濱口 孝幸 院長の独自取材記事
津 痛みのクリニック
(津市/久居駅)
最終更新日:2025/03/14

三重中央医療センターバス停から徒歩1分の場所にある「津 痛みのクリニック」。痛み専門のペインクリニックとして、2025年1月に開業した。朗らかで優しい笑顔が印象的な院長の濱口孝幸先生は、NTT東日本関東病院ペインクリニック科などで痛みの治療の研鑽を重ね、同院でも神経ブロック療法や薬物療法を提供。また、患者の話をしっかりと聞き、会話から痛みの原因を探し、取り除くための治療方法も行う。「さまざまな痛みと治療方法に向き合ってきた経験を生かして、患者さんの思いに応えられる医療を提供していきたい」と語る濱口先生に、痛みの治療方法や診療方針などを聞いた。
(取材日2025年1月30日)
痛みに悩む人が通いやすいクリニックをめざして
まずは、この辺りではまだ珍しいペインクリニックを開業された経緯などを教えてください。

僕は12〜13年くらい前からずっとペインクリニックに従事してきました。東京で勤務をしていて、特に開業をするつもりはなかったんです。でもある時、妻が双子を妊娠していることがわかり、これからの育児を考えて負担を軽減するため妻の実家近くに引っ越したほうがいいと思いました。でも、妻の実家の近くにはペインクリニックがあまりなかったので、だったら自分でやってみようと思い、開業を決めました。
開業する場所はすぐ見つかったんですか?
この辺りにしようと決まったのは、2年以上前ですね。僕は東京にいたので、毎日スマホのマップアプリを使って土地探しをしていました。今の場所とは違うのですが、いい場所を見つけたので辺りを歩いてみようと思い、現地へ行きました。それで、すれ違った方に「この辺の土地ってどうですか」って声をかけてみたところ、「不動産会社に行って聞いてみたら」と言われまして(笑)。それはそうだなと思って、不動産会社に行って相談をしました。最初は、今の場所のすぐ近くの土地を紹介していただいて、そこにしようか悩んでいたら「もっといい土地がありました」と言われて、今の場所を紹介してもらいました。本当にいい場所で開業ができたなと感じています。
施設でこだわった所はありますか?

設備を充実させるようにしました。例えば、都会だと広い土地がないため導入できない医療機器というのがどうしてもあります。その医療機器が必要な患者さんが来院された場合でも、対応できる病院をすぐに紹介することができるので問題ないことが多いです。でもここだと、紹介する病院が近くにないこともあります。だから、当院で完結できるようにしました。ただ、入院はできないので、近くの三重中央医療センターと連携して対応できるよう体制を整えています。あとは、待合室の椅子を整形外科用の椅子にしました。僕自身、ヘルニアになったことがあるのですが、椅子に座ると痛いんですよね。そうした方のために、座面がかなり高い椅子もあります。いろんな痛みを抱えている方が来院されると考え、座りやすそうな物を選んでいます。
スタッフの方にお願いしていることはありますか?
たくさんお願いしていますよ(笑)。いいスタッフばかりなので、働きやすいです。東京で一緒に働いていた事務のスタッフが一人、こちらについて来てくれたのですが、「先生は診療に集中してくれればいいです」と言ってくれて心強いです。
話を丁寧に聞き、原因に沿った治療を提供
診療の際に心がけていることは何ですか?

患者さんの話を遮らないよう、しっかりと聞くようにしています。患者さんによっては、「周りから、どうせ精神的な問題でしょと言われて話を聞いてもらえない」と言って来る方も多くいらっしゃいます。でも、その人にとっては痛みがあることは事実だから、それで片づけてしまうわけにはいきません。また、話を聞くことで関係性を良くしたいという理由もあります。例えば、ブロック注射をする時に痛みがあったとします。ちょっと痛いけど、この先生だったらまぁいいかと思っていただけたらいいなと。でも、この関係性がすごく大事なんですよね。
ちゃんと話を聞いてもらえると、心の負担が減るような気がします。
最初に働いたペインクリニックが、患者さんのお話をしっかりと聞く診療方針だったんです。その方がどういう家庭で育って、今はどういう家族環境で、どういう仕事をしていて、どういう問題を持っているのかなど、いろんな質問をしていました。患者さんからすれば、一見痛みに関係のないことだと思われるかもしれません。でも痛みの原因と思われるものが見つからことがない場合は、そういったことが痛みの原因となっている場合があります。その場合は、生活指導や自分の経験を踏まえたアドバイスなどをします。もちろん、ブロック注射などで痛みの改善を図るために治療も大切です。以前、勤務をしていたNTT関東病院ペインクリニック科は、神経ブロック治療に注力をしていたので、注射での治療についても研鑽を積んできました。当院でも、必要に応じて行うことができます。
神経ブロック治療というのは、どのような治療なんですか?

ブロック注射で痛みの軽減を図る治療です。この治療で、痛みの軽減につながれば、リハビリテーションを受けやすくなるのではないでしょうか。また、例えば椎間板ヘルニアの痛みというのは、自然に回復する方が6〜7割といわれています。でも、中には痛すぎて手術を希望される方もいらっしゃいます。できれば手術は回避するほうがいいので、注射で痛みに対応することもできます。しかし、すべての痛みが悪いわけではなく、必要なサインの場合もある。その場合は簡単に取ってはいけないので、判断した上で注射などの選択をしています。
注射は怖いという方もいらっしゃると思いますが。
より精度の高い注射を行うため、Cアームというエックス線透視装置やエコー検査装置を導入しています。こうした医療機器を使うことで、血管や神経、筋肉などと針の位置を確認することができます。
経験を生かした治療で患者の思いに応えていく
来院される患者さんは、どのような痛みがある方ですか?

慢性的な痛みのある高齢者の方や、帯状疱疹を発症した方などがいらっしゃいます。それ以外でも、頭や腰などの痛みに悩まされている方は、年齢を問わずお越しいただければと思います。患者さんからも「こんな痛みで来て良かったですか」と聞かれるのですが、気にせず来てほしいです。お話を聞いて、当院で対応できない症状と判断すれば他の医療機関を紹介します。僕は三重県の出身ではありませんが、こちらに来て約半年間3つの病院で働いたので、脳外科の先生など他科の先生と顔見知りになりました。連携体制は取れていますので、安心してお越しいただければと思います。
これから、どのようなクリニックにしていきたいですか?
ブロック注射と相性のいい、リハビリテーションに注力したいと思っています。痛みというのは生活習慣病なので、注射だけでは改善しません。生活習慣を整えてあげるためにも、リハビリテーションに力を入れていきたいですね。いずれ、理学療法士の行うリハビリテーションができたらと考えており、リハビリテーション室を設けていますし、筋肉の動きを見るリハビリテーション用のエコーも導入しているので体制は整っています。あとは、僕以外にも医師が増えればいいなと思っています。実際、将来を見据えて診察室を3つ、処置ベッドを11台設けました。
最後に読者へメッセージをお願いします。

痛みは、生活習慣や家庭のストレスなどいろんな原因から発症します。治療法も、注射や薬物がいい場合もあれば、お話がいい場合もあります。僕は、さまざまなタイプの痛みと治療法の経験を積んできました。それぞれのいいとこ取りをして、患者さんが望まれている治療に沿った医療を提供していきたいと思っています。やらないほうがいいと判断したことはしませんが、患者さんの思いに応えられるクリニックにしていきたいです。