平塚 祐介 院長の独自取材記事
ひらつか医院 品川シーサイド
(品川区/品川シーサイド駅)
最終更新日:2025/06/25

品川シーサイド駅から徒歩6分の場所に、2025年4月に開業したのが「ひらつか医院 品川シーサイド」。院長を務める平塚祐介先生は、長年プライマリ・ケアを一貫して追求してきた総合診療の専門家だ。現在は、原因のわからない症状に苛まれ、受診先に迷う患者の悩みをワンストップで解消できるよう努めている。また、総合診療の要ともいえる診断力を養うため、日々研鑽を欠かさないストイックさを秘めたドクターだ。時折ユーモアを織り交ぜながら、こちらの質問に丁寧に答えてくれた平塚院長に、自身の診療に対するこだわりと、地域医療にかける思いについて話を聞いた。
(取材日2025年6月5日)
患者の人生を支えるために。プライマリ・ケアを実践
医師を志したきっかけと、プライマリ・ケアの道に進まれた理由を教えてください。

同じく医師だった祖父と叔父の影響が大きいですね。子どもの頃、下校していると往診に出る祖父の姿を見かけることも多く、医師の仕事にふれる機会に恵まれていたんです。中学生の頃には「誰かの役に立ち感謝される仕事に就きたい」という思いが芽生え、医師をめざし始めていました。プイライマリ・ケアの道に進んだのは、初期研修で訪問診療を経験したのがきっかけです。かなりご高齢の女性で食事が取れない状況でしたが、ご本人もご家族も入院を望まず往診のご相談をいただきました。最終的にはお看取りをさせていただいたのですが、ご家族から「最後まで家にいられて良かったです」とお言葉をいただいて……。その時、「住み慣れた地域で自然に、その人らしい最後を迎えられるようサポートすること」に魅力を感じたんです。誰もが「病人」ではなく、誰かの「普段通りのご本人」で居続けてほしい。それが僕のめざす診療の原点になりました。
研修後のご経歴についても教えてください。
初期研修を終えて、3年目から家庭医療について学びました。内科を2年近く経験し、将来プライマリ・ケアを実践するために小児科と整形外科の診療も改めて研鑽したんです。加えて、内視鏡検査の技術も習熟し、幅広い診療に対応できるよう準備を整えました。現在クリニックで内視鏡検査は行っていないため、そこでの観点を生かして然るべき場所へとご紹介をしています。また2013年には昭和大学で同じ専門をめざす人たち用のプログラム策定に携わり、2017年からは品川区医師会の業務にも従事。休日診療所の電子カルテ導入や、帯状疱疹ワクチンの助成金制度の創設、認知症初期集中支援チームの運営に携わるなど、地域医療の基盤整備に尽力しました。訪問診療のバックアップシステムの構築も手がけ、医師の働き方改革にも貢献できたと思います。
開業された経緯や診療内容についても聞かせてください。

もともと叔父が近くで開業していて、将来的な継承を考えてこの地域に来たんです。たまたま眼科の先生が廃業されるタイミングでこの場所をお借りできることになりました。当院では内科全般を診療する他、小児科では風邪症状だけでなく起立性調節障害のような内科でも小児科でも対応の難しい病気も積極的に診ています。整形外科では高齢者の筋骨格系の問題が主訴の半分を占めますね。特に骨粗しょう症には力を入れていて、手の骨密度をエックス線で測定する検査機器も導入しました。大規模病院にも劣らない精度で、着替えも不要なので患者さんの負担も少ないです。その他、エコーや心電図、肺機能検査、聴力検査など基本的な検査はひととおり対応できる体制を整えました。
診断力を生かし、患者の悩みをワンストップで診療
こちらにはどのような患者さんが来院されますか?

