山本 英理子 院長の独自取材記事
はこざきデンタルクリニック
(福岡市東区/箱崎駅)
最終更新日:2025/08/08

JR鹿児島本線・箱崎駅に直結する位置にある「はこさきデンタルクリニック」は2025年4月8日に開業した。山本英理子院長は、警察官をはじめさまざまな仕事を経て歯科医師を志し、20代半ばで大学に入り直したという異色の経歴の持ち主。歯科麻酔学についても専門的に学び、歯科治療が苦手な人に少しでもリラックスしてもらおうと、笑気吸入鎮静法(笑気麻酔)や静脈内鎮静法を取り入れている。地域の人が足を運びやすいように、朝8時から診療を開始したり、日曜も診療を行ったりと、時代や患者のニーズに寄り添っている。ユーモアを交えて患者と接し、親しみやすい雰囲気の山本院長に、開業までの経緯や診療方針、これからの展望を聞いた。
(取材日2025年6月30日)
不安を和らげるために、さまざまなアプローチを導入
歯科医師をめざしたきっかけをお聞かせください。

幼い時から医療系の仕事に興味があったのですが、高校卒業後福岡県警の警察官をはじめ、さまざまな仕事を経験しました。警察官時代に腰を痛めてしまい、将来を考えた時「やはり医療系の資格を取得したい」「人の役に立つ仕事をしたい」と思い直して勉強を始め、なんとか20代半ばで九州大学歯学部に入学できました。卒業後はお世話になった先生の影響から、口腔内だけでなく全身の状態を診ることができる歯科医師になりたいと思い、歯科麻酔を専門に学んできました。大学病院や総合病院、歯科治療に恐怖心を持つ子どもと向き合う小児歯科で経験を積ませてもらいましたが、歯科治療が苦手な大人にも、自分が最も良いと考える治療を提案していけるようになりたいという思いが募り、開業を決意しました。
なぜ、この場所で開業したのですか?
障害のある方や歯科治療に恐怖心を持つ「歯科恐怖症」の方の不安を少しでも和らげるために、当初から「静脈内鎮静法」と「笑気吸入鎮静法」を取り入れたいと考えていました。腕の静脈に鎮静作用のある薬剤を点滴で注入して治療を行う静脈内鎮静法は、重度の歯科恐怖症などの理由で歯科治療を敬遠されている方にお勧めしています。意識が少しぼんやりしてリラックスした状態へと導き、痛みや不安、恐怖心の緩和を図りますが、治療が終わった後は体が元の状態に戻るまでに少し時間がかかります。回復したら帰宅できますが、治療当日は車の運転は危険が伴うので難しいです。そのため、公共交通機関が近くにある場所で開業したいと思っていて、運良く駅直結のこの場所を見つけることができました。
笑気吸入鎮静法も導入しているんですね。

笑気吸入鎮静法は、鼻マスクをつけて笑気ガス(亜酸化窒素)を吸入する麻酔法です。ふわふわした気分になってリラックスした状態で治療を受けることが期待できます。鎮静の程度に個人差はありますが、軽度や中度程度の歯科恐怖症の方や、器具が口腔内に入ると吐き気が出てしまう「異常絞扼(こうやく)反射」がある方にお勧めです。意識はあって声をかけたときに受け答えもできますし、笑気ガスの吸入を止めればすぐに体外に排出されていくので、治療後、元の状態に戻るのが早いのも特徴です。笑気麻酔は保険診療で提供しており、4歳くらいの小さな子どもから高齢者まで用いることができるので、歯科治療が怖いと感じている方には試してみてほしいです。
患者のニーズに合わせて始めた早朝診療と日曜診療
診療時にどんなことを心がけていますか?

