南雲 大暢 院長の独自取材記事
南雲内視鏡クリニック木更津
(木更津市/木更津駅)
最終更新日:2025/04/15

木更津市羽鳥野に、2025年3月にオープンしたのが、「南雲内視鏡クリニック木更津」だ。胃と大腸の内視鏡検査を専門とする同院。南雲大暢(なぐも・ひろのぶ)院長は、これまでさまざまな市中病院で経験を積み、基幹病院では消化器内科部長として内視鏡検査やポリープ、早期がんの治療や後進の育成に携わってきた医師。同院でも、その豊富な経験や、培ってきた技術・知識を生かした質の高い内視鏡検査の提供をめざしている。「この地域で胃がんや大腸がんの患者さんの数を減らすことに貢献したいと考えています」と気さくに話す南雲院長に、クリニックの特徴や診療にかける思いについて話を聞いた。
(取材日2025年4月2日)
リラックスして受けられる内視鏡検査の提供をめざす
最初にクリニックを紹介していただけますか?

当院は、胃と大腸の内視鏡検査を専門とするクリニックです。コンセプトは、「患者さんができるだけ苦痛を感じず、少しでもリラックスして内視鏡検査を受けられる」こと。そのための設備などのハード面と、スタッフの接遇といったソフト面の両方を整えています。内視鏡検査の目的は、胃がんや大腸がんを早期に発見し、適切な治療を行って命を守ることです。しかし、がんが1回の検査で見つかることは少なく、定期的な検査が重要になります。ですが、検査が苦痛を伴うと、患者さんが継続的に受けることを避けてしまう可能性があります。そこで当院では、苦痛を最小限に抑え、安心して検査を受けられる環境づくりをめざしているのです。内装は、できるだけ病院らしさを感じさせないよう、木のぬくもりやグリーンを取り入れたカフェのような雰囲気を意識しました。私自身、木目や緑が好きなこともあり、床や扉には木目を、壁には葉の模様を多く採用しています。
なぜ、木更津を開業の地に選んだのですか?
私は、これまでに6年ほど、鴨川にある亀田総合病院で消化器内科部長を務めていました。木更津からは車でも1時間くらいかかりますが、周りにあまり病院がないこともあって、わざわざ来る患者さんも少なくありませんでした。それで、手術もたくさんしていたのですが、それ以前に内視鏡検査自体を受けてない人が非常に多かったんです。内視鏡検査自体のハードルが高いとか、受けたけど大変な思いをしたとかで、しっかりした医療機関で受けたいという需要が多かったんです。それで、以前から開業を考えていたこともあって、今回木更津に内視鏡専門のクリニックをオープンすることにしたんです。
設備にもこだわりがあると伺いました。

設備面では、先進の内視鏡システムに加え、CTも導入しました。理由はいくつかありますが、特に大きな利点の一つは、食事後でも検査が可能なことです。内視鏡検査は絶食が必要ですが、特に初診の患者さんは食事を取ってから来院することが多く、そのような場合でも必要に応じてCT撮影を行い、迅速に結果を確認できます。これにより、患者さんに安心していただけます。また、血便や便秘で大腸内視鏡検査を行う際、大腸がんによる閉塞が疑われるケースがあります。こうした患者さんが2リットルの下剤を飲むと、腸が破裂し、命に関わる危険があります。一般的にはエックス線撮影を行いますが、場合によっては異常が映らないこともあります。CTならより精密に診断できるため、安全面も考えて導入しています。
患者の気分を落ち着かせることを大切に
内視鏡検査の特徴はありますか?