当院はお子さんからご高齢の方まで、幅広い世代にプライマリ・ケアを重視した診療を提供しています。そのせいか、2世代、3世代、中には4世代で通ってくださる患者さんも多く、ご高齢の患者さんから「孫のことも一緒に診てほしい」とご相談いただくことも少なくありません。もし皆さんが信頼してくださっているのであればうれしいですし、そのお気持ちにきちんと応えていきたいと考えています。この近隣には新しいマンションも多く、ファミリーも増えているので、地域の皆さんの健康を家族単位で支えるクリニックでありたいですね。
プライマリ・ケアを専門とする先生の診療の特徴や、強みを教えてください。
生まれたてのお子さんから高齢者まで、全世代の症状に対応できることが一番の強みです。世界標準では「プライマリ・ケアを担う診療所は地域の問題を8割から9割解決できないといけない」とされていて、僕もそこをめざしています。例えば背中の痛みがあったとき、内科を受診すべきか整形外科を受診すべきか悩まれる方は多いのではないでしょうか。ですが、総合的な視点で診療をしている当院であれば、心臓の検査も背骨の診察もでき、ワンストップで患者さんのお悩みに応じることができると思っています。ほんの些細なことでも何か気になることがあれば、何でも聞いていただきたいですね。また、総合診療は何より診断力が問われるので、日頃から診断力の向上に努めています。隠れた病気を逃さず、拾い上げることができる医師でありたいですね。
診断力が高いと、どのような症状を発見しやすいのでしょうか?

例えば、1週間熱が続いている患者さんから、亜急性甲状腺炎という見過ごされやすい病気が発見された、というケースがあります。その他、新型コロナウイルス感染症にかかってから原因不明の体調不良が続き、ある日、急に青あざが増えたのを機に血液検査をしたら、初期の白血病が見つかったということも。たとえ白血球数が正常の範囲であっても、出血傾向から異常を察知できることがあるんです。患者さんの訴えを一つ一つ確認し、あらゆる可能性を探っていくことが重要ということですね。そして、問診の技術も必要です。喉に痛みがある場合、患者さんは「風邪」とおっしゃるかかもしれません。ですが、実はその裏に心筋梗塞の病気が隠れていることもあります。特に命に関わる病気は絶対に見逃したくないですね。
地域の人々に、切れ目のない医療を提供したい
訪問診療にも力を入れていらっしゃるそうですね。

はい。もし患者さんが通院困難となったとしても「切れ目のない医療を提供したい」という思いから、365日24時間体制で訪問診療を行っています。先ほどお話したように「誰もが住み慣れた場所でその人らしい最後を迎えてほしい」と考える僕としては、この体制は外せませんでした。訪問範囲としては、自転車で行ける半径3km程度を目安としていて、比較的安定している方を中心に対応しています。別の医療機関にバックアップもお願いしているので、より患者さんに安心をお届けできるはずです。
スタッフ教育やクリニック運営で心がけていることはありますか?
スタッフたちには開業時に接遇研修を受けてもらい、身だしなみや患者さんからご相談を受けたときの対応などを学んでもらいました。皆コミュニケーション能力が高く、信頼できる者ばかりです。目を細めている患者さんに老眼鏡を渡してくれたり、お子さんにも優しく声をかけてくれたりと、本当に助かっています。また、週に1回は必ずスタッフミーティングを設けて、運営方法や改善点を話し合っています。クリニックの診療というのは、決して僕一人でできるものではありません。スタッフたちが「ここで働いていて良かった」と思ってもらえるよう、地域に貢献することに喜びを持ってもらえるような人材を育成したいと考えています。
今後の展望と、地域の皆さんへのメッセージをお願いします。

「もし困ったらあそこに行けばいいよ」と言ってもらえるクリニックをめざしていきたいですね。今後は、小児科の診療も増やし、地域のファミリークリニックとしての役割も高めていきたいです。将来的には僕と同じような専門を志す医師の養成にも関わっていけたら。地域医療の底上げのため、誠実に取り組んでいきますので、何か気になることがあれば気軽にご相談ください。