木村 拓郎 院長の独自取材記事
きむら小児科
(北九州市八幡西区/黒崎駅)
最終更新日:2025/07/14

「子どもの笑顔が見られるとやりがいを感じますね」。そう語る木村拓郎院長の表情からは、子どもへの深い愛情が伝わってくる。北九州市八幡西区に2025年に開業した「きむら小児科」は、新生児から小児内分泌まで幅広い経験を持つ木村院長が、地域の子育て世代に寄り添う診療を展開するクリニックだ。自身も4歳と0歳の子育て真っ最中で、保護者の気持ちを深く理解する立場にある。特に力を入れるのは、アレルギーの「検査だけでなく克服まで」を見据えた治療と、修学旅行前の早期介入を重視した夜尿症治療。さらにSNSを活用した情報共有で、祖父母世代も含めた家族全体での子育てをサポートしている。「安心できるクリニック作りをしていきたい」という思いを胸に診療にあたる木村院長に話を聞いた。
(取材日2025年6月25日)
小児内分泌の専門性を生かした診療を提供
小児科の医師を志したきっかけを教えてください。

初期研修では外科系や整形外科も経験し楽しかったのですが、やはり親御さんがいて子どもがいて、治療後に子どもが笑顔になった瞬間のやりがいが大きかったんです。また、父も小児科の医師で背中を見て育ったこともあり、自然と小児科の道を選びました。大学病院での研修後、北九州市立八幡病院で風邪から白血病まで幅広く診療を経験し、大分こども病院では予防接種や乳幼児健診など開業した今に近い診療を学びました。聖マリア病院の新生児科ではNICUでの重篤な症例も経験しました。その後、久留米大学で小児内分泌を専門に学び、低身長や思春期の医療など、日常の困り事に向き合っていきたいと思うようになったんです。
開業に至った経緯についても教えてください。
父が中間市で小児科を開業していて、継承の話もあったのですが、専門を一つ学んでから開業したいという思いがありました。小児内分泌を専門に数年キャリアを積んでから開業した形です。場所選びでは、父のクリニックの老朽化や駐車場の狭さなどの課題を踏まえ、なるべく近い地域で広い駐車場があって通いやすい場所を探しました。このクリニックモールは他の診療科もあり駐車場も広く、何より新型コロナウイルス感染症の時期を経て感染症の対策として入り口を3つに分けられる土地条件がそろっていたので、ここに決めました。
入り口や院内の造りにもこだわっていらっしゃいますね。

新型コロナウイルス感染症を経験して、熱のある子と一緒に長時間待たされるのが嫌だという親御さんの気持ちがよくわかりました。そこで一般診療エリア、感染隔離エリア、予防接種・乳幼児健診エリアと入り口を3つに分け、動線を完全に分離しました。事前の問診で、感染症にかかっている方が家族にいる場合や、水疱瘡などの空気感染しそうな方たちには感染隔離エリアから入ってもらうなど工夫しています。院内デザインは妻に任せましたが、母親目線で通いやすい病院になるよう白を基調に清潔感のある空間にしました。広い駐車場も含めて、安心して通えるクリニックをめざしています。
アレルギーや夜尿症の専門的な治療にも対応
克服まで見据えたアレルギー診療について教えてください。

アレルギー診療で一番避けたいのは、検査だけ行って克服せず終わりにしてしまうことです。血液検査は絶対的な検査ではなく、陽性でも必ずアレルギーとは限りません。子どもの場合は克服が望めるアレルギーも多いので、受診された際には、克服方法まで考えて一緒に治療していきたいと話し、検査で確認した上で耐性獲得をめざしています。特に私は小児内分泌疾患や低身長も専門にしているため、タンパク質不足による成長障害を防ぐという点でも、食べられる範囲を確認した上で、食べられるものはなるべく食べてもらいたいと思っています。
夜尿症治療で早期介入を重視する理由は何でしょうか。
夜尿症は5歳以上で夜におしっこを漏らしてしまう状態ですが、8歳でおねしょがある子の約4割は修学旅行でもおねしょをしてしまう可能性があると言われています。修学旅行でおねしょをすると本人の自尊心も傷つくので、医療機関での治療を行えば、治癒が望めるケースもあるため、早い時期から治療を行うのが大切だと考えています。まずは生活改善として水分摂取を減らしたり、寝る前の排尿、便秘の解消などを行い、それで改善が見られない場合は内服治療を行います。2、3年の治療期間が必要なことも多いですが、早めに始めることで修学旅行などの大切なイベントに間に合わせることが期待できます。
舌下免疫療法についても詳しく教えてください。

ダニやスギ花粉によるアレルギー性鼻炎の治療法になります。昔は中学生くらいで発症していたのが、今は5、6歳で発症する子も多くなっています。アレルギー性鼻炎がひどいと集中力が下がったり眠気につながったりして、勉強や遊びにも影響します。舌下免疫療法は、アレルゲンを口に入れて免疫寛容を起こすための治療になります。3年間毎日続ける必要がありますが、根本的な解決がめざせるのでお困りの方にはお勧めしたい治療法ですね。この地域ではまだあまり知られていない治療なので、子どもたちのQOL向上のためにも当院で積極的に取り入れていきたいと思っています。
現代の子育てに寄り添い、安心できる環境づくりを
診療で特に心がけていることはありますか。

わかりやすい説明を最も大切にしています。子どものことが心配で受診される親御さんは、子どもが泣いていて説明が頭に入らないことも多いんです。そこで感染症については治療カードという、手足口病や夏風邪などの流行感染症についての説明がまとまった紙をお渡しするようにしています。さらに情報共有の強化という観点から、クリニックのSNSアカウントで「流行感染症」という項目から同じ情報をPDF化して確認できるようにしました。例えばおじいちゃんおばあちゃんが連れてきた時に「何の病気って言われたっけ」とならないよう、SNSで情報共有できる仕組みです。親御さんだけでなく、家族みんなで子どもの状態を把握できることが大切だと考えています。
患者さんとの情報共有という点で、SNSが役立っているのですね。
クリニックのSNSアカウントは本当に役立つツールになっています。1歳以降の予防接種は打つ時期の1ヵ月前に通知が届くようにしており、「予防接種の打ち忘れチェック」という項目では、北九州市の予防接種表を参考に何歳でどのワクチンを打てばいいかPDF化しています。また、何歳のときに接種するワクチンのシールか、というのを母子手帳と照らし合わせて確認することもできます。私も子どもがいるのでわかりますが、種類が多くて時期もバラバラで本当に大変なんです。また、流行感染症の情報もSNSで確認でき、例えば手足口病なら「いつから登園可能か」といった保護者が知りたい情報を提供しています。祖父母世代とも薬の飲み方や過ごし方を共有できるので、家族みんなで子育てをサポートできる仕組みになっています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

理念として「安心できるクリニック作り」を掲げています。感染症の動線分けや駐車場の停めやすさ、時間帯予約など目に見える部分はもちろん、受診した人が「来て良かった」と思えるクリニックをめざしています。スタッフも子どもの対応に慣れていて、診察中に泣いてしまう子にはご褒美シールを渡したり、兄弟で来た子は診察室の外で遊ばせてくれたりと、本当に気遣いができる人ばかり。急性疾患だけでなく、夜尿症や舌下免疫療法のような慢性疾患でも通いやすく、相談しやすいクリニックにしていきたいです。地域の子どもたちの成長を長期的に見守っていければと思っています。