本山 哲也 院長の独自取材記事
亀田ホームクリニック幕張
(千葉市美浜区/検見川浜駅)
最終更新日:2026/08/12
タワーマンションが立ち並ぶ幕張ベイパークの住宅街に、2024年に開院した「亀田ホームクリニック幕張」。シニアレジデンスの1階に併設されているが、入居者専用ではなく、地域に広く開かれた内科・小児科のクリニックである。院長の本山哲也先生は、亀田グループで家庭医療の研鑽を積んだ。「特定の臓器にはあまり興味が湧かなかったけれど、人の手助けがちゃんとできる仕事がしたかった」と語る本山院長。「病気を診る」のではなく、「人を診る」ことを大切にしているという。一人ひとりの生活背景にも目を向けながら、子どもから高齢者まで丁寧に診療にあたる本山院長に、家庭医療を専門とする医師を志したきっかけや診療にかける思い、地域を支えるこれからの展望について話を聞いた。
(取材日2026年7月8日)
「自分の専門ではありません」と言わない診療スタイル
どういった経緯でここに開院されたのですか?

当院は、シニアレジデンス「パークウェルステイト幕張ベイパーク」の1階に併設するクリニックとして、2024年9月に開院しました。当初は入居者の方の健康管理が大きな役割でしたが、入居者専用ではなく、地域の方をはじめ、どなたでも受診していただけます。もともと私は亀田のグループに長く家庭医療を専門とする医師として診療を続けてきました。ここを開院するにあたり、「幅広く診られる医師を探している」と直接お声がけいただいたのが院長に就任したきっかけです。亀田グループには、専門分化した医師だけでなく、さまざまな症状を総合的に診られる医師も必要だという考えがあります。その方針のもと、当院は内科と小児科を掲げながらも、年齢や領域にとらわれず幅広く診療を行っています。
クリニックのあるエリアは、どういった特色のある地域でしょうか。
この一帯は比較的新しい街で、人口構成で最も多いのが5歳未満のお子さんで、次いでその親世代にあたる30代から40代です。新しいタワーマンションが続々と建っており、2年後にはもう1棟完成する予定だそうです。これからまだまだ人口が増えていく地域ですね。ファミリー層が増えている一方で、当院の上階にあるシニアレジデンスには、80代を中心とした高齢者の方々がお住まいです。そのため、開院当初は「この建物の住人のためのクリニックですか?」と聞かれることもありました。しかし、当院はシニアレジデンスの入居者の方だけではなく、この地域で暮らすすべての方が安心して生活できるよう支えることをめざしたクリニックです。若い子育て世代からシニア世代まで幅広い世代が集まる地域だからこそ、診療科にとらわれず、それぞれの世代の健康を支えることが当院の役割だと感じています。
先生がおっしゃる「家庭医療」は、総合診療とは違うのでしょうか。

今の日本の医療においては、家庭医療と総合診療はほぼ同じ意味で考えていただいて大丈夫だと思いますね。私の場合、総合診療という名称が一般的になる前から学んできたということもあって、家庭医療という呼び方のほうがなじみがあります。家庭医療を専門とする医師は、「これは自分の専門ではありません」と最初から線を引かないことが大切だと教えられてきました。内科、小児科、皮膚のことやメンタルの相談まで、まずはどんなことでも受け止める。その上で、自分が対応できることは責任を持って診療し、本当に専門的な検査や治療が必要なタイミングを見極めて専門の医療機関につなぐ。それが家庭医療を行う医師の役割です。
「病気を診る」のではなく「人を診る」という家庭医療
先生はもともと家庭医療の分野に進もうとしていたわけではないんですよね? 何が転機だったのでしょう。

