例や治療方針の確認などでご紹介いただく機会もありました。今後も地域のクリニックの先生方と連携し、地域の皆さんの健康を包括的に守っていきたいと考えています。
自覚症状がない腎臓の病気だからこそ必要なサポートを
患者さんと接する中で心がけていることはありますか?

診療の中で心がけていることは、患者さんを尊重することです。先ほどもお話ししましたが、腎臓病は進行を遅らせることが主な治療になります。そして、自覚症状も乏しいため、患者さん自身が「治療している」という実感を得にくいのが悩ましいところでもあります。だからこそ、血圧や血糖値、体重、体脂肪、筋肉量など、日々の生活で改善したポイントを一緒に確認し、努力をしっかり評価するようにしています。「できていること」を見つけて褒めることで、患者さんが治療を前向きに続けられるようサポートすることが大切だと考えています。こうした積み重ねが、腎臓病の進行を抑える力になると信じています。
開業されたばかりですが、今後どのような患者さんに来ていただきたいですか?
腎臓病を専門にしていますが、地域のかかりつけ医として幅広い症状やお困り事にも対応したいと考えています。風邪や発熱などの急な症状にも対応できるよう、動線を分けて発熱症状を診る外来も設けました。また、2階には妻が美容皮膚科の診療を行っており、美容をきっかけに来院された方の体調の変化や生活習慣病などに気づくこともあります。女性特有の悩みや更年期症状、疲れやすさなど必要に応じて私の外来と連携もしております。入り口は違っても、地域で暮らす方が気軽に相談できる環境を整えていければと思っております。
最後に、地域の方々にメッセージをお願いします。

腎臓病は自覚症状が少なく、「尿に異常があっても大したことはない」と思われがちですが、全年代で発症する可能性があります。子どもの頃から学校で検尿を行うのも、その早期発見のためです。「そういえば尿検査で異常を指摘されたことがあった」と思い出して受診いただけるよう、腎臓内科としてブログやSNSでの情報発信にも力を入れております。腎臓病についての認知を広げ、「ちょっと気になることがある」「食事のことを聞いてみよう」など、地域の方が気軽に相談できる場になりたいですね。開業にあたっては、多くの患者さんを受け入れられるよう、広めの設計にしました。まだ開業間もないため動線など改善の余地はありますが、今は患者さんとじっくり話せる時間を大切に診療しています。今後も、腎臓病の早期発見・予防はもちろん、「まずここに相談してみよう」と思っていただけるクリニックをめざし、努めていきたいです。
自由診療費用の目安
自由診療とはしわケア(ボツリヌストキシン製剤注射)/2万2000円~