歯科医院に行くのは怖いという気持ちが強い人が多いと思います。音が怖い、臭いが怖い、治療に使う器具の見た目が怖いなど、その理由もさまざまです。患者さんにはできるだけリラックスして治療をしてほしいので、よく話を聞くように心がけています。疑問が残ったり、聞きたいことが聞けなかったりするのも不安につながるので、最後に必ず「何か質問はありますか?」と確認するようにしています。最も良いと思える方法で治療を進めたいので、患者さんが自分の家族だったら、どんな接し方でどんな治療を提案するのかを念頭に置いて伝えるようにしています。初回の診察でたくさん話を聞き出すことは難しいですが、どんなことに困ってどんな治療を望んでいるのかを丁寧に聞いて、治療を進めていきたいと思っています。
そうなると、スタッフさんとの連携が大切になりますね。
歯科衛生士、歯科助手、受付スタッフ、事務長が、日々の診察を支えてくれています。初回時ですと、私より歯科衛生士さんに話をしてくれる患者さんが多いですね。患者さんの話を丁寧に聞いていて、どんなアニメが好きだとか、子どもが何歳だといったことまでメモに残してくれるので感謝しています。治療は、患者さんの生活やその背景に左右されると考えているので、スタッフとの連携が大切になってきます。実際には難しいことなのかもしれませんが、院長と雇用されているスタッフの垣根を低くしたいと思っていて、スタッフとの対話をできるだけ多くするようにしています。事務長には月に1度スタッフとの個人面談を行ってもらい、言いたいことが言いやすい環境づくりを心がけています。
平日の早朝や、日曜も診療しているそうですね。

知り合いから「自分の勤務時間と歯科医院の診療時間が同じで通えない」という声をよく聞きましたし、私自身も歯科に限らず、治療に行きたいと思っていてもなかなか行くことができませんでした。なので、日曜に開いていたら来られる人がいると思い、9時から13時までですが日曜も診療しています。加えて平日は週に3回、朝8時からの早朝診療もしています。箱崎駅の近くには保育園が多いですし、以前小児歯科に勤めていた時は、登園前に通っている子どもが多かったので、当初は子どものニーズを見込んでいましたが、なんと通勤前の会社員の方たちもたくさん通ってくれています。残業で仕事終わりには行けない方も、朝の仕事前に治療が受けられるのは便利ではないでしょうか。日曜や早朝の診療が、歯科治療から遠ざかっていた人が通うきっかけになればうれしいですね。
丁寧な説明と診察で、信頼される歯科医院に
開業から数ヵ月ですが、どんな世代の患者さんが多いのですか?

小児歯科での勤務経験から、子どもの患者さんが来てくれるかと思っていましたが、乳幼児から90代まで幅広い世代の方々に通っていただいていて、働いている世代の方も多いですね。徒歩で通院されている方がほとんどで、まず地元の皆さんに来ていただいているのでうれしいですね。家族ぐるみで通ってくださる患者さんもいます。信頼できると感じたら家族に紹介したくなると思うので、患者さんの話を丁寧に聞いて治療を進めることを大切にし、「家族に紹介してもらえる歯科医院」になりたいですね。ただ、症状や患者さんの状態を見て必要だと判断した場合は、専門の先生にお任せすることが患者さんのためになります。矯正にしても小児歯科にしても、患者さんにとって最も良い選択だと思えば、より専門的な医療機関へ紹介するように連携を取っています。
今後の展望や目標を教えてください。
歯科治療に苦手意識を持つ方が多いので、目標とするコンセプトは「歯科治療が苦手な方でも楽しく通い続けられる歯科医院」です。まずは近隣の方に来ていただいた上で、いずれは遠くからでも足を運びたいと思える歯科医院にしたいと考えています。治療が怖い方には、笑気麻酔や静脈内鎮静法を活用する方法を知ってもらい、今後はホワイトニングも導入していきたいと考えています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

歯科治療が苦手、嫌だなという人でも通い続けられる歯科医院づくりを心がけています。笑気麻酔は鎮静の作用が穏やかで、子どもから高齢者まで使うことができるので、こういったアプローチがあることを知ってほしいですね。患者さんには治療の前に丁寧に説明し、リラックスして治療が受けられるように寄り添っていきますので、これまで歯科医院に行くのを躊躇していた方、足が遠のいてしまっている方にも気軽に足を運んでほしいと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは静脈内鎮静法/5万円~
※個人個人の症状や症例によって価格は変動いたしますので、あくまで目安の価格となります。詳細の問い合わせは歯科医院までお電話をお願いいたします。