三好 永展 院長の独自取材記事
本通みよしクリニック
(広島市中区/本通駅)
最終更新日:2025/07/07

2025年4月に開業した「本通みよしクリニック」。広電1号線・本通駅より徒歩約4分、本通商店街のビル3階にある内科・外科・小児科を標榜するクリニックだ。院長の三好永展(みよし・ひさのぶ)先生は、専門の外科で経験を重ねた後、総合医療、小児診療、高齢者医療にも従事し「都市型ゼネラルクリニック」をコンセプトに同院を開業。広島の中心に暮らす人や働く人たちのニーズに応えるべく新しいかたちの医療を提供している。「必要なときに、必要な医療を届けたい」と語る言葉に熱い信念が感じられる三好院長に、医院づくりの背景や診療コンセプト、クリニックの特色など、たっぷり聞いた。
(取材日2025年5月7日)
ぬくもりと優しさがあふれる空間で癒やしの時間を
まずは、開業までのご経歴についてお聞かせください。

青森県の弘前大学医学部を卒業した時点で新生児科の医師になろうと思っていたのですが、出身県の山口方面に帰ってきたかったこともあり、初期臨床研修医として岡山医療センターに行きました。2年目に新生児科を回った時、NICU(新生児集中治療室)の心臓血管外科の先生にかわいがってもらったことがきっかけで外科が面白いと思うようになりました。外科で実践的な経験を積むために、状況がわかっている東北にいったん戻り、初期の経験を積ませていただきました。その後、広島市立広島市民病院に外科の医師として勤務した後、在宅・高齢者医療、関西圏で総合医療、小児診療に従事し、開業しました。
院内に一歩入ると、とても洗練された空間が広がっていますね。
「ここに来るとほっとする。患者さんに元気を届ける」という想いを込め、病院でありながらギャラリーや北欧のカフェのような静けさと温度を持つ空間にしました。院内空間のデザインは、広島のデザイン事務所監修によるもので、デザイナーや北欧で活動するアーティストの手により、サインや色彩設計すべてにぬくもりと優しさが吹き込まれました。やわらかなピンクと明るい木目の組み合わせは無機質さを感じさせず「診察を待つ時間が、静かに心を整える『癒やしの時間』になるように」という願いが、空間の隅々にまで込められています。
来院する患者さんや、ここで働く人にとって癒やしの空間ですね。

ここは天井が高いので広く見えますが、もともとは広い空間ではないため、限られた空間をどうすれば患者さんやスタッフにとってゆったりした構造にできるかを考え、待合室なども10センチ単位で調整しています。設計段階での私の考えは、私にとって動きやすいとか居心地がいい空間をつくるのではなく、みんなにとって良い空間、受け入れられやすい空間にしたいということだけでした。「クリニックは生活動線の一部」と考えていて、患者さんが緊張せずに来られる場所でありたいと思っています。
患者さんの緊張を和らげるような空間づくりをされているのですね。
医療の内容と病院らしさ、患者さんに与えるプレッシャーは関係ないと思っています。この空間をつくり上げるまでには現実的に物件としての課題を解決する必要がありました。まず、待合室には大きな窓がないため外からの明るさを取り込めません。このデメリットを生かすため、デザイナーの先生と話し合って絵画を配置しました。またバリアフリーなどの設計も含め、ここは中心部の物件のため防災関係など医療施設が満たすべき条件が多く、法律的な制約をクリアしながら患者さんやスタッフの動線を満たしていきました。
横断的診療を提供する「都市型ゼネラルクリニック」
こちらのクリニックの診療コンセプトを教えてください。