患者さんがリラックスして内視鏡検査を受けられるよう、鎮静剤の使い方を工夫しています。鎮静剤にはいくつかの種類がありますが、一般的に使用されるものの中には、作用が長く続きすぎるものもあります。その場合、検査後も目覚めにくく、帰宅時の安全面に問題が生じることがあります。そのため、投与量を抑える傾向にありますが、その結果、必要な鎮静が得られず、患者さんの苦痛軽減が十分に見込めないケースもあります。検査中のみ作用させるために、当院では鎮静剤の選定にもこだわりました。検査中はしっかりとリラックスし、検査後は速やかに回復することが望めます。また、内視鏡室では患者さんの好きな音楽を流すことができるほか、室内の照明をブルーライトにすることで、気分を落ち着かせることに努めています。ブルーライトは画面の視認性を向上させ、病変の発見をしやすくすることに役立つともいわれています。
大腸内視鏡検査についても教えてください。
大腸内視鏡検査の精度は、医師の経験や技術によって大きく左右されます。私はこれまで、専門的な技術が求められるESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)にも従事し、多くの症例を手がけてきた実績があります。こうした経験を生かし、より精度の高い大腸内視鏡検査の提供をめざしています。また、検査前に2リットルの下剤を飲む必要がありますが、それは患者さんにとって負担が大きいものです。当院では、スポーツドリンクのような飲みやすい味の下剤を採用し、少しでも負担を軽減できるよう工夫しています。さらに、当院では胃と大腸の内視鏡検査を同日に実施することが可能です。特に、大腸内視鏡検査は、食事制限や下剤の服用が必要で負担が大きいため、「せっかくなら1回で両方の検査を済ませたい」と希望される方が少なくありません。当院ではこうしたニーズにも対応しています。
診療の際に心がけていることはありますか?

患者さんの気持ちを落ち着かせること。信頼関係を築くこと。さらに、できれば患者さんから、ひと笑いぐらい取りたいなと思っています(笑)。患者さんが笑顔になることで、自然と距離が縮まり、緊張も和らぐからです。また、診察の際には、病気のことだけでなく、「どこにお住まいですか?」とか「どんなお仕事をされていますか?」といった、日常の話題にもふれるようにしています。そうすることで、実際に検査を受ける際にも、より安心してもらえるのではないかと思っています。これは、私自身だけでなくスタッフも同様で、チームとして、患者さんに優しく、明るく接することを大切にしようと伝えています。
検査の負担を軽減し、抵抗なく受けられるようにしたい
話は変わりますが、先生はなぜ医師を志したのですか?

明確な理由があったわけではなく、気づいたらこの道に進んでいました。小学生の頃、親から「資格を持っていたほうが良い」と言われて、将来の職業の作文になぜか「医師」と書いていたんです。記憶にありませんけど(笑)。結果的にこの道へ進んで、自分には向いていたなと思っています。消化器内科を選んだのには、ゲームの経験があります。中学生の頃に格闘ゲームがはやっていて熱中し、週末には秋葉原の大会に出場して、何度も優勝していました。実は、ゲームの「画面を見ながら操作する感覚」は、内視鏡と非常に似ています。「左手でコントロールし、右手でカメラを操作する」。これも、ゲームの操作感覚とそっくりです。実際に内視鏡をやってみたら、自分にはその感覚が自然と身についていて、スムーズに扱えました。もともとこういう操作系のセンスがあったのかもしれません(笑)。
忙しいとは思いますが、どのようにリフレッシュしていますか?
学生時代からテニスをしており、40歳までは続けていました。しかし、テニスは動きが激しく、ケガをすることもあったため、現在はゴルフを楽しんでいます。ゴルフは一人で行くと、いろいろな世界の人と出会うのが楽しいですね。この前なんかは本当に偶然ですけど、当院でも採用しているある医療機器メーカーの方と一緒になったんです。最初はまったく気づかず、ラウンド中に世間話をしていたら、わかったんです。そんな偶然あるんだなって、驚きましたね。
最後に今後の豊富と読者へのメッセージをお願いします。

目標は、できるだけ多くの患者さんに内視鏡検査を受けていただくことです。それによって、この地域で胃がんや大腸がんの患者さんの数を減らすことに貢献したいと考えています。よく「がんをゼロにする」といったスローガンを見かけますが、現実的には難しいでしょう。しかし、過去に痛みや不快感が原因で「もう二度と受けたくない」と感じた方が、抵抗なく検査を受けられるようになれば、大きな前進だと思っています。検査の負担を軽減することで、定期的に受けることが当たり前の環境をつくることが理想です。そして、内視鏡検査を受けることが、胃がんや大腸がんで亡くなる可能性を下げることにつながります。過去につらい経験をした方ほど、ぜひもう一度チャレンジしてほしいですね。胃腸の調子が悪いと感じたら、我慢せず早めに受診してください。