父が産婦人科の医師だったので、幼い頃から自然と医師になるものだと思って育ちました。正直なところ、自分の意思で医師をめざしたというわけではないんです。医学部に進学したものの、特定の臓器への興味は最後まで湧かなかったんですよ。転機になったのは、医学部時代に地域で診療をする家庭医療の先生のターミナルケアの実習に参加したことです。終末期の患者さんやご家族がどのような思いで日々を過ごしているのかを目の当たりにし、「これは人間らしい仕事だ」「医学だけでなく、人が生きていくことを支える仕事なんだ」と思えたんです。病気を治療するだけでなく、その人自身を支える仕事をしたい。その思いで家庭医療の道を選びました。
家庭医療の分野ではどういった研鑽を積まれてきたのでしょうか。
当時は、家庭医療が体系的に学べる医療機関は全国でも数が限られており、その中で選んだのが亀田グループでした。初期研修を終えた後に、亀田ファミリークリニック館山に入職し、内科や小児科などさまざまな診療科をローテーションしながら幅広い知識と経験を積んでいきました。家庭医療を行う医師には、「これは自分の専門ではないと言ってはいけない」という考え方があります。そのため、実際の診療では、さまざまな症状や相談に向き合うことになりますので、先輩医師の指導のもと、日常診療で遭遇するさまざまな病気に適切に対応できる力を身につけていきました。その後も医学は常に進歩していますから、自分自身で学び続け、知識をアップデートしていくことが欠かせません。対応する領域が広いため、大変さはありますが、その分やりがいも大きいです。また、私は北京で診療したこともあり、その経験を生かして、英語や中国語での診療にも対応しています。
診療で一番大切にしていることは何でしょうか?

私がいつも意識しているのは、「その病気をなんとかしよう」ではなく、「困っている方が抱える問題を診る」ということです。同じ症状でも、その方が何に困っているのかはまったく違います。例えば、眠れないという相談でも、「仕事には何とか行きたい」のか、「まずは休みたい」のかによって、必要な対応は変わってきます。家庭医療を学ぶ際、コンテクスト、つまり患者さんの背景を理解することが大切だと教わりました。仕事の状況や家庭環境、ご本人の考え方まで含めて理解することで、その人に合った治療や支援が見えてきます。そのため、一人ひとりのお話を伺う時間はどうしても長くなりますが、その時間こそが家庭医療を実践する上で最も大切なことだと思っています。
何科に行けばいいのか迷うときこそ頼れるクリニックに
家庭医療を専門とするクリニックを受診するメリットは何でしょう。

ご家族を一緒に、そして継続して診られることですね。例えば、お子さんと親御さんが同じ日に受診されることはよくあります。そうすると、お母さんの風邪がお子さんからうつったものだとわかったり、診察を重ねる中で「このご家族はこういう生活をされているんだな」「こういう背景があるんだな」ということが少しずつ見えてきたりします。そうした積み重ねがあるからこそ、一人ひとりだけでなく、ご家族全体を見据えた対応ができるようになります。お子さんの診察に付き添われたお母さんが妊娠されているとわかれば、上のお子さんから家庭内感染するリスクを考えて、RSウイルスや百日咳など、赤ちゃんを守るためのワクチンをご案内できます。先を見据えた予防的な対応ができるのも家庭医療ならではです。複数の病院に通っている方から「まとめて診てもらえませんか」とご相談いただくこともあり、対応可能であればお引き受けしています。
予防医療や健診、ワクチン接種にも力を入れている理由を教えてください。
私は「病院にかからないで済むこと」が、本当は一番良いことだと思っています。病気になる前に防げるものは防ぎたいという思いがあります。健診は病気の早期発見だけでなく、「異常がない」という安心を確認する機会にもなります。ワクチン接種も、受けるべきタイミングで受けていただくことで予防が見込める病気がたくさんありますので、可能な限り推し進めていこうと思っています。
今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

今後もこの地域には新しいマンションが建ち、若いファミリー層を中心に人口は増えていくことが予想されます。だからこそ、お子さんから高齢の方まで、どなたでも安心して相談していただけるクリニックでありたいと思っています。「何科を受診すればいいかわからない」「いくつもの病院に通っていて大変」、そんな時こそ気軽に足を運んでいただきたいです。「ここに来れば何とかしてくれる」と患者さんに思っていただけて、実際にそのように対応できるクリニックでありたいと常に思っています。