当院は、内科・小児科・外科という主要診療科を横断的に提供する「都市型ゼネラルクリニック」として、忙しい現代人の生活リズムに寄り添う新しいコンセプトの医療施設です。平日は夜19時30分まで診療を受けつけ、広島市中心部にお住まいの方やお勤めの方、共働き世帯の方々のニーズに対応した診療体制を整えています。このような体制にしたのは、広島市立広島市民病院の夜間や休日診療の著しい混み方をずっと見ていたことが理由の一つです。混む理由を考えると、「会社帰りに立ち寄れる内科がない」「どこに行けばいいかわからない」という方が多いことがわかりました。
忙しい人に寄り添うクリニックですね。
当院は近隣にお住まいの方やお勤めの方、共働き世帯のお子さまの医療アクセスの改善をめざしています。都市部では専門クリニックが数多く点在する一方で、総合的な健康管理を担う「かかりつけ医」が不足しており、広島市中心部も例外ではありません。前述した声に反映されているように、これは都市生活者が直面する「見えない医療格差」の表れです。例えば、広島市中心部では数年前に小児科の基幹病院がなくなり、付近のエリアは子育て世帯が少なくないにもかかわらず小児医療の空白地帯となっています。また、広島市中心部にお勤めの方の急性期疾患や生活習慣病、アレルギー疾患の治療に加え、将来の心不全やがんのリスクを低減することが、当院に課された責務だと感じています。このような現状を踏まえ、患者さんにとって使い勝手のいい医療インフラになることによって、このエリアがさらに住みやすい場所になると考えています。
広島中心部における「医療格差」という視点はとても新規性があるように思えます。

医療というと子どもや高齢者に焦点が当たりがちですが、働く世代の健康を放置することはできません。そこを解決しないと健康寿命は延ばせないでしょう。そういう意味でも、開業するにあたり、このエリアの生活動線に組み込まれたクリニックにしたいという意図がありました。働く人たちが生活習慣病を抱えながら放置する環境がなくなれば、退職後に心不全になるようなケースを減らすことが望めます。また、広島市中区・西区は「高齢者単身世帯の割合が多い」という特徴があります。高齢化の進行・単身世帯の増加により深刻化する地域医療の問題として挙げられるのは「より総合的で幅広い医療ケアが必要になる」「医療サービスから切り離されてしまう人が出やすい」という2点です。高齢者の健康問題により早期から介入できる体制を整備することが、医療格差の是正に不可欠だと考えています。
広島の中心で「信頼できるかかりつけ医」をめざす
こちらのクリニックの特色をお聞かせください。

多くの医療機関が専門性の細分化や自由診療への多角化を進める中、当院は「分断された医療をつなぎ直す」という新たな価値の提供をめざしています。「風邪から慢性疾患まで幅広く対応する内科」「子どもの急な発熱や予防接種に対応する小児科」「切り傷や打撲など日常的な外傷に即応できる外科」。当院はこれらの科の診療を複合的かつ適切に提供します。「外科医は大雑把」というイメージがあるかもしれませんが、私は外科の医師ほど繊細な人種はいないと思います。大雑把な手術をしたら患者さんは助かりません。しかし、外科の医師が開業する人生設計を持った場合は、内科、小児科の経験を積むために何年も前から準備する必要があります。
横断的な診療について詳しく教えていただけますか?
今は治療や薬剤のガイドラインが非常に進歩しているので、糖尿病など、それを専門分野とする医師に介入してほしい症例は限られています。そのような重篤なケースは、基幹病院の専門診療科に紹介すべき症例だと思いますが、糖尿病の場合はそれ以外にさまざまな問題があります。生活背景にいろいろな問題を抱えていることも多く、糖尿病の状態が悪いまま放置する人は、日常的にバランスの良い食事が取れていません。例えば、手っ取り早く炭水化物を最初からたくさん食べる。炭水化物を食べる時はだいたい塩分も取るため、血糖値も上がりやすく、中性脂肪もたまりやすくなります。見た目や症状に現れないままに悪化するケースも多いのが現状です。当院はこの問題をおろそかにせず丁寧に取り組み、人生のパートナーになれるよう努めてまいります。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

当院は、内科・小児科・外科を横断する「都市型ゼネラルクリニック」として、一人ひとりの「これまで」と「これから」に寄り添う医療をめざします。また、「家族丸ごと対応できる医療機関」「なんでも相談できる、信頼できるかかりつけ医」として、広島で働く方、育てる方、暮らすすべての方に、必要なときに必要な医療をお届けできるよう、皆さまの健康を全力でサポートいたします。漢方・東洋医学診療、訪問診療も行っていますので、お気軽にご相談ください。